はじめに
OpenAIは2026年7月27日、米国のChatGPT利用者による80万件以上のメッセージを分析した新レポート「Work at the Frontier」を公表しました。本稿では、AIの活用によって従来の職種の枠を超えた業務(タスク・クロスオーバー)がどの程度、どのように広がっているのかを解説します。
参考記事
- タイトル: How AI is expanding what people do at work
- 著者: OpenAI Economic Research
- 発行元: OpenAI
- 発行日: 2026年7月27日
- URL: https://openai.com/index/how-ai-is-expanding-what-people-do-at-work/
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要点
- OpenAIの分析によれば、仕事関連メッセージの16.8%、職種固有メッセージに限ると43.5%が本来別の職種に紐づくタスクである
- 顧客対応(77%)、デザイン(75%)、人事(69%)など8職種中5職種で、職種外タスクの割合が過半数を占める
- 財務計算とIT関連のトラブルシューティングは、他の7職種すべてで「よく使われる職種外タスク」の上位3つに入る
- 小規模な職場(2〜5人利用)では職種外タスクの比率が18.9%、大規模な職場(100人超利用)では16.3%と、組織規模による差が見られる
- 本レポートはOpenAIが継続的に展開する「Work at the Frontier」シリーズの第1弾であり、AIによる職務変化を継続的に分析する取り組みの一部である
詳細解説
タスク・クロスオーバーとは何か
OpenAIによれば、今回の分析では執筆・要約・スケジュール調整のように多くの職種で共通して使われる業務を「汎用的」なタスクとして除外したうえで、残りの職種固有の業務が利用者自身の職種の内側にあるか外側にあるかを分類しています。全体のChatGPT利用のうち61.5%は汎用的な用途で、残り38.5%が職種固有の用途であり、そのうち43.5%が利用者本来の職種の外にあるタスクだったとのことです。
この「タスク・クロスオーバー」という概念は、AIが単に既存の業務を効率化するだけでなく、誰がどの業務を担当するかという役割分担そのものを変えつつあることを示す視点だと考えられます。従来、職種と業務内容の対応関係を前提に議論されることが多かった分野において、実際の利用データから役割の変化を捉えようとする試みは興味深いのではないでしょうか。
職種によって異なる「越境」の度合い
OpenAIの発表では、職種固有メッセージのうち職種外タスクが占める割合について、顧客対応担当者で77%、デザイナーで75%、人事担当者で69%、法務担当者で56%、マーケターで53%という結果が示されています。一方、営業や財務では40%、エンジニアリングでは28%にとどまりました。
さらに詳しく見ると、タスクの「越境のしやすさ」には方向性の違いがあるようです。デザイン職はメッセージの35.2%が他職種由来のタスクである一方、デザイン業務自体が他職種のメッセージに占める割合はわずか1.7%と、外部から取り込む側に偏っています。対照的にエンジニアリングは職種外タスクの割合が18.5%にとどまる一方、エンジニアリング関連のタスクは他職種のメッセージの7.4%を占めており、他部門に供給する側の性格が強いといえます。マーケティングは両方向で存在感があり、他職種からの取り込み(24.3%)と他職種への供給(8.9%、サンプル中最大)の両方が目立つ結果となりました。
財務計算とテクノロジー関連のトラブルシューティングは、分析対象となった他の7職種すべてで「よく使われる職種外タスク」の上位3つに入ったといいます。マーケティング資料の作成も5つの職種群にまたがって見られており、特にデザイン職からの利用が目立ちました。こうした特定タスクの広がり方は、AIが業務の「汎用スキル」として機能し始めている領域を見極めるヒントになると考えられます。
組織規模とタスク越境の関係
OpenAIによれば、平均的な利用者における職種外タスクの比率は、2〜5人規模の職場で18.9%、100人超の職場で16.3%と、組織が大きくなるほど下がる傾向が見られました。ただし、利用頻度が特に高いヘビーユーザーの層では、同様の傾向は見られなかったとのことです。
この違いについてOpenAIは、小規模組織の中程度の利用者は本来別の部門が担うはずの業務に直面した際にAIへ頼る一方、ヘビーユーザーは組織の規模によらず似たような形でAIを組み込んだ業務フローを確立していたり、自身の本来の職種内でより集中的にAIを使っていたりする可能性があると分析しています。専門人材が手薄になりがちな小規模組織ほど、AIが汎用的な補完役として機能しやすいと考えられます。
まとめ
今回の分析は、AIが職種を超えた業務分担に影響し始めていることを示すデータだと思います。OpenAIは今後もシリーズで職務変化を追う方針です。労働市場への影響についてはAnthropicの取り組みも参考になります。
