はじめに
OpenAIは2026年9月16日、ChatGPT WorkとCodexの利用状況・業務内容・成果を一元的に把握できる管理者向け分析機能を紹介する記事を公開しました。本稿ではこの内容をもとに、AI活用を事業価値にどう結びつけるかを解説します。
参考記事
- タイトル: How to connect AI usage to business value
- 著者: OpenAI
- 発行元: OpenAI
- 発行日: 2026年9月16日
- URL: https://openai.com/index/how-to-connect-ai-usage-to-business-value/
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要点
- OpenAIは、管理者コンソールの分析機能でChatGPT WorkとCodexの利用状況・業務内容・成果を一元的に把握できると紹介した。
- Insightsのタスク分類機能は、メッセージのサンプルを業務ごとに分類し、チームがAIをどう使っているかを可視化する。
- Outcomesビューは、マージされたコミットやコード行数に占めるCodexの貢献割合を追跡できる。
- 管理者用プラグインとAPIを使うと、利用傾向をレポート化し、リーダー向け資料の作成や自社ダッシュボードとの連携ができる。
- 営業の商談準備を例にした試算では、AI導入コストに対して245%の投資対効果(ROI)が示された(仮想的な数値)。
詳細解説
利用状況と支出を把握する
OpenAIの発表によれば、管理者コンソールの「Usage」ビューでは、ChatGPT WorkとCodex全体のアクティブユーザー数、クレジット(利用量に応じて消費されるポイント)、トークン利用量を一元的に確認できます。グループやユーザーで絞り込むと、利用が低調な部署を把握できるため、担当のチームオーナーと使い始め方やトレーニングの必要性を話し合うきっかけになるとされています。
ChatGPT Enterpriseにこうした利用状況・支出の分析機能が追加された経緯は本ブログでも取り上げましたが、今回の発表はその機能を業務内容や成果の分析にまで広げたものと位置づけられます。
AIがどんな業務に使われているかを可視化する
「Insights」内のタスク分類機能は、メッセージのサンプルをユースケースとタスクに分類し、AIがどのような業務を支えているかを示します。例えばソフトウェアエンジニアリングには機能開発やコード保守が含まれ、営業・収益には顧客調査や計画立案が含まれるとされています。「Overview」タブで業務内容の全体像を、「Use cases」タブでタスクごとの詳細な内訳を確認でき、グループごとに絞り込むことで、チームの使い方に応じて評価すべき業務や成果を事業責任者と検討できます。
OpenAIが挙げた例では、ある営業チームで最もクレジットを消費していたのは顧客調査と計画立案でした。こうした可視化は、AIが商談準備をどう変えているかを議論する出発点になると考えられます。
トレーニング・サポートが必要な箇所を特定する
タスクの詳細画面では、「モデル」「推論」「速度」の各設定がクレジットに占める割合を確認できます。これにより、業務内容に見合った設定になっているかを判断し、モデル選択に関するトレーニングを的確に行いやすくなるとされています。例えば、定型的な資料作成であれば、より高速・低コストな設定で試し、品質と確認・修正にかかる時間を比較する価値があるとされています。
「プラグインリーダーボード」と「スキル」ビューは、どのツールがタスクを支えているかを示し、トレーニングの対象や維持・共有すべきワークフローの判断に役立ちます。関連性の高いプラグインの利用が少ない場合はアクセス権やトレーニングの不足を、頻繁に使われるスキルは明確な担当者と定期的な更新の必要性を示している可能性があるとされています。Datadogのプロダクトマネージャーは、「OpenAIの分析機能によってチームのAI活用状況を理解でき、今後のガイドラインや方針を検討する土台になっている」と述べています。
Codexのエンジニアリング成果への貢献を追跡する
「Outcomes」ビューは、マージされたコミットやコード行数に占めるCodexの貢献割合を、コードレビューの活動とあわせて追跡します。グループ・ユーザー・リポジトリ単位で絞り込めるため、管理者やエンジニアリングリーダーは、どこでアクセスやサポートを拡大すべきかを判断しやすくなるとされています。マージされたコードに占めるCodexの割合が増えている場合、レビュー時間や欠陥、手戻りの傾向と突き合わせることで、チームがより効果的にソフトウェアを出荷できているかを評価できます。
管理者用プラグインとAPIで傾向を分析し共有する
OpenAIの管理プラグインの基本機能については本ブログでも紹介しましたが、ChatGPT Work内の管理者用プラグインでは、利用状況・支出・タスクを比較し、その結果を予算検討や展開判断のためのレポートにまとめられます。グラフや主要な発見、推奨される次のステップを含むリーダー向けの資料を、部門を横断する関係者にそのまま共有できる形で作成することも可能とされています。管理者用APIを使えば、自社のダッシュボードでレポートを自動化し、分析結果を既存の業務システムのデータと組み合わせられます。例えば、サポート部門のダッシュボードで、クレジット利用状況とチケット解決時間を並べて表示するといった使い方が挙げられています。
分析結果をビジネス成果に結びつける——5つの問い
OpenAIによれば、利用状況やタスクのデータは、事業責任者とともに価値を検証するための出発点にすぎません。業務内容がどう変わったか、成果が改善したか、その改善にどれだけの価値があるかという文脈は、事業責任者が補う必要があるとされています。ワークフローの価値を検討する際は、次の5つの問いから始めることが提案されています。
- 何を改善したいか: 準備の迅速化、品質向上、コスト削減、売上増加など、チームにとって重要な成果を選ぶ。
- 現在のプロセスはどうなっているか: タスクの頻度、所要時間、良い結果の基準など、出発点を明確にする。
- AIによって何が変わるか: 一定期間の結果を比較する。確認・修正にかかる時間も含め、速さが品質基準を満たしているかを見る。
- チームにとって何が可能になるか: 削減できた時間が顧客との会話増加につながるか、品質向上が修正の減少につながるかなど、チームと話し合って重要な改善点を把握する。
- 投資に見合う効果か: チームが得るものと、AI・導入・継続的なサポートへの支出を比較し、拡大すべき領域やさらなる支援が必要な領域を判断する。
試算例:営業の商談準備でのROI
OpenAIは、週2件の商談準備資料を作成する20人の営業チームを例に、仮想的な投資対効果(ROI)を試算しています。AIの活用で1件あたり3時間を削減できたと仮定すると、年間の削減時間は20人×週2件×3時間×46週で5,520時間になります。このうち50%を、時給75ドル(フルタイム換算の人件費)に相当する生産的な業務に充てたとすると、年間の見積もり価値は5,520時間×50%×75ドルで20万7,000ドルとなります。AI導入・設定・トレーニング・継続的なサポートにかかる初年度の総コストを6万ドルと仮定すると、(20万7,000ドル−6万ドル)÷6万ドルで、ROIは245%と試算されています。
本稿としては、この数値はあくまで仮定に基づく例示であり、実際の効果は業務内容や組織によって大きく異なると考えられます。OpenAI自身も、この試算が成約率や商談規模の拡大といった追加的な効果を含んでいない点を明記しています。
顧客企業に見えている効果
- 1Password: Codexを使ってソフトウェアの構築・レビュー・テストを行い、厳格なセキュリティ方針を維持しながら本番品質の機能や社内ツールをより速く構築しているとされ、553%のROIと年間80万ドルのエンジニアリング容量価値を見積もっています。
- ATV Big Air Tour: ChatGPT Workをイベント情報の確認や在庫計画、ウェブサイトの視認性向上に活用し、リスティングの確認作業を週8時間から1時間に、在庫関連の作業を2〜3日から2〜3時間に短縮したとされています。
- Playco: OpenAIのAPI経由でGPT-6 Astraを使い、プレイ可能なゲームのプロトタイプを構築・検証しています。1つの土台から3種類のテーマのプロトタイプを作成し、従来モデルと比べて手作業による修正が50%減ったと報告しています。
始め方
OpenAIは、まず管理者コンソールの「Insights」を開き、事業上の優先課題を支える共通タスクを選ぶことを勧めています。それを事業責任者とともに確認し、基準値と評価する成果について合意した上で、進捗を確認する時期を設定します。結果をもとに、ワークフローを拡大するか、使い方を改善するか、別の方法を試すかを判断する流れになるとされています。なお、OpenAIは、既定の設定では組織の業務データをモデルの学習に用いないと説明しています。
まとめ
OpenAIの分析機能は、ChatGPT WorkとCodexの利用状況・業務内容・成果を可視化し、投資対効果を検証する土台を提供します。示されたROIは仮想例ですが、5つの問いに沿って検証する考え方は応用しやすいと考えられます。本稿としては、身近なタスクから小さく検証を始める姿勢が重要だと考えています。
