はじめに
Googleは2026年4月24日、ラスベガスで開催した「Google Cloud Next ’26」において、AIエージェント時代を見据えたエンタープライズ向けプラットフォームの大規模アップデートを発表しました。エージェント開発基盤から第8世代TPU、セキュリティ強化まで、本稿では発表内容の主要ポイントを解説します。
参考記事
- タイトル: 7 highlights from Google Cloud Next ’26
- 著者: Chris Talbott
- 発行元: Google Blog (Google Cloud)
- 発行日: 2026年4月24日
- URL: https://blog.google/innovation-and-ai/infrastructure-and-cloud/google-cloud/google-cloud-next-26-recap/
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要点
- Googleは「Gemini Enterprise Agent Platform」を発表し、Gemini 3.1 ProやAnthropicのClaude Opus 4.7など複数のモデルをローコード環境で活用できる企業向けエージェント開発基盤を提供する
- 「Gemini Enterprise」アプリでは、ノーコードのAgent Designerやバックグラウンド自律動作する長期稼働エージェント、一元管理ツール「Agent Inbox」が公開された
- 第8世代TPUとして訓練向け「TPU 8t」と推論向け「TPU 8i」(コストパフォーマンス80%向上)が発表され、毎秒10TBのデータ転送を実現するVirgoネットワークも公開された
- GoogleとWizの統合が完了し、脅威ハンティングや検知エンジニアリングを担う専門AIエージェントを含むセキュリティ強化策が整備された
- Home Depot、Papa John’s、Unileverなど大手企業によるAIエージェントの実用事例が多数紹介された
詳細解説
エンタープライズ向けエージェント開発基盤「Gemini Enterprise Agent Platform」
Googleが今回の中核として発表した「Gemini Enterprise Agent Platform」は、AIエージェントの構築・ガバナンス・スケールを一貫して行うエンドツーエンドの開発環境です。利用可能なモデルとしては、複雑なワークフロー向けの Gemini 3.1 Pro、ビジュアルアセット生成向けの Gemini 3.1 Flash Image(Nano Banana 2)、プロ品質の音声生成を担う Lyria 3 が揃うほか、AnthropicのClaude Opus 4.7も統合されています。
開発インターフェースには、自然言語でエージェントを構築・テストできるローコードの「Agent Studio」が提供されます。機械学習の専門知識がなくてもエージェントを構築できる環境が整備されることで、エンタープライズ現場での普及が後押しされると考えられます。特定ベンダーのモデルに縛られず、複数のモデルを目的に応じて使い分けられる選択肢の広さは、企業の導入判断において重要な要素だと思います。
業務自動化を支える「Gemini Enterprise」アプリ
「Gemini Enterprise」アプリは、このエージェント基盤を一般従業員の日常業務に届けるためのプロダクトです。コードを一切書かずにカスタムエージェントを作成できる「Agent Designer」に加え、複数ステップにわたる業務プロセスを担う「長期稼働エージェント」が新たに提供されます。長期稼働エージェントはセキュアなクラウドサンドボックス内でバックグラウンド動作し、ユーザーが別の業務に集中している間も自律的にタスクを処理します。
複数のエージェントが並行稼働する環境では、その進捗把握と管理が課題になりやすい点が業界全体で指摘されてきました。今回新設された「Agent Inbox」は、稼働中のエージェントを一元的に監視・ガイド・管理できる統合インターフェースであり、実運用上の信頼性を高める仕組みとして位置づけられます。
第8世代TPUとAIインフラの強化
Googleは今回、第8世代TPU(Tensor Processing Unit: AI処理に特化した自社設計チップ)を2種類発表しました。訓練特化の「TPU 8t」と、推論(モデルのサービング)に最適化した「TPU 8i」です。Googleによれば、TPU 8iはドルあたりの性能が80%向上しています。TPU 8i・8tの技術的な仕様については前日発表の詳細記事でも整理していますので、あわせてご参照ください。
計算基盤に加え、データ転送を担うカスタムネットワーク「Virgo Network」も発表されました。ストレージシステム「Managed Lustre」との組み合わせにより、毎秒10テラバイトという大容量のデータ転送が可能になります。さらに、NVIDIA Vera Rubin NVL72システムをいち早く提供する予定も示されており、自社TPUと外部GPUの双方を活用できるインフラ戦略が明確化されました。
データ活用を再定義する「Agentic Data Cloud」
AIエージェントの性能はアクセスできるデータの質と構造に大きく左右されます。Googleが発表した「Agentic Data Cloud」は、AIがリアルタイムでデータに基づいて行動できるよう、企業のデータ管理のあり方を再定義しようとするものです。
「Knowledge Catalog」は、Geminiを活用してデータを自動タグ付けし、企業固有の文脈や用語を理解できるナレッジマップとして機能します。もうひとつの柱である「Cross-Cloud Lakehouse」はApache Icebergを標準規格として採用し、AWSを含む他のクラウドに存在するデータを移行せずにそのままクエリできる設計です。データの移行コストを抑えながら既存資産を活かせる構成は、マルチクラウド環境を運用している企業にとって現実的な選択肢になると思います。
セキュリティ強化:GoogleとWizの統合完了
Googleは今回、クラウドセキュリティ企業WizのGoogle Cloud統合完了を発表しました。両者の連携により、AIを活用した「アジェンティックな防御」体制が整備されます。具体的には、脅威を自律的にハンティングしセキュリティルールを自動記述する「Threat Hunting」エージェント、検知のカバレッジギャップを特定し新たな検知ルールを作成する「Detection Engineering」エージェント、サードパーティ情報から文脈を補完する「Third-Party Context」エージェントの3種類が提供されます。
WizはDatabricksへの対応拡大や、マルチクラウドPaaSプラットフォームのサポート強化も発表しています。新たに設けられた「Technology Intel Center」では、クラウド・AIテクノロジープロバイダーの新機能リリースや移行情報、サポート終了通知を一元的に把握できます。
Workspace Intelligenceと実用事例
「Workspace Intelligence」では、Docs、Drive、Meet、GmailといったGoogle Workspaceの各ツールをまたいで情報を統合する「Ask Gemini」機能がChatから直接利用できるようになります。会議のスケジューリングやドキュメント作成など、複数ツールにわたる作業をChat画面を離れずに完結できる点が特徴です。
実用事例としては、Home Depotが店内・電話対応アシスタントにGeminiを活用し専門的なアドバイス提供と検索速度の向上を実現した例、Papa John’sが利用者の過去注文を踏まえた注文エージェントを導入した例が紹介されました。また、MarsとCitadel Securitiesがマーケティングや市場分析における定量研究をAIツールで効率化している事例、Unileverが37億人の消費者向けオペレーションを支援するエージェントを組織全体に展開している事例も示されています。
まとめ
Google Cloud Next ’26では、モデル提供・エージェント開発基盤・インフラ・データ管理・セキュリティにわたる一貫したアップデートが示されました。AIを実業務に組み込む「エージェント時代の実装」が本格化している様子が伝わります。各発表の詳細な仕様や価格体系、提供開始時期については今後の続報が注目点だと思います。
