[開発者向け]Google「Gemini Robotics ER 2」登場——動画理解でロボットに時間的知性をもたらす新モデル

目次

はじめに

 Google DeepMindは2026年7月30日、ロボットの高次推論を担う「身体化推論」モデル「Gemini Robotics ER 2」を発表しました。Gemini Robotics-ER 1.6の後継で、動画理解による進捗把握と複数ロボット協調に対応しています。本稿ではその特徴を解説します。

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要点

  • Gemini Robotics ER 2は、ロボットの高次推論を担う「身体化推論」モデルであり、低次の動作実行はVLA(視覚言語行動)モデルに委ねる構成である
  • 連続的な動画理解により、タスクの進捗を5段階で分類する「進捗分類」で57.4%の精度を達成し、重要な瞬間を検知する「モーメント検出」でも91.3%の精度を記録した
  • 複数のロボットが意味理解を共有し連携して作業する「マルチロボット協調」に新たに対応した
  • 安全性評価では、人物接近時に動作を停止し安全確認後に再開する挙動などで前モデルを上回る性能を示した
  • Gemini APIおよびGoogle AI Studio経由で開発者に提供されており、Gemini Enterprise Agent Platformでは非公開プレビューとして利用できる

詳細解説

概要:「ロボットの頭脳」としての身体化推論モデル

 Gemini Robotics ER 2は、ロボットに搭載する高次の「身体化推論」モデルです。Google DeepMindによれば、人と会話しながら物理世界を理解し、複数ステップのタスクを計画する役割を担い、実際の動作実行は個別のVLA(視覚言語行動)モデルに引き継ぐ構成になっています。Google検索などのツール呼び出しやユーザー定義の関数呼び出しにもネイティブに対応しており、行動を実行しながら次の手を「考える」設計が特徴です。

 VLAとは、カメラ映像や言語指示を入力として、ロボットの関節やモーターの動作を直接出力するモデルの総称です。Gemini Robotics ER 2はこのVLAの「上位レイヤー」として機能し、タスク全体の段取りを担う点が従来モデルとの違いだと考えられます。

性能:ツール連携と処理速度の向上

 Google DeepMindによれば、実機のVLA制御、シミュレーション上のVLA制御、人間による遠隔操作という3つの制御モードすべてで、Gemini Robotics ER 2は前モデルのER 1.6を一貫して上回る性能を記録しました。また、低遅延に最適化された双方向ストリーミングに対応するGemini Live APIとの統合により、動作の合間に立ち止まって考えるような不自然な間を減らし、滑らかな指示出しを実現しているとのことです。

 実演として、Boston DynamicsのロボットSpotを使ったデモも公開されており、Gemini Robotics ER 2がナビゲーションやアーム操作のAPIを組み合わせ、自然言語の指示でおやつを取ってくるといった動作を実現しています。コードはGitHub上で公開されています。

 ロボット制御では、高度な推論ができても反応が遅ければ実用的とは言えません。今回の速度面の改善は、賢さと速さの両立という課題に応える取り組みだと考えられます。

進捗把握と安全性:動画理解による時間的知性

 タスクがいつ完了したかを正確に把握することは、ロボティクスにおける大きな課題の一つです。Google DeepMindは、動画の各フレームを進捗度に応じて5段階(0-20%、20-40%、40-60%、60-80%、80-100%)に分類する「進捗分類」で57.4%の精度を、コーヒーを注ぎ終えるタイミングのような重要な瞬間を特定する「モーメント検出」で91.3%の精度・平均0.96秒の誤差を達成したと発表しています。同社によれば、この精度は大規模な競合モデルに匹敵する水準でありながら、計算コストは低く抑えられ、実行速度は4倍速いとのことです。

 また、成功・失敗の検知においても静止画ではなく動画全体を用いることで、こぼれや滑り、位置ずれといった作業途中の失敗を捉えられるようになったほか、計器の読み取り対象をデジタル表示や直線目盛りなど10種類に拡大し、視覚的な質問応答の精度も向上しています。安全面では、人物が近づくとロボットの動作を停止し、離れると自律的に再開する挙動などが確認されており、安全な制御の実現に向けた新しい評価基準も併せて公開されました。

 こうした進捗把握や安全確認の仕組みは、工場や倉庫のような人と機械が近接する現場でロボットを実用化する上で重要な要素だと言えます。

利用方法:複数ロボットの協調も視野に

 Gemini Robotics ER 2は、Gemini APIおよびGoogle AI Studioを通じて開発者に公開されており、Gemini Enterprise Agent Platformでは非公開プレビューとして提供されています。加えて、車輪型ロボットとヒューマノイド型ロボットのように得意分野が異なる機械同士が意味理解を共有し、作業を引き継ぎ合う「マルチロボット協調」にも対応しました。ApptronikのApollo 2とFranka F3 Duoが連携する事例も紹介されています。

 1台のロボットにすべての作業をこなさせるのではなく、得意分野に応じて複数のロボットを組み合わせる発想は、今後の現場導入を考える上で参考になるアプローチだと思います。

まとめ

 Gemini Robotics ER 2は、動画理解による進捗把握と複数ロボットの協調機能を備え、前モデルから着実に進化しています。安全性評価の強化も進んでおり、今後の実運用データに注目したいところです。Googleのロボティクス事業については、Intrinsic統合の記事でも触れています。

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