はじめに
Googleは2026年3月16日、ウィーンで開催されたUN Global Fraud SummitにてAdobeやMetaなど10社と共同で「オンライン詐欺・不正対策業界協定(Industry Accord Against Online Scams & Fraud)」に署名しました。本稿では、協定の内容とAIを活用した詐欺対策の取り組みを解説します。
参考記事
- タイトル: Google has signed the Industry Accord Against Online Scams and Fraud.
- 著者: Karen Courington(VP, Trust & Safety Trusted Experiences, Consumer)
- 発行元: Google The Keyword
- 発行日: 2026年3月16日
- URL: https://blog.google/innovation-and-ai/technology/safety-security/google-industry-accord-combat-scams-fraud/
要点
- GoogleはAdobe、Amazon、Meta、Microsoft、OpenAIなど10社と共同で、オンライン詐欺・不正対策の業界協定に署名した
- 協定は各社が脅威インテリジェンスを共有し、防御を連携させることで組織的な詐欺犯罪ネットワークに対抗することを目的とする
- Google.orgはすでに1,500万ドルの資金提供を実施しており、2026年はAIを活用した詐欺検出・無効化ソリューションを拡充する
- Global Signal Exchange(GSE)を通じた情報共有、法執行機関との連携強化、国際サミットの開催が2026年の主要施策として示されている
- データ共有・法執行機関への通報・公共政策フレームワークに関するガイドを参加企業と共同で公開する予定である
詳細解説
業界横断的な詐欺対策協定の背景
Googleによれば、今回の協定はウィーンで開催されたUN Global Fraud Summit(国連グローバル詐欺サミット)の場で署名されました。参加企業には、Adobe、Amazon、Levi Strauss & Co、LinkedIn、Match Group、Meta、Microsoft、OpenAI、Pinterest、Targetが名を連ねており、業種を超えた幅広い顔ぶれとなっています。
Googleはオンライン詐欺が「孤立した事件を超えて進化している」と表現しています。現代の詐欺は個人や中小企業が単独で向き合うような問題ではなく、金銭的・精神的に深刻な被害をもたらす組織的な国際犯罪ネットワークへと変容しており、単一企業や単一国での対応では限界があると考えられます。このような背景から、業界横断での統一した取り組みが求められていると言えます。
Google.orgの資金拠出とAI活用の拡充
Googleによれば、Google.orgはこれまでにこの分野の取り組みへ1,500万ドルの資金を提供しています。2026年はこの基盤をさらに発展させ、AIを活用した詐欺の検出・無効化ソリューションの提供範囲を拡充する方針です。
詐欺検出へのAI活用は、大量のデータをリアルタイムで分析しながら詐欺の兆候となるパターンを自動的に特定できる点が強みと考えられます。特に組織的な詐欺犯罪では、手口が短期間で変化するため、継続的な学習と適応を行えるAIの特性は実用的な意義を持つと思います。
Global Signal Exchange(GSE)の仕組みと実績
Googleは2024年10月、Global Anti-Scam Alliance(GASA)およびDNS Research Federation(DNSRF)と連携してGlobal Signal Exchange(GSE)を立ち上げており、Google自身が最初の創立メンバーとなっています。GSEは、オンライン詐欺・不正行為に関するシグナル(悪意あるURLなど)を集約・共有するためのグローバルなプラットフォームです。
Googleがパイロット段階でGSEに提供したデータは、不正なショッピング事業者のURLが10万件以上、詐欺シグナルが100万件に上りました。DNS Research Federationはすでに4,000万件以上のシグナルを保有しており、プラットフォームはGoogle Cloud Platform上で動作し、AIによってシグナルのパターン検出や照合を効率的に行える設計になっています。
Googleの発表では、2026年もGSEを通じた情報共有を継続・拡充する方針が示されています。複数組織がそれぞれ持つデータを一元化して活用することで、詐欺対策の検出精度が向上すると考えられます。
法執行機関との連携と政策ガイドの公開
Googleによれば、2026年には法執行機関との連携強化と国際パートナーとのサミット開催を予定しています。また、データ共有の実践的なフレームワーク、民間企業から法執行機関への情報提供の手順、公共政策フレームワークに関するガイドを、協定参加企業と共同で公開する予定です。
国境を越えた詐欺犯罪への対応には、技術的な対策にとどまらず、各国の法執行機関や政策立案者との協力関係が重要です。民間企業と公的機関が連携する枠組みとして、今後の具体的なガイドの内容も注目されます。
まとめ
GoogleはUN Global Fraud Summitの場で、10社の業界パートナーとともにオンライン詐欺対策協定に署名しました。AIを活用した検出技術の拡充、GSEを通じた国際的なシグナル共有、法執行機関との連携強化が2026年の柱となります。詐欺手口の進化に対し、業界全体での対応がどのように実を結ぶか、引き続き注目したいところです。
