[ニュース解説]米国の連邦AI政策はどこへ向かうのか——ブラックバーン上院議員が「4Cs」保護の新草案を公表

目次

はじめに

 米テネシー州選出のマーシャ・ブラックバーン上院議員(共和党)が2026年3月18日、連邦レベルのAI政策草案の改訂版を公表しました。Axiosが報じたこの動きは、ホワイトハウスが独自の政策枠組みを発表する準備を進める中、議会がトランプ政権のAIアジェンダをどう主導するかをめぐる議論の一環です。

参考記事

要点

  • ブラックバーン上院議員は2025年12月に概要を公表した「TRUMP AMERICA AI Act」を具体化した連邦AI政策草案の改訂版を公表した
  • 草案にはAI開発者への「ケアの義務(duty of care)」の課税、チャットボット安全規定、通信品位法第230条の廃止が盛り込まれている
  • ブラックバーン議員の提唱する「4Cs」(子ども・クリエイター・保守派・地域社会)の保護を軸とした枠組みである
  • 草案はトランプ大統領の「ウォークAI」禁止令や電力料金保護の公約を立法化する条項も含む
  • 上院商務委員会のテッド・クルーズ委員長(共和党・テキサス州)の支持を得られるかが今後の最大の焦点となる

詳細解説

草案公表の背景

 Axiosによれば、ブラックバーン議員はホワイトハウスとすでに協議を重ねており、この草案は議会と行政府の間で進行中の交渉の一環です。ホワイトハウスが独自のAI政策枠組みを近く発表する予定があるとされる中、議会側が先んじて案を固めようとする動きが続いています。

 ブラックバーン議員は現在、テネシー州知事選への出馬を表明しており、AI政策での存在感を示すことは政治的にも意義を持つと考えられます。今回の改訂版は、2025年12月に公表した「TRUMP AMERICA AI Act」の概要をもとに、より具体的な法文の形に落とし込んだものです。

草案の主な内容:義務とSection 230廃止

 草案が注目される点のひとつが、AI開発者への「ケアの義務(duty of care)」の導入です。Axiosの報道では、これはAI開発者が設計上の問題に起因する被害を軽減するための合理的な措置を取ることを義務付けるもので、チャットボットの安全性に関する規定もあわせて含まれています。

 また、草案にはブラックバーン議員が以前から推進してきた「子どものオンライン安全法(Kids Online Safety Act)」と、民主党のクリス・クーンズ議員と共同提案した「NO FAKES Act」が組み込まれています。NO FAKES Actは、AIが生成した肖像や音声の無断使用を規制することを目的とした法案で、クリエイターの権利保護を重視した内容となっています。

 さらに前回版から一歩踏み込んだのが、通信品位法第230条(Section 230)の廃止です。Section 230はプラットフォーム事業者がユーザー投稿コンテンツの法的責任を問われないとする規定で、インターネット上の言論をめぐる議論の核心に位置してきました。前回草案では「改革」にとどまっていた方針を「廃止」へと変更したことは、オンライン規制における大きな方針転換と言えます。

「4Cs」という保護の枠組み

 草案全体を貫く軸となっているのが、「4Cs」と呼ばれる保護対象の枠組みです。子ども(Children)、クリエイター(Creators)、保守派(Conservatives)、地域社会(Communities)の4つを守ることを立法の目的として明示しており、「AI覇権をめぐる国際競争でアメリカが勝利するためにも、連邦として統一したルールが必要だ」とブラックバーン議員は声明で述べています。

 この「4Cs」はトランプ大統領の大統領令が示す子ども・検閲・著作権・地域社会という4つの価値観とも呼応しています。草案にはさらに、トランプ大統領が署名した「ウォークAI」禁止の大統領令と、AI関連の電力料金保護に関する公約を法制化する条項も盛り込まれており、行政が示した方針をより拘束力の強い立法として固定化しようとする意図が読み取れます。

今後の焦点:クルーズ委員長の動向と下院の動き

 草案が前進するためには、上院商務委員会を率いるテッド・クルーズ議員の支持が欠かせないとされています。Axiosによれば、ブラックバーン議員はクルーズ議員に事前に草案を共有しましたが、クルーズ議員の立場はまだ明確ではありません。両者は2025年7月、州AI法の一時停止(モラトリアム)をめぐって対立した経緯があるためです。

 一方、下院ではジェイ・オバーノルテ議員(共和党・カリフォルニア州)も独自の連邦AI立法に取り組んでいます。トランプ大統領令が州AI法を無効化する「統一的な連邦枠組み」の策定を指示している中、上下両院でAI立法をめぐる主導権争いが続く状況です。連邦レベルの統一ルールがどのような形でまとまるかは、今後の米国のAI政策の方向性を大きく左右すると考えられます。

まとめ

 ブラックバーン議員の草案は、AI開発者への義務付けとオンライン安全保護を組み合わせた包括的な内容です。クルーズ委員長の動向やホワイトハウス案との調整が今後の焦点となります。米国の連邦AI政策がどのような形で着地するか、引き続き注目されます。

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