はじめに
ゴールドマン・サックスが2026年2月20日、S&P 500からAI関連銘柄をすべて除外した新しい株価指数「SPXXAI(S&P ex-AI指数)」を提供開始したと、Axiosが報じました。本稿では、この発表の背景と指数の仕組み、そして投資家にとっての意味合いを解説します。
参考記事
- タイトル: Exclusive: Goldman Sachs launches AI-free index
- 著者: Madison Mills
- 発行元: Axios
- 発行日: 2026年02月20日
- URL: https://www.axios.com/2026/02/20/ai-goldman-sachs-stocks-index
要点
- ゴールドマン・サックスはS&P 500のAI関連銘柄をすべて除いた株価指数「SPXXAI」を、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスと共同で開発・提供開始した
- 現在、AI関連企業はS&P 500全体の約45%を占めており、指数の分散機能が形骸化しつつある
- 過去3年間でS&P 500は76%上昇したのに対し、SPXXAI相当の旧来型経済銘柄群は32%の上昇にとどまった
- 同社エクイティ・カスタム・バスケット部門のルイス・ミラー氏は、この指数をAI関連銘柄への集中リスクをヘッジする手段として推奨している
- 現時点ではゴールドマン・サックスの顧客限定での提供となっている
詳細解説
「AIなし指数」誕生の背景
Axiosによれば、ゴールドマン・サックスはS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスと共同で新指数「SPXXAI」を開発し、同社顧客向けに提供を開始しました。この指数は、S&P 500に採用されている銘柄のうち、AI関連とみなされない「旧来型経済(オールドエコノミー)」銘柄のみで構成されています。
背景には、S&P 500の構成が大きく変化してきた現状があります。ゴールドマン・サックスのクライアント向けメモによれば、AI関連企業は現在、S&P 500全体の約45%を占めています。本来、株価指数は業種や企業規模の異なる多数の銘柄に分散投資する手段として機能してきました。しかしAI関連銘柄の時価総額が急拡大したことで、指数全体が特定のテーマへ集中する構造になりつつあると考えられます。
パフォーマンスの差:AIあり vs. AIなし
Axiosが報じた数値によれば、過去3年間でS&P 500は76%上昇したのに対し、AI関連銘柄を除いた旧来型銘柄群の上昇率は32%にとどまります。AI関連企業が市場全体のリターンを大きく押し上げてきた構図が、この数字からも読み取れます。
裏を返せば、AI関連銘柄を保有せずにいた投資家は、この3年間で大幅なアンダーパフォーマンスを受け入れてきたことになります。ただ、こうした集中上昇が永続するかどうかはわからず、だからこそ「リスクをどう分散するか」という問いが改めて注目されるようになっています。
ヘッジ手段としての活用
エクイティ・カスタム・バスケット部門のルイス・ミラー氏はクライアント向けのメモで、「AIイネーブラーを除外することで、AIへの過熱期待が生み出すノイズを排除できる」と述べています。同氏はSPXXAIを、S&P 500全体に対してショートポジションを取るよりも優れたヘッジ手段と位置づけています。
その理由として、S&P 500全体に対して売りを立てるヘッジは、指数が上昇を続けている局面では損失が膨らみやすい点が挙げられます。一方でSPXXAIは、AIの動向に左右されにくい旧来型銘柄で構成されているため、「AIに賭けるのでも、AIに反対するのでもなく、純粋な分散投資」として機能すると同氏は主張しています。
投資戦略として考えると、たとえばAI関連株を多く保有するポートフォリオを持つ投資家が、リスク軽減のためにSPXXAIを組み合わせる、という使い方が想定されます。ただし、具体的な活用の可否や効果は個々の状況によって異なるため、専門家への確認が重要と思います。
「分散」の意味が問われる時代
株価指数への投資は、もともと特定の銘柄に集中するリスクを避けるための手段として広く普及してきました。ところがAI関連銘柄の台頭により、S&P 500自体が事実上「AIテーマ集中型の商品」に近い性格を帯びつつある、という見方もできます。
今回のSPXXAI登場は、そうした構造的な変化に対応しようとする金融機関の動きとして注目されます。投資家が「分散」に何を求めているのか、その定義自体が改めて問われているとも言えるかもしれません。
まとめ
ゴールドマン・サックスが提供を始めた「SPXXAI」は、AI関連銘柄への過剰集中を懸念する投資家ニーズに応えたプロダクトです。AI企業がS&P 500の約45%を占める現状を踏まえると、「分散投資」の手段としての株価指数の役割を見直す動きは、今後も続くかもしれません。市場全体のAI依存度の行方とともに、注目していきたいテーマです。
