はじめに
映画芸術科学アカデミーは2026年5月1日、第99回アカデミー賞の新規定を発表しました。今回の改定では、AI(人工知能)が生成した演技や脚本を審査対象外とする内容が明文化され、ハリウッドにおける生成AI活用の急拡大を受けた映画界の公式な立場が示されました。
参考記事
メイン記事:
- タイトル: AI-generated actors and scripts are now ineligible for Oscars
- 著者: Anthony Ha
- 発行元: TechCrunch
- 発行日: 2026年5月2日
- URL: https://techcrunch.com/2026/05/02/ai-generated-actors-and-scripts-are-now-ineligible-for-oscars/
関連情報:
- タイトル: Awards Rules and Campaign Promotional Regulations Approved for 99th Oscars®
- 発行元: 映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences)
- 発行日: 2026年5月1日
- URL: https://press.oscars.org/news/awards-rules-and-campaign-promotional-regulations-approved-99th-oscarsr
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要点
- 俳優賞の審査対象は、映画の正式クレジットに記載され、かつ本人の同意を得て人間が演じたことが証明できる演技のみとなる
- 脚本部門では、人間が執筆した脚本のみが審査対象となる
- アカデミーは生成AIの使用の性質および人間による著作性について、詳細情報を要求する権利を留保している
- 今回の規定は、AI生成のヴァル・キルマーが登場するインディペンデント映画の制作やAI「女優」の登場など、ハリウッドにおけるAI活用の急速な拡大と同時期の発表である
- AI関連以外にも、俳優賞での複数演技ノミネート解禁や国際長編映画賞の申請方法拡充など、複数の改定が含まれる
詳細解説
AIと演技・脚本への新ルール
映画芸術科学アカデミーが発表した第99回アカデミー賞規定では、俳優賞について「映画の正式クレジットに記載され、かつ本人の同意を得て人間が演じたことが証明できる演技のみが審査対象となる」と明記されました。脚本部門についても「脚本は人間が執筆したものでなければ審査対象にならない」と規定されています。
さらに、「生成AI(Generative Artificial Intelligence)」に関する規則(Rule Two)のもとで、アカデミーはAI使用の性質と人間による著作性について申請者に詳細情報を求める権利を持つと定めました。これにより、審査段階での透明性を確保する仕組みが整備されたと考えられます。
規定変更の背景
TechCrunchの報道によれば、今回の規定変更はハリウッドにおけるAI活用の急速な広がりと同時期に発表されています。AI技術で生成されたヴァル・キルマーが登場するインディペンデント映画が制作中であること、AI「女優」ティリー・ノーウッドが連日話題を呼んでいること、そして新しいビデオ生成モデルの登場が映画製作者に衝撃を与えていることなどが背景として挙げられています。
また、AIは2023年の俳優・脚本家ストライキにおける主要な争点の一つでした。AIによる俳優の映像無断流用や脚本執筆への懸念が労使交渉の中心的な議題となっており、今回の規定明文化はその流れをくむものと言えます。
その他の主な改定事項
AI関連以外にも複数の注目すべき変更が盛り込まれています。アカデミーの公式発表によれば、俳優賞では同一カテゴリで複数の演技が上位5票内に入った場合、それぞれのノミネートが可能になりました。これまでは事実上1候補に絞られていた点が緩和された形です。
キャスティング賞の最大受賞数は2体から3体に増加し、撮影賞の予備投票でのショートリストは10〜20本から20本に統一されました。国際長編映画賞では、従来の国別申請に加え、ベルリン国際映画祭(金熊賞)やカンヌ映画祭(パルムドール)など指定の国際映画祭での受賞作品も申請できるようになりました。また、受賞時は国・地域ではなく映画作品そのものがノミネート対象となり、監督が映画クリエイティブチームを代表して受賞する形に改められています。
映画産業以外でも広がる動き
TechCrunchの報道では、映画産業以外での動向にも言及されています。少なくとも1冊の小説がAI使用の発覚を理由に出版中止に追い込まれており、SF作家団体などもAIを使用した作品を賞の審査対象外とする立場を打ち出しています。人間の創造性を基準に据える動きは、エンタメ業界全体で広がりを見せていると言えます。
まとめ
映画芸術科学アカデミーは第99回アカデミー賞規定において、AI生成の演技・脚本を審査対象外とする方針を正式に明示しました。文化・芸術分野における「人間の創造性」の定義が問われるなか、今後はAIの活用範囲と人間の関与をめぐる議論がより活発になると考えられます。AIとクリエイターの権利については、「AIはクリエイターの敵か」という問いを掘り下げた記事もあわせてご覧いただければと思います。
