[ニュース解説]共和党州議員も反発——ホワイトハウスが州のAI規制法を「問題あり」と審査へ

目次

はじめに

 米Axiosが2026年3月6日に報じた内容によると、トランプ政権が州レベルのAI規制法を「過重な規制」として司法省に付託するリストの公表を間近に控えており、共和党が多数を占める州でのAI安全法案の審議が政権の圧力によって相次いで頓挫しています。本稿では、この動向と各州の状況を整理します。

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要点

  • トランプ政権は「過重な規制」と判断した州のAI規制法を司法省のAI訴訟タスクフォースに付託するリストを近日中に発表する予定である
  • 共和党系の州議員50人がトランプ大統領に書簡を送り、州独自のAI立法を妨害しないよう求めた
  • ユタ州では、ホワイトハウスの介入によりAI透明性法案が事実上廃案となった
  • フロリダ州では、デサンティス知事が支持するAI権利章典が州上院を通過したものの、州下院議長が審議を拒否している
  • カリフォルニア州、ニューヨーク州、コロラド州の既存AI法が最初の対象となる可能性が高い

詳細解説

ホワイトハウスの方針と大統領令の概要

 Axiosによれば、ホワイトハウスは「連邦レベルの枠組みが整うまで、州はほぼすべてのケースでAI規制法の制定を控えるべき」という立場を明確にしています。この方針の根拠となるのが、トランプ大統領が署名した大統領令で、「国家AI政策を妨げる州法の排除」を目的に掲げ、司法省内にAI訴訟タスクフォースを設置することを定めています。

 注目すべき点として、同大統領令は「法律」を対象としており、審議中の「法案」は直接の対象外とされています。そのため、すでに成立している法律を持つカリフォルニア州、ニューヨーク州が最初の審査対象となる見通しで、とりわけコロラド州のAI法は大統領令内で名指しされた唯一の法律として知られています。米国では連邦法が州法に優越する「連邦優越原則(Supremacy Clause)」があり、今回の動きはその原則を活用してAI規制の主導権を連邦政府が握ろうとする試みと言えます。

共和党州議員50人の反発

 今回特筆されるのは、政権の方針に異を唱えているのが民主党ではなく、共和党系の州議員たちである点です。Axiosによれば、共和党の州議員50人がトランプ大統領に宛てた書簡を送り、「ユタ州をはじめとする州でAI安全法案の放棄を迫るような圧力活動に深く懸念を覚える」と表明しました。書簡では「州主導の取り組みは保守主義の原則と矛盾せず、大統領が掲げる人間の繁栄と技術革新の促進という目標にも合致する」とも主張しています。

 同書簡に署名したオハイオ州のサド・クラゲット州議員はAxiosに対し、「連邦議会が最先端の問題に取り組むことの難しさは理解している。しかし私たちは住民を守ることに強い関心を持っており、取り組みを続ける」と述べています。

各州の現状

 ユタ州では、AI透明性を目的とした法案がホワイトハウスの働きかけによって事実上廃案となりました。ユタ州の子ども支援団体「Child First Policy Center」の政策ディレクター、メリッサ・マッケイ氏はAxiosに「法案は残念ながら死んだ」と語り、「会期中に届いたホワイトハウスからの批判的なメモが混乱と意見の対立を招き、法案を葬った」と説明しています。この動きは、ホワイトハウスのAI政策担当チーフであるデイビッド・サックス氏を名指しした批判看板がユタ州内に登場するまでの事態に発展しました。

 フロリダ州では、デサンティス知事が支持する「AI権利章典」法案が州上院を通過しましたが、州下院議長のダニエル・ペレス氏が審議に付さない意向を表明しました。ペレス氏はホワイトハウスと同じ立場であることを記者団に明らかにしており、事実上の廃案となる見通しです。

 オハイオ州では、AIに法的人格を一切認めないことを目的とした法案が現在大幅な見直し作業に入っています。提案者のクラゲット議員は、法案が整った段階でホワイトハウスに意見を求める意向を示しつつも、自主的な取り組みを継続する姿勢を崩していません。

規制の空白と今後の焦点

 米国のAI規制をめぐっては、連邦議会が包括的な法整備に至っていない状況が続いており、各州が独自に対応を模索してきた経緯があります。子どものオンライン安全、雇用への影響、個人情報保護といった課題に対する有権者の関心は党派を超えて高く、共和党系の州議員が政権に反発する背景にはこうした地域の要請があると考えられます。

 一方、ホワイトハウスは連邦の枠組みが整うまで州規制を事実上凍結させようとしており、その連邦法がいつ、どのような形で成立するかは現時点では不透明です。規制の空白が長引くほど、企業・消費者双方にとっての不確実性が高まる可能性があります。

まとめ

 ホワイトハウスが州のAI規制を抑制しようとする中、共和党系の州議員からも反発の声が上がるという、従来の党派対立とは異なる構図が生まれています。連邦と州、革新と安全の間でAIのルール形成をめぐる緊張は今後も続きそうです。

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