はじめに
Meta(旧Facebook)の元従業員26人が、AIツールを使って産休・傷病休暇取得者を狙い撃ちする形でレイオフ対象を選定したとして、同社を提訴しました。The Guardianが2026年7月15日に報じた内容をもとに、訴訟の内容とAI人事活用が抱える課題について解説します。
参考記事
- タイトル: Meta used AI to tag workers who took leave to be laid off, lawsuit claims
- 著者: Dara Kerr
- 発行元: The Guardian
- 発行日: 2026年7月15日
- URL: https://www.theguardian.com/technology/2026/jul/14/meta-ai-mass-layoffs-lawsuit
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要点
- Metaの元従業員26人が、産休・傷病休暇取得者がAIによるレイオフ選定で不当に狙われたとして、カリフォルニア州北部地区連邦裁判所に提訴した。
- 訴訟は今年実施された約8,000人規模の人員削減に関連するものであり、原告らはAI採点システムが休暇中の評価データの欠落を考慮せず不利に扱ったと主張している。
- Metaはキーストロークや活動データを収集する社内AI監視プログラムを導入していたが、従業員の反発を受けて2026年6月に一時停止した。
- 原告側は独立監査の実施とレイオフ手続きの一時差し止めを裁判所に求めている。
- Metaの広報担当者は、人員配置の意思決定は人間が行ったものであり、訴訟の主張には根拠がないとして否定している。
詳細解説
訴訟が指摘するAIによる選定の仕組み
訴訟によれば、Metaは今年実施した約8,000人規模の人員削減にあたり、AIによる業績評価やキーストローク・活動監視データなど複数の社内AIシステムを組み合わせて、解雇対象者の選定に用いたとされています。原告側弁護士は、これらのAIシステムが従業員をスコアリングし、ランク付けして選定リストに含めたと主張しています。
産休や傷病休暇の期間中は業績データが生成されにくく、障害を抱える従業員の場合も評価指標が下がりやすいという構造的な問題が指摘されています。原告の一人は出産2日前にレイオフを通知された研究者で、別の原告は怪我による休職を理由に評価を下げられたエンジニアだと報じられています。こうした事例は、休暇取得という法的権利の行使自体が、皮肉にも評価上不利に働いた可能性を示していると考えられます。
AI監視プログラムの導入と一時停止
Metaは2026年に入り、従業員のキーストロークやマウス操作、閲覧履歴に加え、メールやメッセージ、位置情報まで収集する監視プログラムを社内に導入していました。マーク・ザッカーバーグCEOは社内会議で、優秀な社員の働き方をAIモデルに学習させる狙いがあったと説明しています。
この監視プログラムは従業員への十分な説明なく導入されたとされ、1,600人超の署名を集めた抗議活動を受けて、ザッカーバーグ氏は2026年6月にプログラムの一時停止を発表しました。今回の訴訟は、この監視データがレイオフ選定にも使われていたのではないかという疑念に、法的な論点を与える形になっていると考えられます。
各州の規制動向とAI人事活用の課題
AIによる人事上の意思決定を巡っては、カリフォルニア州、コロラド州、イリノイ州などが、いわゆる「自動意思決定システム」による差別から労働者を保護する法律や規則をここ数年で相次いで整備しています。AI活用が人事評価やレイオフ選定にまで広がる中、こうした規制の適用範囲や実効性が今後の焦点になっていくと考えられます。
日本企業においても、AIによる人事評価や配置の自動化を検討する機会は増えていくと見られますが、休職・休暇中の従業員データの扱いや、評価指標に含まれる潜在的なバイアスをどう管理するかは、共通して検討すべき論点だと思います。
まとめ
MetaのAI活用を巡る今回の訴訟は、レイオフという重い意思決定にAIをどこまで委ねるべきかを問うものだと言えます。AIと採用・評価の関係については、HBRの提言を紹介した過去記事でも整理していますので、あわせてご覧いただければと思います。
