[ビジネスマン向け]ChatGPTが電子カルテEpicと接続——医療機関のAI活用は「つなぐ」段階へ

目次

はじめに

 OpenAIが2026年9月1日、医療機関向けの「ChatGPT for Healthcare」にEpicの電子カルテとの連携機能と、9つの公的医療データ源を扱う「Healthcare Public Data」プラグインを追加したと発表しました。本稿では、その内容と医師による評価結果を整理します。

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要点

  • OpenAIは2026年9月1日、医療機関向けのChatGPT for HealthcareにおいてEpicの電子カルテ(EHR)との連携を開始したと発表した
  • 連携は許可された患者情報の参照を対象としており、患者情報をChatGPTに取り込む形と、EHRの画面内でChatGPTを利用する形の2種類がある
  • Fierce Healthcareによれば、この連携は読み取り専用であり、生成した内容を診療記録に書き戻すことはない
  • 新設のHealthcare Public Dataプラグインは、PubMed、ClinicalTrials.gov、DailyMed、RxNorm、CMS Coverageなど9つの公的データ源への専用コネクタを備える
  • EHR連携時の応答は27の臨床ユースケースで医師が評価し、4,363件の評価のうち99.1%が安全と判定された

詳細解説

Epic連携で何が変わるのか

 OpenAIによれば、医療機関はEpicの環境をChatGPTに接続できるようになりました。臨床医は、前回受診からの変化、診察前に確認すべき検査結果、処方の変更や専門医からの推奨、未解決の申し送り事項などを、権限のある患者記録にもとづいて質問できます。ChatGPTは関連情報をまとめて提示し、根拠となったカルテ情報を参照先として示す仕組みです。

 EHR(電子カルテ)は診療記録・検査結果・処方歴などを一元管理する基幹システムで、Epicは米国の大規模医療機関で広く導入されているベンダーとして知られています。従来はカルテ内の情報を臨床医が自ら読み解く必要があったため、記録の参照自体をAIに任せられる点が今回の変更の中心だと考えられます。

 提供形態は2つあります。ひとつは許可された患者情報をChatGPT側に取り込み、履歴の確認や診察準備に使う形、もうひとつは対応する導入環境でChatGPTをEHRの画面内に組み込み、カルテを離れずにAI支援の作業を行う形です。Fierce Healthcareによれば、この連携は読み取り専用で、AIが生成した内容を患者記録に書き戻すことはないとされています。診療記録の改変リスクを設計段階で排除する構成だと考えられます。パイロット導入先のUCSF Healthは、複雑な患者記録の中で何が変化し何が重要かを臨床チームが把握できるかを検証している段階だとコメントしています。

9つの公的データ源をまとめて扱うプラグイン

 患者情報だけでは臨床や運営の判断は完結せず、研究成果、医薬品の添付文書、保険償還の方針、臨床試験の情報なども必要になります。OpenAIによれば、Healthcare Public Dataプラグインは、ClinicalTrials.gov、CMS Coverage、RxNorm、DailyMed、PubMedを含む9つの公的情報源への専用コネクタを束ねたプラグインです。個々のレコード、項目、識別子、バージョンを指定して扱えるため、臨床試験の適格基準、医薬品の識別子、保険適用方針の版、医療機関の登録情報などを、情報源ごとに検索し直さずに比較・確認できるとされています。

 OpenAIが挙げた例では、研究チームがClinicalTrials.govで募集中の試験の適格基準を比較したり、薬剤部門がDailyMedで最新の添付文書と警告情報を確認したりする使い方が想定されています。糖尿病の予防プログラムを検討するチームが、研究・試験・保険適用の情報を根拠付きでひとつにまとめる例も紹介されました。

 ここで重要なのは、一般的なWeb検索ではなく 公的データ源への直接接続 である点だと思います。医療分野では情報の出所と更新時点が判断を左右するため、バージョンや識別子を指定できる設計は実務上の使い勝手に直結すると考えられます。

医師による評価——4,363件の判定結果

 OpenAIは、60カ国・49言語・26の診療科にわたる数百人の医師と協力し、医療分野の応答品質を定義・測定・改善していると説明しています。これまでに医師が確認したモデルの応答は70万件を超えるとのことです。EHR連携時の性能については、診察前レビュー、臨床経過のタイムライン作成、服薬レビュー、申し送りサマリーなど27の臨床ユースケースで医師が評価しました。4,363件の評価のうち99.1%が安全と判定されたと報告されています。評価はOpenAIが組織した医師ネットワークによるものである点は踏まえておく必要があると思います。また、公的データ源については5種類を対象とした2ラウンドの評価が行われ、いずれの情報源でも93%を超える応答が「良好」以上の正確性と評価されました。内訳はDailyMedが98.6%、PubMedが97.3%、ClinicalTrials.govとRxNormが95.1%、CMS Coverageが93.2%です。

 これらの数値は高い水準に見えますが、評価対象は「安全か」「正確か」という判定であり、臨床判断そのものの代替を示すものではないと考えられます。残る数%をどう扱うかは運用側に委ねられるため、確認手順を含む業務フローの整備が前提になると思います。

業務システムとの接続と利用条件

 OpenAIによれば、同じワークスペース内でChatGPT Workによる報告書や分析の作成、Codexによる業務システムの開発も行えます。Microsoft SharePoint、Google Drive、Salesforce、Slackなどのプラグインを通じ、既存の権限設定を保ったまま業務データを扱える構成です。AdventHealthのChief AI Officerは、定型作業を減らして人と向き合う時間を増やすことが目的だとコメントしています。

 ChatGPT for Healthcareは、ロールベースのアクセス制御、シングルサインオン、監査ログを備え、該当するBAA(事業提携契約)のもとでHIPAA準拠のワークフローを支援するとされています。利用条件は立場によって異なり、既存顧客はワークスペース管理者に有効化を依頼、ChatGPT Enterprise顧客はOpenAIの担当窓口に確認する形です。米国の個人臨床医はプラグインのみ利用でき、EHR連携は個人アカウントでは提供されません。医療分野向けの機能拡張は各社が進めており、Anthropicも医療・ライフサイエンス向けの機能を拡張しています。前提となる規制は米国の枠組みであるため、日本の医療機関がそのまま同じ形で利用できるとは限らない点には注意が必要だと思います。

まとめ

 今回の発表は、モデルの性能向上ではなく、患者情報と公的データという既存の情報基盤にAIをどう接続するかという話でした。読み取り専用という制約や医師による評価の設計を含め、運用の枠組みをどう作るかが問われる段階に入ったと言えます。ChatGPTの健康関連機能の広がりについても以前整理していますので、あわせてご覧いただければと思います。

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