はじめに
NVIDIAが2026年4月28日、OpenAIのコーディングエージェント「Codex」をGPT-5.5搭載で社内全従業員に展開したと発表しました。エンジニアリングから法務・財務まで1万人超が活用し、「人生を変えるような成果」と評する声も上がっています。本稿では、その具体的な成果と背景にあるインフラ戦略、および両社の長期的な協力関係について解説します。
参考記事
- タイトル: OpenAI の最新 GPT-5.5 が NVIDIA インフラ上で Codex を駆動し、NVIDIA は既にその活用を開始
- 著者: Justin Boitano
- 発行元: NVIDIA Blog(日本語版)
- 発行日: 2026年4月28日
- URL: https://blogs.nvidia.co.jp/blog/openai-codex-gpt-5-5-ai-agents/
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要点
- NVIDIAの1万人超の従業員がエンジニアリング・法務・財務など多部門でGPT-5.5搭載Codexを活用し、デバッグサイクルの大幅短縮など具体的な成果を上げている
- NVIDIA GB200 NVL72上での稼働により、100万トークンあたりのコストは従来比35分の1、1MWあたりのトークン出力は50倍に向上した
- セキュリティ面では、クラウドVMへのSSH接続・データ保持ゼロポリシー・読み取り専用アクセスにより、企業データを外部に公開しない安全な運用環境を整備した
- NVIDIAとOpenAIは2016年から10年以上にわたるフルスタックの協力関係にあり、OpenAIは今後10ギガワット超のNVIDIAシステム導入を表明している
詳細解説
GPT-5.5搭載Codexの社内展開と具体的な成果
NVIDIAは2026年4月28日、OpenAIのエージェント型コーディングアプリケーション「Codex」をGPT-5.5搭載で社内展開したことを公表しました。エンジニアリング、製品開発、法務、マーケティング、財務、営業、人事、運用、開発者プログラムなど多岐にわたる部門の1万人超の従業員がすでに活用しており、「驚くべき」「人生を変えるような」成果を上げているとのことです。
NVIDIAによれば、エンジニアたちはCodexアプリを通じてGPT-5.5に数週間前からアクセスを開始しており、その成果は可視化されています。具体的には、かつて数日を要していたデバッグサイクルが数時間に短縮され、以前は数週間かかっていた実験も、複雑な複数ファイルのコードベースにおいて一晩で進展するようになったとのことです。また、自然言語プロンプトからエンドツーエンドの機能をリリースできるようになり、以前のモデルに比べ信頼性の向上と無駄なリソース消費の削減も実現しています。NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアンは全従業員にCodex活用を促すメールを送り、「光速で飛び立とう。AIの時代へようこそ」と呼びかけました。
AIエージェントが開発者向けだけでなく、法務・財務・営業といった非エンジニア職にも活用されている点は、エンタープライズ全社導入の一つのモデルケースとして注目されます。
GB200 NVL72が実現した推論コスト革命
今回の全社展開を経済的に可能にしたのが、NVIDIAの最新インフラです。NVIDIAによれば、NVIDIA GB200 NVL72ラックスケールシステム上でのGPT-5.5稼働により、従来世代のシステムと比較して 100万トークンあたりのコストは35分の1 に、1メガワットあたりのトークン出力は50倍 に向上しました。
GB200 NVL72は、NVIDIAのBlackwellアーキテクチャをベースとしたラックスケールシステムで、GPU間の高速通信を実現するNVLink Fusionを活用した大規模AI推論向けの構成です。フロンティアモデルの推論はこれまで費用対効果の面からエンタープライズ規模での展開が難しいと見られていましたが、この大幅なコスト低減がそのハードルを引き下げたと考えられます。NVIDIAはこれを「フロンティアモデルの推論をエンタープライズ規模で実現する経済性」と位置づけており、GPT-5.5はこのインフラがフル稼働した成果だとしています。
エンタープライズ向けセキュリティ設計
大規模な社内展開にあたり、セキュリティと監査可能性の確保も重要な要素です。NVIDIAの発表によれば、Codexアプリは承認済みのクラウド仮想マシン(VM)へのリモートSSH(Secure Shell)接続をサポートしており、エージェントは企業データを外部に公開することなく実際の業務データを操作できます。
NVIDIA ITは全従業員向けにクラウドVMを展開し、エージェント専用のサンドボックス環境を提供しています。さらに、データ保持ゼロポリシーに基づく設計を採用しており、エージェントはコマンドラインインターフェースを介して読み取り専用権限で本番システムにアクセスします。AIエージェントの企業内展開では情報漏洩リスクや操作履歴の監査可能性が課題とされることが多いですが、今回の構成はそれらへの一つの対応モデルとして参考になると思います。
10年以上にわたるNVIDIA・OpenAIの協力関係
今回の展開は、2025年9月に発表されたNVIDIA・OpenAI間の大規模インフラ提携を含む、2016年から始まった長期パートナーシップの最新の成果です。当時、フアンCEOがOpenAIのサンフランシスコ本社に最初のNVIDIA DGX-1 AIスーパーコンピューターを手渡しで届けたことからこの協力関係は始まりました。
現在、NVIDIAはOpenAIのgpt-ossオープンウェイトモデルのリリース当初からのパートナーとして、TensorRT-LLMやvLLM、Ollamaなどのエコシステムフレームワーク向けにモデルの最適化を担っています。一方でOpenAIは次世代AIインフラ向けに10ギガワットを超えるNVIDIAシステムの導入を表明しており、今後数年にわたり数百万基のNVIDIA GPUがOpenAIのモデルのトレーニングと推論の基盤となる予定です。また、両社は初期段階のシリコン開発・共同設計においてもパートナー関係にあり、OpenAIはNVIDIAのハードウェアロードマップへのフィードバックを提供し、その見返りとして新アーキテクチャへの早期アクセスを得ています。この関係の具体的なマイルストーンとして、両社は最初のGB200 NVL72による10万基のGPUクラスタを共同で立ち上げ、複数の大規模トレーニング実行を完了したとのことです。
まとめ
NVIDIAが社員1万人超にGPT-5.5搭載Codexを全面展開したことは、フロンティアモデルを組織横断で活用するエンタープライズAIが新たな段階に入ったことを示しています。GB200インフラによる大幅なコスト低減と安全設計がその基盤にあり、今後のAIエージェント全社展開の動向に注目したいと思います。GPT-5.5そのものの詳細については、こちらの解説記事もあわせてご覧いただければと思います。
