はじめに
SpaceXAI(xAI)は2026年9月28日、AIエージェント「Grok Bot」をチームで共有できる新機能「Team Bots」をパブリックベータとして公開しました。本稿では、その仕組みと、同社の営業・開発・マーケティング・データ分析での活用例を整理します。
参考記事
- タイトル: Team Bots: shared AI teammates that learn as they work
- 著者: SpaceXAI
- 発行元: SpaceXAI(xAI)
- 発行日: 2026年9月28日
- URL: https://x.ai/news/team-bots
関連記事


要点
- Team Botsは、チームで共有して使えるGrok Botで、Teams・Enterpriseプランでパブリックベータとして提供が始まった
- 各Team Botは、コンテキスト、プラグイン、認証情報、記憶の4つの要素を組み合わせて役割を担う
- Botはチームで共有されるが、各メンバーとの会話は非公開で、利用者ごとに別の文脈と記憶を保持する
- SpaceXAIは、営業、製品開発、マーケティング、データ分析の4分野でTeam Botsを社内活用しており、5人のチームが1日100件超のプルリクエストを出荷した例も紹介している
- 営業、製品管理、マーケティング、データ分析向けの構築済みTeam Botが用意されている
詳細解説
Team Botsとは
SpaceXAIによれば、Team Botsは、チームとともに働き、学んでいくGrok Botです。必要なファイル、アプリ、専門知識へのアクセスを与えたうえでチームに共有すると、全員が同じ文脈から作業できるようになります。同社では、Team Botsが毎朝アカウントチーム(顧客担当チーム)に状況を伝え、エンジニアリングのプロジェクトを調整し、全社のデータに関する質問に答えているといいます。
Grok Botは、8月に「AIチームメイト」として公開されたSpaceXAIのエージェント製品です。今回のTeam Botsは、これまで個人ごとに使っていたBotを、チームで共有できるようにする拡張と位置づけられます。
Team Botは、チームが共有する役割やワークフローを軸に作ります。全員が同じBotとその専門知識を使えますが、それぞれが個別に作業を任せることもできます。
Team Botを構成する4つの要素
各Team Botは、仕事をこなすために次の4つを組み合わせています。
- コンテキスト: ブランドガイドから社内ドキュメントまで、関連するファイル、指示、スキルを与える
- プラグイン: Salesforce、Notion、GitHubなどのアプリケーションで作業できるようにする。各メンバーが個別に接続することも、チーム全体で設定することもできる
- 認証情報: プラグインのない外部サービスのAPIに、安全にアクセスできるようにする
- 記憶: 学んだことを保持し、時間とともに役割をうまくこなせるようにする
Botは共有されていても、各メンバーとの会話は非公開のままです。Botは利用者ごとに別々の文脈と記憶を持ちながら、チームで共有されたスキルを活用します。
また、Slackでもチームで協力してTeam Botを使えます。各Team Botには固有のハンドル(アカウント名)があり、チャンネルに招待すれば、誰でも質問したり、情報を補足したり、Botの回答を見たりできます。
チームで共有するBotと、個人の会話の非公開性を両立させる設計は、業務利用では重要なポイントだと考えられます。本稿としては、共有される「スキル」と、個人ごとに分かれる「会話・記憶」を分けて扱っている点は、チームの知識を蓄えつつ個人のやり取りを守るための工夫と読めます。ただし、Slackのチャンネルでの会話は参加者全員に見えるため、使う場所によって公開範囲が変わる点には注意が必要だと思います。
活用例1:営業・カスタマーサクセス
SpaceXAIでは、主要な営業アカウントごとに専用のTeam Botがあり、アカウントエグゼクティブ(AE)、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)、ソリューションアーキテクト(SA)、営業責任者が共有しています。
Botは毎晩、顧客企業のニュース、最近のGong(商談の録音・分析ツール)の通話、Notionのドキュメント、関連するSlackのスレッドを確認します。毎朝、そのアカウントのSlackチャンネルに、何が変わったか、各メンバーが次に何をすべきかをまとめた報告を投稿し、役割に合わせた下書きも添えます。
日中は、アカウントチームがSlackでBotを使い、戦略を検討したり、自分の考えを顧客データと照らし合わせたり、次の手を計画したりします。Botはチームが下した決定を記憶し、時間とともに豊富な文脈を蓄えます。メンバーが交代しても、Botが記録の拠り所となり、新しいメンバーにすぐ状況を伝えられるといいます。
中小企業向けの保険会社Harperは、失効した保険契約を持つ顧客を見つけ、補償の再開を支援するTeam Botを構築しました。同社CEOのDakotah Rice氏によれば、以前は3つのシステムで顧客を1人ずつ確認し、残高の詳細を調べて個別のメールを送っていましたが、24時間でTeam Botを作って自動化し、数百件の契約で顧客に12万ドル超の節約をもたらしたといいます。
構築済みの「Customer Bot」は、1つの顧客アカウント用の共有Botで、AE、CSM、SA、営業責任者の足並みをそろえ、平日の朝に報告を投稿し、各メンバーの次の行動の下書きを作ります。
担当者の交代で顧客との経緯が失われるのは、多くの営業組織に共通する悩みだと思います。本稿としては、Botが「記録の拠り所」になるという使い方は、引き継ぎの負担を減らす点で実務的な価値が大きいと受け止めています。
活用例2:製品開発・エンジニアリング
SpaceXAIのエンジニアリング用Team Botは、プロジェクトのSlackチャンネルで動き、Notion、Linear(課題管理ツール)、Hex(データ分析ツール)、Datadog(監視ツール)、Cursorに接続しています。製品に関する決定を追い、不具合報告を振り分け、チケットを作成し、範囲の明確な修正にはCloud Agents(クラウド上で動くコーディングエージェント)を起動します。
同社は、出荷のプロセスをスキルとしてBotに教えました。Botは、プルリクエスト(PR)のレビューの進め方、チームに助けを求めるべきタイミング、変更が完了とみなされるために必要な証拠を理解しています。ツールやエージェントをまたいで作業を調整し、進捗や障害をSlackで報告します。
SpaceXAIは、Team Bots自体の開発でもこの仕組みを使いました。Botが数百のCloud Agentsを指揮するCursorのプロジェクトを動かし、5人のチームが1日100件を超えるPRを出荷して、数週間でTeam Botsを公開できたといいます。
構築済みの「EPD Teammate」は、EPD(エンジニアリング・プロダクト・デザイン)チームのプロジェクトや機能の調整役です。プロジェクトのSlackチャンネルを追い、Linearに分かりやすい不具合報告を登録し、テストを通過し検証済みのPRを返すCursorのクラウドエージェントを動かします。
1日100件超のPRという数字は、人がすべてを細かくレビューするのが難しい量でもあります。本稿としては、「完了に必要な証拠」をスキルとしてBotに教えている点が、この規模を支える前提になっていると考えています。
活用例3:マーケティング
大規模なマーケティングチームは、ブランド、メッセージ、語り口の一貫性を保つことに多くの時間を使っています。SpaceXAIは、その作業を楽にするために「Marketing Bot」を作りました。
Botにはブランドガイドライン、ブログ記事、SNSの文案へのアクセスを与えています。Slackで誰かが承認のために下書きを共有すると、Botがブランドの語り口や最新のメッセージに照らしてレビューします。地域ごとのチームは、本社の承認サイクルを待たずに、自分たちのタイムゾーンでフィードバックを得て作業を進められます。
WebサイトやSEO(検索エンジン最適化)の変更では、Marketing Botがレビューから公開までを担います。コンテンツの更新がレビューを通ると、Botが変更を反映し、最終承認のためのプレビューリンクをSlackに投稿します。マーケティングチームの誰もが、チケットを起票したりエンジニアを待ったりせずにWebサイトを更新でき、すべての変更が同じブランドとSEOのチェックを通ります。
Amplitudeのマーケティング責任者Angela Ferrante氏は、マーケティングのあらゆる機能にTeam Botsを導入することを目指しており、市場や顧客の情報の分析、AIの回答での露出、新製品のレビュー、施策の効果の把握に役立っていると述べています。
活用例4:データ分析
SpaceXAIのデータ分析チームには、単発の分析依頼が毎日数十件届きます。そこで、社内の誰もがアナリストを待ったり、データウェアハウスへのアクセスを設定したりせずに答えを得られるよう、「Data Bot」を作りました。
Data Botは、共有の読み取り専用の認証情報を使って、Databricks上の承認済みのテーブルに問い合わせます。Datadog、Hex、Statsig(機能の実験・分析ツール)にも接続し、質問を調べて結果を示します。
データ分析チームは、4万5,000を超えるテーブルを扱うためのスキルのライブラリを、すでに2年かけて作っていました。そのライブラリをData Botに与え、適切なデータの探し方、不正利用の観点からの機能利用の分析、同社のグラフの基準、全社のダッシュボードの安全な更新方法などを教えています。Data Botはクエリの修正も記憶するため、1人から学んだことが全員への回答の改善につながります。
読み取り専用の認証情報に限定している点は、誰もが使えるデータBotを安全に運用するための基本的な設計だと思います。また、既存のスキルのライブラリをそのまま生かせたという点から、チームが蓄えてきたノウハウを文書化しておくことが、AIエージェントの導入でも大きな資産になると考えられます。
提供状況と始め方
Team Botsは、TeamsプランとEnterpriseプランで、パブリックベータとして提供が始まっています。すでに使っているGrok Botをチームに共有することも、営業、製品管理、マーケティング、データ分析向けの構築済みTeam Botから始めることもできます。
まとめ
Team Botsは、AIエージェントを個人の道具からチームの共有資産へと広げる取り組みです。共有する知識と個人の会話を分けて扱う設計や、記録の拠り所としての使い方は、AIの業務活用を考えるうえで参考になると思います。
