はじめに
Googleが2026年2月25日に公開したポッドキャスト「Ads Decoded」第3回で、Google広告UIのプロダクトマネージャーとSearch Ads UXリードが、検索広告のデザイン・テストプロセスを詳しく解説しました。本稿では、その内容をもとに、AI時代の検索広告設計の考え方と広告主が取るべき戦略を整理します。
参考記事
- タイトル: Ads Decoded episode 3 explores how Google is reimagining Search ads experiences
- 著者: Ginny Marvin
- 発行元: Google Blog
- 発行日: 2026年2月25日
- URL: https://blog.google/products/ads-commerce/ads-decoded-reimagining-search-ads/


要点
- GoogleのAds UIチームとUXチームは、ユーザーと広告主の双方への価値提供を最優先に検索広告を設計している
- 新しい広告フォーマットの導入は「仮説駆動」の厳格なテストプロセスを経ており、製品・デザイン・リサーチ・エンジニア・データサイエンスの5者が協働する「Five in the Box」体制で検証される
- AIは広告体験において「情報の整理・簡略化エンジン」として機能し、複雑なクエリに対してより関連性の高い広告配信を可能にする
- アセットの多様性が重要であり、単一アセットのインプレッション数より広告全体のパフォーマンスに注目することが推奨される
- 「広告を非表示」ボタンはユーザーの自律性を高める施策で、長期的なユーザー信頼の構築を通じて広告主にもプラスの効果をもたらすと説明されている
詳細解説
「Ads Decoded」第3回——Google広告チームの舞台裏
「Ads Decoded」は、Googleが公開しているポッドキャストシリーズです。今回の第3回では、ホストのGinny Marvin氏が、Ads UIプロダクトマネージャーのAbby Butler氏とSearch Ads UXリードのAdam Bullock氏を招き、検索広告のデザインおよびテストの実態を紹介しています。
Ads UIチームは、Google広告の管理画面ではなく、検索結果ページ上に実際に表示される広告の体験そのものを担当するチームです。ユーザーが目にする広告の見た目・配置・インタラクションを設計することが主な役割とされています。
AIが検索広告にもたらす変化
ポッドキャストの中でAdam Bullock氏は、AIが広告体験において果たす役割を「情報の整理・簡略化」と説明しています。複雑なクエリや会話型の検索が増える中、広告が伝えるべき価値を素早く分かりやすく提示することが課題になっているとのことです。
また、Abby Butler氏はパーソナライゼーションの観点にも言及しており、ユーザーの意図をより深く理解し、検索の過程で求める情報をスムーズに提供することが今後の方向性だと述べています。AI OverviewsやAI Modeが普及するにつれ、一度のクエリではなく複数回のやり取りを通じた「カスタマージャーニー全体」での広告接点の設計が重要になると考えられます。
テストプロセス——「Five in the Box」と仮説駆動の開発
新しい広告フォーマットや表示方法の変更は、厳格なテストプロセスを経て初めて公開されます。Googleのチームが採用しているのが「Five in the Box」と呼ばれる協働体制で、製品(PM)、デザイン(UX)、リサーチ(UXR)、エンジニア、データサイエンスの5者が同じテーブルに着いて仮説を検証します。
Adam Bullock氏によれば、すべての変更は「なぜこれに価値があるか」という根拠ある仮説から出発し、小規模なテストから始めて段階的に拡大していくとのことです。Googleのスケールでは小さなテストでも大量のトラフィックが集まるため、データに基づいた判断が可能になります。広告の表示が変わったり、アセットが想定と異なる配置で掲載されたりすることが広告主にとって分かりにくく感じられる場合がありますが、こうした慎重なプロセスが背景にあると言えます。
アセットの多様性——単一のインプレッションにこだわらない
Abby Butler氏は、ヘッドラインがサイトリンクとして表示されるケースや、2つのヘッドラインがサイトリンクと組み合わせて配信されるケースを例に挙げ、こうした変化の背景にある考え方を説明しています。目的は「スケールでの関連性の最大化」であり、広告主が提供する高品質なアセットを、より多くのクエリに対して最適な形で活用することだとしています。
Adam Bullock氏はアセットを「デザインチームが使える絵の具」と表現しています。アセットの種類が豊富であるほど、新しいフォーマットやUI表示の機会が広がるとのことです。単一アセットのインプレッション数が少ない場合でも、それが将来の新しいフォーマットに使われる可能性があるため、広告全体のパフォーマンスに注目することが重要だと強調されています。
「広告を非表示」機能——ユーザー信頼が長期的な広告効果を生む
検索結果ページに追加された「広告を非表示(Hide Sponsored Results)」ボタンは、多くの広告主にとって意外な機能として受け止められたようです。しかしGoogleのチームは、ユーザーに選択肢を与えることが長期的な信頼構築につながり、結果として広告主にもプラスに働くと説明しています。
実際には、非表示オプションが表示されてもユーザーが広告を隠すことは多くないとのことです。また、このボタンから得られるユーザーの反応データを、広告体験の改善に活用しているとしています。短期的なトラフィックより長期的な価値を優先するという考え方が、この施策に反映されていると言えます。
過去のテスト事例——LLMを活用した「質問応答型広告」
過去の事例として、Abby Butler氏はLLMを活用した「回答型広告フォーマット」のテストについて触れています。ユーザーが質問形式のクエリを入力した際に、広告としてその質問への回答をAIが生成・表示するという試みで、コンテンツの品質は高かったものの、既存フォーマットとの比較で成果が出なかったためいったん保留されたとのことです。ただし「別の形で戻ってくる可能性はある」とも述べており、AI生成コンテンツを活用した広告体験の模索は続いていると考えられます。
2026年の広告戦略——会話型検索への対応
AI ModeやAI Overviewsの普及を踏まえ、Googleのチームは広告主に対してアセットの多様化と柔軟性の確保を勧めています。会話型の検索では複数のクエリが連続して発生するため、それぞれの文脈に合わせた広告表示が求められます。より多くの多様なアセットを用意することで、複雑なクエリに対しても関連性の高い広告を配信できる可能性が高まると説明されています。
また、今回のポッドキャストではダイレクトオファー(Direct Offers)についてのQ&Aも紹介されています。これはAI Modeにおいて、購買意欲の高いユーザーに対して特定の割引オファー(例:20%オフクーポン)を直接表示できる機能です。広告主がMerchant Centerで設定したオファーをGoogleのAIが最適なタイミングで表示する仕組みで、2026年1月に米国の一部広告主向けにパイロットテストが開始されています。広告主はオファーの内容と対象製品をコントロールでき、AIが単独で内容を決定するわけではないとのことです。
まとめ
Googleの検索広告チームが示した設計思想の核心は、ユーザーと広告主の長期的な信頼関係の構築です。AI時代に向けて、アセットの多様性を高め、特定フォーマットに縛りつけない柔軟な姿勢が広告主にも求められています。ダイレクトオファーをはじめ、会話型検索に対応した新しい広告体験は今後さらに広がると考えられます。
