はじめに
Googleは2026年9月17日、Gemini APIのInteractions・Agents・Webhooks向けSDK生成パイプラインについて、パートナー企業Speakeasyと共同で開発したOpenAPIコード生成スイートをオープンソース化したことを発表しました。本稿では、その背景と公開された内容について解説します。
参考記事
- タイトル: Why client SDK generation belongs in the open
- 著者: Amir Hardon(Senior Staff Software Engineer)、Philipp Schmid(Developer Relations Engineer)
- 発行元: Google Developers Blog
- 発行日: 2026年9月17日
- URL: https://developers.googleblog.com/why-client-sdk-generation-belongs-in-the-open/
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要点
- Googleは2026年9月17日、Speakeasyと共同でOpenAPIコード生成スイートをオープンソース化したと発表した。
- 発端は2026年5月、それまで利用していたSDK生成プロバイダーが買収され突然サービス終了を発表したことだった。
- 決定論的なコード生成の中核部分にSpeakeasyのジェネレーターを、SDKのカスタム部分にAntigravityのAIエージェントを組み合わせている。
- 公開されたのは、多言語SDK生成ツール・エージェント向けCLI生成ツール・ドキュメントMCPサーバー生成ツールの3種類である。
- ジェネレーター本体はAGPLv3ライセンスで公開され、生成されたSDK自体は開発者が選んだライセンスで自由に扱える。
詳細解説
背景:独自ツールが抱えていたプラットフォームリスク
複数の言語にまたがってクリーンで自然なSDKを、絶えず変化するOpenAPI仕様から生成することは、複雑なストリーミングプロトコルや厳密なエラー階層、多様な型を扱う必要があるエンジニアリング上の課題です。Googleを含むフロンティアAI業界は、これまで専用のツールに依存してクライアントライブラリを生成してきました。
しかし2026年5月、Google I/Oと「Interactions API」の一般提供開始に向けて準備を進めていた最中に、それまで利用していたSDK生成プロバイダーが買収され、突然サービス終了を発表する事態が起きました。Googleは、この出来事について、独自かつ非公開のジェネレーターに頼ることは容認できないプラットフォームリスクを生むことを浮き彫りにしたと説明しています。業界がOpenAPIをインターフェース定義の標準として使う以上、それをクライアントライブラリやCLI、エージェント向けツールへコンパイルするツール自体もオープンなインフラであるべきだという考えが今回の決定の背景にあるとされています。Anthropicも2026年5月にSDK企業Stainlessを買収してエージェント接続基盤の強化を図っており、SDK生成基盤の持続可能性は、AI業界全体で意識され始めている課題だとうかがえます。
移行の実際:決定論的な生成とAIエージェントの使い分け
タイトなスケジュールでSDKパイプラインを刷新するにあたり、Googleが最優先したのは開発者への影響を最小限に抑え、破壊的変更を避けることでした。Speakeasyと提携し、クライアントライブラリをその場で移行させつつ、ジェネレータースイート自体をオープンソース化することを中核的なコミットメントとして掲げたとされています。移行にあたっては、すべての対象言語間で型定義を揃え、厳密なエラー階層とストリーミングの挙動を維持し、ジェネレーターを社内のモノレポおよびビルドシステムに直接組み込むという、慎重なエンジニアリングが必要だったといいます。
Google DeepMindは、開発ワークフロー全体でAIを活用する一方、スタックの各層に適したツールを選ぶという考え方を重視しているとしています。正式なAPI仕様を多言語のSDKへ変換する作業には、決定論的な挙動と厳密な型安全性が求められるため、Speakeasyの高速で決定論的なジェネレーターを中核に据え、SDKのカスタム部分の実装にはAntigravityのAIエージェントを組み合わせているとされています。かつて手作りのジェネレーターを保守するには複数のエンジニアが必要でしたが、現在の体制では、3種類(順次追加予定を含め6種類)のSDKを、おおよそ1名のエンジニアで維持できているといいます。
公開されたもの:3つのオープンソースツール
より広い開発者エコシステムが、同様の混乱リスクを抱えることなく高品質なSDK生成ツールを利用できるよう、SpeakeasyはOpenAPIクライアントスイート全体をAGPLv3ライセンスのもとでオープンソース化しました。公開された内容は次の3種類です。
- 多言語SDK生成ツール: Python・TypeScript・Go・Java・C#・PHP・Rubyの7言語向けにクライアントライブラリを生成する。各ライブラリには静的型付け、サーバー送信イベント(SSE)によるストリーミング、リトライ、ページネーションの機能が含まれる
- エージェント向けCLI生成ツール: 単体で動作するCLIバイナリをコンパイルする。AIコーディングエージェントは、使い捨てのHTTPスクリプトを書かずに、ターミナル上からAPIを直接実行できる
- ドキュメント用MCPサーバー生成ツール: OpenAPI仕様とMarkdown形式のドキュメントを、MCP(Model Context Protocol)サーバーへと変換する。Antigravityのようなコーディングエージェントは、古い情報をもとに推測するのではなく、検証済みのスキーマをその場で参照できる
ジェネレーター自体はAGPLv3ライセンスのもとで公開されており、開発・CIパイプライン内で実行しつつ、生成されたコードやSDKについてはMITやApache 2.0など任意のライセンスのもとで完全に所有・管理できるとされています。ジェネレーターのコンパイラ自体を改変した場合は、AGPLの規定によりその改良がコミュニティに公開される仕組みになっています。
実際に使ってみる
更新後のSDKを使うと、GeminiのInteractions APIは次のように呼び出せます。
from google import genai
client = genai.Client()
interaction = client.interactions.create(
model="gemini-3.8-flash",
input="Analyze this commit log and find regressions.",
)
print(interaction.output_text)
genai.Client()でクライアントを初期化し、interactions.create()にモデル名と入力テキストを渡すことで、対話的なタスクを実行できます。自分自身のOpenAPI仕様からクライアントライブラリやCLI、MCPサーバーを生成したい場合は、SpeakeasyのジェネレーターがGitHub上で公開されており、手元の仕様に対して実行できるとされています。
まとめ
本稿では、GoogleがSpeakeasyと提携し、OpenAPIコード生成スイートをオープンソース化した取り組みを紹介しました。決定論的な生成とAIエージェントを組み合わせ、開発者への影響を抑えながらSDKパイプラインを刷新した事例だといえます。今後、同様のオープンなツールチェーンがAI業界全体に広がっていくか注目されます。
