[ビジネスマン向け]ByteDance、独自AIチップ開発でSamsungと製造交渉―年間35万個生産へ

目次

はじめに

 TikTokを運営する中国のByteDanceが、独自のAIチップを開発し、Samsung Electronicsと製造に関する交渉を進めていることが明らかになりました。Reutersが2026年2月11日に報じた内容によれば、同社は2026年中に最大35万個のチップ生産を目指しています。本稿では、この報道をもとに、ByteDanceのチップ戦略と中国AI企業を取り巻く状況について解説します。

参考記事

要点

  • ByteDanceはAI推論タスク用の独自チップを開発中で、Samsung Electronicsと製造について交渉している
  • 3月末までにサンプルチップを受け取り、2026年に少なくとも10万個、最終的には35万個まで生産を拡大する計画である
  • 交渉にはAIインフラ構築で極度に不足しているメモリチップの供給アクセスも含まれる
  • プロジェクトのコードネームは「SeedChip」で、2026年のAI関連調達は1,600億元(約220億ドル)を超え、その半分以上がNvidiaチップ購入と自社チップ開発に充てられる
  • 競合のAlibabaとBaiduはすでに独自AIチップを市場投入しており、ByteDanceは追随する形となる

詳細解説

ByteDanceのチップ開発計画と製造パートナー

 Reutersによれば、ByteDanceはAI推論タスク(Inference)に特化したチップを開発中で、韓国のSamsung Electronicsと製造委託について交渉を進めています。関係者によると、同社は3月末までにサンプルチップの受け取りを目指しており、2026年中に少なくとも10万個のチップを生産する計画です。さらに、段階的に生産を拡大し、最終的には35万個まで増産する意向も示されています。

 AI推論とは、学習済みのAIモデルを使って実際にタスクを実行する処理を指します。これに対してAIモデルの訓練(Training)は、大量のデータからモデルを学習させる処理で、より高い演算性能が求められます。ByteDanceが推論用チップに注力している点は、同社のビジネスモデルが既存のAIサービスを大規模に展開することに重点を置いていることを示していると考えられます。

メモリチップ供給の確保が交渉の鍵

 今回の交渉で特に注目すべき点は、Samsungとの協議にメモリチップの供給アクセスが含まれていることです。関係者によると、世界的なAIインフラ構築の加速により、メモリチップは極度に不足しており、この供給確保が交渉の魅力を高めているとされています。

 AIチップの性能は、演算処理能力だけでなく、大量のデータを高速に処理するためのメモリ帯域幅にも大きく依存します。特に大規模言語モデル(LLM)のような巨大なAIモデルを動かす場合、高性能なメモリが不可欠です。Samsungは世界有数のメモリ半導体メーカーであり、DRAMやHBM(High Bandwidth Memory)などの先進的なメモリ製品を製造しています。ByteDanceにとって、チップ製造とメモリ供給を一体で確保できることは、安定したAIインフラ構築に向けた重要な戦略と言えます。

年間220億ドル超のAI投資計画

 Reutersの報道によれば、ByteDanceは2026年にAI関連の調達に1,600億元(約220億ドル)以上を支出する計画です。関係者によると、その半分以上がNvidiaのH200モデルを含むチップの購入と、自社チップの開発に充てられます。

 この投資規模は、ByteDanceがAI技術を事業の中核に据えていることを示しています。同社は2023年に「Seed」を設立してAIモデルの開発を進めており、今回のチッププロジェクト「SeedChip」もこの取り組みの一環です。ByteDanceの幹部Zhao Qiは1月の全社会議で、AI投資が全事業部門に利益をもたらすと従業員に説明したとされています。

 ただし、Zhao氏は同時に、ByteDanceのAIモデルがOpenAIなどのグローバルリーダーに遅れを取っていることも認めており、今年も継続的な開発支援を約束したと報じられています。

中国AI企業のチップ開発競争

 ByteDanceがチップ開発に本格的に取り組む背景には、競合他社の動向があります。Reutersによれば、AlibabaとBaiduはByteDanceに先行してAIチップの開発を進めています。Alibabaは2026年1月に大規模AIワークロード向けの「Zhenwu」チップを発表しました。Baiduは外部顧客向けにチップを販売しており、チップ事業部門Kunlunxinの上場も計画しています。

 中国のテクノロジー企業がこぞって自社チップ開発に乗り出す理由の一つは、米国による先端チップの対中輸出規制です。Reutersの記事でも指摘されているように、この規制が中国企業の独自チップ開発を加速させる要因となっています。

 一方で、世界的には、Google、Amazon、Microsoftなどのテック大手もNvidiaへの依存を減らすために独自AIチップを開発しています。これらの企業は、自社のクラウドサービスや特定のワークロードに最適化されたチップを設計することで、コスト削減と性能向上を図っています。

過去のチップ開発の試みと今回の意義

 Reutersによれば、ByteDanceのチップ開発の試みは少なくとも2022年に遡り、当時からチップ関連のスタッフを積極的に採用してきました。2024年6月には、米国のチップ設計企業Broadcomと協力して先進的なAIプロセッサを開発し、台湾のTSMCに製造を委託する計画も報じられていました。

 今回のSamsungとの交渉が実現すれば、ByteDanceにとって大きな前進となります。ただし、ByteDanceの広報担当者は「社内チッププロジェクトに関する情報は不正確」と述べており、詳細は明らかにしていません。Samsungもコメントを控えています。

 企業が公式発表前の情報について否定的なコメントを出すことは珍しくありませんが、実際の開発状況や交渉の進捗については、今後の公式発表を待つ必要があります。

ByteDanceのAI戦略とビジネスへの影響

 Reutersによれば、SeedChipプロジェクトは、ByteDanceがチップから大規模言語モデルまで、AI開発にリソースを集中させる広範な取り組みの一環です。同社は、この技術がショートビデオ、Eコマース、エンタープライズクラウドサービスにわたる事業ポートフォリオを変革すると考えています。

 ByteDanceは「Doubao」という中国向けチャットボットと、その海外版「Dola」を運営しています。自社チップの開発により、これらのAIサービスを低コストで大規模に展開できる可能性があります。また、TikTokのコンテンツレコメンデーションや、Eコマースでの商品提案など、既存サービスのAI機能強化にも活用できると考えられます。

まとめ

 ByteDanceは独自AIチップの開発を進め、Samsungと製造交渉を行っています。2026年に最大35万個の生産を目指し、年間220億ドル超のAI投資を計画しているとされます。中国企業は米国の輸出規制に対応するため独自チップ開発を加速させており、ByteDanceもAlibabaやBaiduに続く形で自社チップの実現を目指しています。ただし、OpenAIなどグローバルリーダーとの技術差を認識しながらの取り組みであり、今後の開発動向が注目されます。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次