はじめに
OpenAIは2026年4月15日、Agents SDKの大幅なアップデートを発表しました。ファイルの検査、コマンドの実行、コード編集、長時間タスクの継続実行を制御されたサンドボックス環境内で行えるよう、実行基盤が強化されています。本稿では、新しいエージェントハーネスとサンドボックス実行の仕組み、および設計上の特徴について解説します。
参考記事
- タイトル: The next evolution of the Agents SDK
- 著者: OpenAI
- 発行元: OpenAI
- 発行日: 2026年4月15日
- URL: https://openai.com/index/the-next-evolution-of-the-agents-sdk/
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要点
- OpenAI Agents SDKが更新され、設定可能なメモリ、サンドボックス対応のオーケストレーション、ファイルシステムツール、MCP・スキル・AGENTS.mdといったフロンティアエージェントシステムで一般化しつつある基本要素が標準統合された
- サンドボックス実行がネイティブサポートとなり、Blaxel・Cloudflare・Daytona・E2B・Modal・Runloop・Vercelの7プロバイダーに対応
- ハーネスとコンピュート環境を分離する設計により、セキュリティ(プロンプトインジェクション対策)・耐久性(スナップショットと再ハイドレーション)・スケーラビリティの向上を実現
- Manifest抽象化により、AWS S3・Google Cloud Storage・Azure Blob Storage・Cloudflare R2などのストレージプロバイダーとローカル環境を統一的に扱える
- 現在はPython向けに一般提供中。TypeScript対応は将来のリリースで予定されており、コードモードとサブエージェント機能の追加も計画されている
詳細解説
更新の背景:既存フレームワークの課題
OpenAIによれば、開発者がエージェントを構築するうえで必要なのは優れたモデルだけではなく、ファイルの検査、コマンドの実行、コード記述、長時間の継続作業を支えるシステム基盤だとしています。
既存のフレームワークにはそれぞれトレードオフがありました。モデル非依存のフレームワークは柔軟である一方、フロンティアモデルの性能を十分に引き出せない場合があります。モデル提供者のSDKはモデルに近い実装が可能ですが、実行ハーネスの可視性に課題が残ることがあります。マネージド型のエージェントAPIはデプロイを簡略化する一方、エージェントの実行環境やデータアクセスに制約が生じます。今回のアップデートはこうした状況に対応し、開発者が標準化されたインフラを活用しながら自社スタックへ柔軟に組み込めるよう設計されています。
強化されたエージェントハーネス
新しいAgents SDKのハーネスには、ドキュメント・ファイル・システムを扱うエージェント向けの機能が追加されています。具体的には、設定可能なメモリ、サンドボックス対応のオーケストレーション、Codexライクなファイルシステムツールが含まれます。
また、フロンティアエージェントシステムで一般化しつつある基本要素として、MCP(Model Context Protocol)によるツール利用、スキルによるプログレッシブディスクロージャー、AGENTS.mdによるカスタム指示、シェルツールによるコード実行、apply patchツールによるファイル編集などが標準統合されています。本ブログでは2025年12月に、OpenAIとAnthropicがMCPとAGENTS.mdをLinux Foundationに寄贈したことを取り上げました(https://jobirun.com/anthropic-openai-agentic-ai-foundation-mcp-agents-md/ )が、今回のSDK更新はその動きを受けた実装と言えます。
ハーネスがフロンティアモデルの動作パターンに合わせた実行を行うことで、モデルの性能を最大限に活用できるとOpenAIは説明しています。特に長時間実行タスクや多様なツール・システムをまたぐ作業での信頼性とパフォーマンスの向上が期待されます。
ネイティブサンドボックス実行
OpenAIの発表によれば、Agents SDKはサンドボックス実行をネイティブにサポートし、エージェントがファイルの読み書き、依存関係のインストール、コード実行、ツール使用を安全な環境内で行えるようになりました。
対応するサンドボックスプロバイダーはBlaxel、Cloudflare、Daytona、E2B、Modal、Runloop、Vercelの7社です。開発者は自前のサンドボックスを持ち込むことも可能で、柔軟な実行環境の選択肢が確保されています。
また、Manifest抽象化により、ローカルファイルのマウント、出力ディレクトリの定義、AWS S3・Google Cloud Storage・Azure Blob Storage・Cloudflare R2といったストレージプロバイダーからのデータ取得を一貫した方法で記述できます。この仕組みによって、ローカルのプロトタイプから本番デプロイまで、エージェントの実行環境を統一的に管理できると考えられます。
ハーネスとコンピュートの分離設計
今回の設計上の重要な考え方として、ハーネスとコンピュート環境を明確に分離した点があります。OpenAIは、エージェントシステムはプロンプトインジェクションや情報漏洩の試みを前提として設計すべきとしており、この分離によってモデルが生成したコードの実行環境に認証情報が混入するリスクを低減できるとしています。
耐久性の面では、エージェントの状態が外部化されるため、サンドボックスコンテナが失われても実行が途切れません。スナップショットと再ハイドレーション機能により、元の環境に障害が発生した場合でも、新しいコンテナで最後のチェックポイントから処理を再開できます。
スケーラビリティの観点では、1つのサンドボックスでも複数のサンドボックスでも動作し、必要に応じてサブエージェントを独立した環境にルーティングしたり、複数コンテナで作業を並列処理したりすることが可能です。セキュリティ・耐久性・スケーラビリティという3つの課題を設計原則として明示している点は、エージェントの本番運用を見据えた実装として注目に値すると思います。
提供状況と今後の展開
OpenAIによれば、今回の新機能はAPIを通じてすべての顧客に一般提供されており、標準のAPI価格(トークンおよびツール使用に基づく従量制)が適用されます。現時点ではPython向けの提供となっており、TypeScript対応は将来のリリースで予定されています。
今後の開発としては、コードモードとサブエージェント機能のPython・TypeScript両対応、サンドボックスプロバイダーの拡充、さらに多くのエコシステム統合も進める予定だとしています。
まとめ
OpenAI Agents SDKの今回のアップデートは、プロトタイプから本番運用への移行を支えるインフラ基盤の整備と考えられます。サンドボックスのネイティブサポート、ハーネスとコンピュートの分離設計、Manifestによる環境抽象化により、エージェント開発の標準化が進んだと言えます。TypeScript対応や追加機能の拡充など、今後の展開にも引き続き注目したいと思います。
