はじめに
OpenAIは2026年10月1日、米デンバーの子育て世帯向けソーシャルクラブ「The Den」がChatGPT Workを業務に活用した事例を公開しました。2店舗目の開業準備のなかで、経営陣は週10〜15時間を削減し、助成金や酒類販売免許の申請を数日から数時間に短縮したといいます。本稿では、その具体的な使い方を整理します。
参考記事
- タイトル: The Den frees up 10-15 hours a week to grow with ChatGPT Work
- 著者: OpenAI
- 発行元: OpenAI
- 発行日: 2026年10月1日
- URL: https://openai.com/index/the-den-family-social
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要点
- The Denはデンバーを拠点とする、親子で利用できるソーシャルクラブで、2店舗目の開業準備に合わせてChatGPT Workを導入した
- 経営陣は週10〜15時間を削減し、助成金の申請時間は92%、酒類販売免許の申請時間は91%短縮された
- Gmail・Slack・Google Driveのプラグインで社内の情報を集約・分析し、次の行動計画づくりに使っている
- 提携方針の整理や財務分析など、経営判断の前段階の検討にもChatGPTを活用している
- 今後はChatGPT Voiceでの移動時間の活用や、Codexによる会員アプリなどの独自システム構築も検討している
詳細解説
The Denと導入の背景
OpenAIによれば、The Den Family Socialは米コロラド州デンバーを拠点とするソーシャルクラブです。ホスピタリティ、コミュニティ、仕事、遊びを1か所に集め、親が自分らしく過ごしながら子どもも歓迎される場所を提供しています。創業者のChandler Lipe氏が自ら親になった経験から、親にも心身の健康を考えた質の高い空間が必要だという思いで始めた事業です。
2店舗目の建設と開業準備を進めるなかで増えていく事務作業に対応するため、Lipe氏はChatGPT Workを導入しました。現在、少人数のチームは週10〜15時間を削減し、免許や助成金の申請を数日から数時間で準備できるようになっています。その分、事業の成長と、利用する家族へのサービスに力を注げるようになったとされています。
Lipe氏は「ChatGPT Workのおかげで、会社がその規模や資源を持つ前に、必要とする会社をつくることができる」と語っています。
本稿としては、この言葉が事例全体の要点を表していると受け止めています。人を増やす前の段階で、AIが事務や検討の一部を担うことで、少人数のまま次の店舗の準備を進められたという構図です。
散らばった情報を行動計画に変える
2店舗目を開くには、1店舗目で蓄積した知識や文脈を、再現可能な業務の形にまとめる必要がありました。チームはGmail、Slack、Google Driveのプラグインを使い、ChatGPT Workに事業全体の情報を集めて分析させ、次の手順を提案させました。
これにより、計画づくりはより整理され、繰り返し使える形になり、速くなりました。一方で、ChatGPT Workの出力が正確かどうかはチームが確認し、最終的な判断も人が行っているとされています。
その一例が、2店舗目の酒類販売免許の申請です。予定より早い審査日(ヒアリング)の枠が急に空いたとき、The DenはChatGPT Workを使って、必要書類を素早くまとめ、足りない書類を洗い出し、ファイルを指定の形式に変換しました。Lipe氏によれば、検索、整理、書式の調整、取りまとめに4日かかっていた作業が、チームによる3時間の確認と仕上げで済んだといいます。
The Denは、期限の迫った助成金の募集にも同じワークフローを使っています。助成金の申請は3日から2時間に短縮され、成長の機会をより多くつかめるようになったとされています。
許認可や助成金の申請は、日本の中小企業にとっても、書類の収集や様式の確認に時間を取られやすい業務です。本稿としては、「必要な書類の洗い出し」と「形式の変換」という、判断を伴わない部分をAIに任せ、内容の確認は人が行うという分担は、国内の事業者でも取り入れやすい形だと考えています。ただし、申請内容の正確さには事業者が責任を負うため、AIの出力を確認する工程を省かないことが前提になると思います。
複雑な問いを整理し、意思決定を速める
The Denの経営陣は、課題をチームに持ち込む前に、ChatGPTを使って論点を整理し、提案をまとめています。Lipe氏は、これにより週に約7時間分の探索的な話し合いが減り、意思決定に集中できるようになったと見積もっています。
たとえば、プログラム・パートナーシップ責任者のBrooke氏は、事業の拡大に合わせて、提携先との関係づくりをより一貫した方針で進めたいと考えていました。そこで、どの提携がうまくいき、どれがうまくいかなかったか、その理由は何かといった自分の知見をChatGPTに共有しながら、課題を検討しました。その結果、経営陣が検討するための提携の枠組み案ができあがりました。
この方法は、財務分析や業務計画にも広がっています。ゼネラルマネージャーのMaia氏は、会計士からの財務報告と、POSシステム(販売時点情報管理)の売上・在庫データを集め、ChatGPTで分かりやすい事業の全体像に整理しました。これにより在庫の必要量を予測しやすくなり、2店舗にまたがる仕入れや仕組みのあり方を決めやすくなったといいます。
ここでのAIの役割は、答えを出すことよりも、担当者の経験や散らばったデータを、会議で議論できる「たたき台」に変えることにあると読めます。会議の前に論点を整理しておくことで、少人数の経営陣が限られた時間を判断そのものに使えるようになる点は、規模を問わず参考になる使い方だと思います。
成長を支える次の一手
店舗が増えるにつれ、Lipe氏は店舗間や会議の移動に多くの時間を使うようになりました。そこで、ChatGPT Voiceを使って移動時間を生産的な時間に変え始めています。話しながらメールの内容を伝えてChatGPTに下書きさせる、会議後のフォローアップ事項を記録する、思いついたアイデアを忘れないうちに整理する、といった使い方です。机に戻ってからやることが積み上がるのではなく、準備ができた時点で内容を確認して送れるようになったとされています。
さらにThe Denは、OpenAIのコーディングエージェントであるCodexを使って、より自社向けの仕組みを作ることも検討しています。検討しているのは次の3つです。
- チェックインや教室の申し込みに使う会員向けアプリ
- POSシステム同士の連携の改善
- 店舗間でチームをつなぐSlackの通知
事務作業の効率化から始め、意思決定の支援、さらに自社専用のシステムづくりへと段階的に広げていく流れは、AI導入の進め方の一例として分かりやすいと思います。エンジニアのいない小規模事業者がコーディングエージェントでどこまで自社システムを作れるかは、今後の事例を見ていく必要がある点だと考えています。
記事は、こうした取り組みはすべて、親が自分らしく過ごせ、子どもも一緒に歓迎される場所をつくるというLipe氏の創業の思いにつながっていると締めくくっています。
まとめ
The Denの事例は、少人数の事業者が申請書類の準備や経営判断の前段階をAIに任せ、本業に時間を振り向けた例です。出力の確認と最終判断は人が担うという線引きも参考になります。中小企業がAIを導入する際の条件もあわせてご覧ください。
