はじめに
Anthropicは2026年、公式サイトにて「The Making of Claude Code」と題したオーラルヒストリーを公開しました。本稿では、開発陣や社外ユーザーの証言をもとに、Claude Codeが2022年の試作段階から現在の主力製品へと至った経緯を解説します。
参考記事
- タイトル: The Making of Claude Code
- 発行元: Anthropic
- 発行日: 2026年7月6日
- URL: https://www.anthropic.com/features/making-of-claude-code
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要点
- Claude Codeの原型は2022年に社内で使われていたコマンドラインツール「clide」であり、エージェント型コーディングの基盤技術はこの頃から開発が進められていたものである
- 2024年9月にBoris Cherny氏がLabsチームで開発したデモ「Claude CLI」が、プロジェクトの転換点になったとされている
- 開発チームは意図的に少人数体制を維持し、2024年12月の集中スプリントを経て2025年2月にリサーチプレビューとして外部公開したものである
- 外部公開後にClaude CLIという名称からClaude Codeへと改称され、その後Claude 4モデルの登場とサブスクリプション型課金モデルの導入が普及の転機になったとされている
- 開発者コミュニティの草の根的な利用拡大や、Bunの買収などの動きを経て、現在は多くの開発者が日常的に利用する製品へと成長した
詳細解説
誕生の背景:2022年からの技術的挑戦
AnthropicとClaude Codeの原点は、同社が最初に手がけたプロダクトであるVS Code向けのチャット型コーディング支援ツールに遡ります。2022年初頭には、自律的なソフトウェアエンジニアリングを行うモデルの構築に向けて、強化学習(RL)チームが基盤となるコードベースの開発を進めていました。同時期には、モデルにbashツールを持たせて実際にコードを実行させる仕組みや、シェル環境を安全に管理する方法など、現在のエージェント開発でも課題となる要素にすでに取り組んでいたようです。
こうした試行錯誤の中から生まれた社内ツールが「clide」です。これはClaudeとチャットしながらコード編集や開発タスクを行える、コマンドラインベースの内部ツールでした。動作が不安定で起動も遅かったとされていますが、コンセプト自体は当時から社内の一部エンジニアに強く支持されていたようです。エージェント型コーディングツールの多くは、こうした試作段階を経て実用化に至っており、Claude Codeもその典型例だと考えられます。
転機となった「Claude CLI」
2024年1月にBen Mann氏がLabsチームを立ち上げ、同年9月にBoris Cherny氏が加入しました。当初は小規模な機能から着手する案もあったようですが、より本格的なエージェント型コーディングツールの開発を目指す方針が採られました。Cherny氏はAPIの使い方を学びながら試作を重ね、その過程で生まれたデモが「Claude CLI」と呼ばれるものです。
この試作は社内のSlackに投稿された当初、反応は限定的だったとされています。しかし翌日には別のエンジニアが実際の開発作業に活用している様子が確認され、そこから開発チーム内での注目度が急速に高まっていったようです。1つの小さなデモが社内の関心を集め、正式なプロジェクトへと発展していく過程は、多くの社内発ツールに共通するパターンだと言えます。
チーム拡大と2週間の集中スプリント
2024年10月以降、Labsチームからの人員異動を中心にチームが拡大し、同年12月には6〜7名が加わって最終的な2週間の集中スプリントが実施されました。バグ報告機能やログインフローなど、現在の主要機能の多くがこの期間に作られたとされています。
開発チームは意図的にチーム規模を抑えていたようです。少人数であることが、リソースの創造的な活用や過剰な設計の回避、そして開発作業そのものにClaudeを積極活用する動機につながったと振り返られています。プロダクト開発において、初期段階でチームを小さく保つことは、意思決定の速度や技術的負債の抑制という観点で一般的に有効とされる手法であり、この事例はその一つの実践例と考えられます。
外部公開とその後の急成長
2025年2月、Claude CLIはリサーチプレビューとして外部公開され、この際に「Claude Code」へと改称されました。公開当初はバグも多く反応は限定的だったようですが、開発チームとユーザーの間で密なフィードバックのやり取りが行われ、短期間で改善が重ねられていきました。
その後、Claude 4モデルの登場とサブスクリプションプランの導入という2つの要素が重なったことが、Claude Codeの本格的な普及の転機になったとされています。モデル性能の向上とビジネスモデルの整備が同時に進んだことで利用が拡大した点は、AI関連プロダクトの立ち上げにおいて示唆に富む事例だと思います。単に技術が優れているだけでなく、価格体系や提供形態が利用者にとって適切であることも、普及には欠かせない要素だと考えられます。
開発体制から見えること
CLI(コマンドラインインターフェース)ベースの製品であることは、複雑なアーキテクチャを必要とせず開発チームがすばやく機能改善を重ねられた要因の一つだったとされています。また、自動アップデートの仕組みと詳細な利用状況データを整備していたことで、ユーザーからのフィードバックを数分単位で反映できる開発サイクルが実現していたようです。
Anthropic社内でも、Claude Codeの活用度合いは年を追うごとに高まっていったとされています。開発当事者の一人は、2025年冬までにはコードのほぼすべてをClaude Codeが記述するようになったと述べており、開発者自身の役割がコードを書くことから、複数のエージェントを管理・指示することへと変化しつつある様子がうかがえます。こうした変化は、今後のソフトウェアエンジニアリングのあり方を考えるうえでも参考になる事例だと思います。
まとめ
本稿では、Claude Codeが2022年の初期の試作から現在の主力製品に至るまでの開発経緯を紹介しました。Claude Codeの周辺動向については、Bun買収に関する記事でも整理していますので、あわせてご覧いただければと思います。
