はじめに
Google DeepMindが2026年5月5日、Gemini APIのFile Search(ファイル検索)ツールにマルチモーダル対応・カスタムメタデータフィルタリング・ページ引用の3機能を追加したと発表しました。本稿では、この発表をもとに各機能の概要と実装上のポイントを解説します。
参考記事
- タイトル: Gemini API File Search is now multimodal: build efficient, verifiable RAG
- 著者: Ivan Solovyev(Product Manager, Google DeepMind)、Kriti Dwivedi(Software Engineer)
- 発行元: Google Blog
- 発行日: 2026年5月5日
- URL: https://blog.google/innovation-and-ai/technology/developers-tools/expanded-gemini-api-file-search-multimodal-rag/
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要点
- Gemini APIのFile Searchツールがマルチモーダル対応となり、テキストと画像を一つのストアで統合的に扱えるようになった
- カスタムメタデータ(キーバリュー形式)をファイルに付与し、クエリ時にフィルタリングすることで検索精度とスピードを向上させることができる
- PDFなどの文書から回答を取得する際、根拠となるページ番号を引用情報として返す「ページ引用」機能が追加された
- File Searchの基盤モデルとして「Gemini Embedding 2」が採用されており、テキスト・画像いずれのデータも同一の埋め込みモデルで処理される
詳細解説
マルチモーダル対応——画像とテキストを同一ストアで検索
今回の最大の変更点は、File Searchがテキストだけでなく画像もネイティブに処理できるようになった点です。Google DeepMindによれば、この機能はGemini Embedding 2モデルを基盤としており、画像データを直接インデックス化して自然言語のクエリで検索できます。
2026年4月に一般公開されたGemini Embedding 2は、テキスト・画像・動画を統合的に扱う埋め込みモデルであり、今回のFile Searchのマルチモーダル機能を支える核心的な技術にあたります。
具体的なユースケースとして、Googleはクリエイティブエージェンシーが大量のビジュアルアーカイブから特定の感情的トーンや視覚スタイルに合致する画像を自然言語で検索するシナリオを挙げています。ファイル名やキーワードに頼らずに画像内容をセマンティックに検索できることは、ドキュメント管理や画像ライブラリを扱うアプリケーションにとって実用的な拡張だと思います。
カスタムメタデータ——大規模データのノイズを減らすフィルタリング
2つ目の機能追加は、ファイルにカスタムメタデータを付与できるようになった点です。department: Legal や status: Final のようなキーバリュー形式のラベルを各ファイルに設定し、クエリ実行時にこのメタデータを条件としてフィルタリングできます。
Google DeepMindは「大量のファイルをデータベースに格納するのは容易だが、スケールの大きい環境で適切なファイルを見つけることが本当の課題」と説明しています。メタデータフィルタリングを活用することで、クエリを必要なデータのサブセットに絞り込め、無関係なドキュメントからのノイズを大幅に削減し、RAGワークフローの速度と精度を向上させることができます。
たとえば法務部門のドキュメントのみを対象に検索したり、ドラフト段階の文書を除外して確定版のみを参照する、といった細かい制御が可能になると考えられます。エンタープライズ向けのRAGシステムを構築する際は、このメタデータ設計がシステム全体の精度に大きく影響するだろうと思います。
ページ引用——回答の根拠を透明化するトレーサビリティ
3つ目の機能は「ページ引用」です。File SearchがPDFなどの大規模文書から回答を生成する際、その根拠となるページ番号を回答に紐づけて返します。Google DeepMindによれば、インデックス化されたすべての情報についてページ番号を記録しており、ユーザーを正確な情報源に直接誘導することができます。
この機能は、厳密なファクトチェックが求められる用途や、回答の信頼性を担保する必要があるビジネス文書の検索において特に有効だと思います。大規模言語モデルが「どこから答えを引いてきたか」を明示できるグラウンディング技術は、RAGシステムの実用化において重要な要素の一つです。
セットアップ——マルチモーダルストアの作成
File Searchの利用には、google-genai ライブラリが必要です。以下のコードは、マルチモーダル対応のファイルストアを作成する最小構成のサンプルです(参考記事のサンプルコードをもとにしています)。
from google import genai
# Google GenAI クライアントを初期化する
client = genai.Client()
# マルチモーダル対応のファイルストアを作成する
# embedding_model に "models/gemini-embedding-2" を指定することで
# テキストと画像の両方を処理できるようになる
store = client.file_search_stores.create(
config={
"display_name": "my-knowledge-base", # ストアの表示名
"embedding_model": "models/gemini-embedding-2" # マルチモーダル埋め込みモデル
}
)
print(f"Created store: {store.name}")
# この後、ドキュメントや画像ファイルをアップロードして利用できるストア作成後は、テキスト文書と画像ファイルの双方をアップロードしてインデックス化できます。詳細な実装手順については、Google AI Studio向けの開発者ガイドで確認できます。
2025年11月に登場した初期のFile Search Toolは、テキスト文書のRAGを全自動化する機能として提供されていましたが、今回のアップデートにより画像対応・メタデータ制御・引用機能の3点が加わり、より本格的なマルチモーダルRAGシステムの構築が可能になりました。
まとめ
今回のFile Searchアップデートにより、Gemini APIを使ったRAGシステムはテキスト検索に留まらず、画像を含む非構造化データを統合的に扱えるようになりました。カスタムメタデータとページ引用の追加も、エンタープライズ利用における精度と透明性の向上に貢献すると考えられます。今後の更なる機能拡張にも注目したいところです。
