はじめに
Googleは2026年6月18日、公式ブログでAIとアートを融合させる2つの取り組みを発表しました。世界初のAIアート美術館「Dataland」がロサンゼルスに開館するほか、誰でもブラウザで楽しめる対話型お絵描き体験「Splash Canvas」も公開されました。本稿ではその概要を紹介します。
参考記事
メイン記事:
- タイトル: Powering the world’s first AI arts museum
- 著者: Mira Lane(VP, Technology & Society)
- 発行元: Google 公式ブログ
- 発行日: 2026年6月18日
- URL: https://blog.google/company-news/outreach-and-initiatives/arts-culture/dataland-ai-art-museum/
関連情報:
- タイトル: Splash Canvas: Create abstract art (with an attitude)
- 著者: Amit Sood / Freya Salway
- 発行元: Google 公式ブログ
- 発行日: 2026年6月18日
- URL: https://blog.google/company-news/outreach-and-initiatives/arts-culture/splash-canvas/
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要点
- Googleは2026年6月18日、AIとアートを融合させた2つの取り組みを公式ブログで発表した
- 一つは、Refik Anadol氏との10年にわたる協業の集大成である世界初のAIアート美術館「Dataland」で、6月20日にロサンゼルスのThe Grand LAで開館する
- Datalandは自然環境データを学習した基盤モデル「Large Nature Model」とGoogle Cloudのインフラを用い、来場者の動きに応じて映像・音響・香りをリアルタイムに生成する
- もう一つは、David Li氏が手がけた対話型お絵描き体験「Splash Canvas」で、Geminiによる対話とChirpによる音声合成を組み合わせている
- Dataland開館にあわせ、Google Arts & Cultureはアーティスト4名に1人2万5000ドルを助成する6カ月間のレジデンシープログラムも開始する
詳細解説
Dataland:世界初のAIアート美術館
Datalandは、ロサンゼルス・ダウンタウンのThe Grand LA(建築家フランク・ゲーリー氏設計の複合施設)内に位置する、延床面積2万5000平方フィートのオムニセンサリー(全感覚型)空間です。Googleの公式ブログによれば、来場者の動きに応じてGAN(敵対的生成ネットワーク。本物に近いデータを生成するAI技術)や拡散モデル(ノイズから画像を生成する技術)、Geminiを組み合わせ、香りや音響までもリアルタイムに生成するといいます。電力の 87% を再生可能エネルギーでまかなうGoogle Cloudの「Compute Engine」(仮想マシンを提供するクラウド基盤)などが、この処理を支えています。
GANや拡散モデルは画像生成AIの代表的な仕組みですが、Datalandではこれらを単発の画像出力ではなく、来場者の存在に応じて常に変化し続ける環境として用いている点が特徴的だと思います。
10年がかりの協業がかたちになるまで
GoogleとAnadol氏の協業は2016年、Googleが主催する「Artists and Machine Intelligence(AMI、アーティストと機械知能を結びつけるGoogleの支援プログラム)」にAnadol氏が参加したことに始まります。2018年にはロサンゼルス・フィルハーモニックのアーカイブをウォルト・ディズニー・コンサートホールに投影するプロジェクト、2020年にはGoogle Quantum AIのデータを可視化する作品を共同制作してきました。2025年には、Mountain ViewのGoogle本社キャンパスで、Anadol氏のスタジオが開発した「Large Nature Model」とGeminiを組み合わせたインスタレーション「Machine Dreams: Biophilia」も発表しています。
Googleが美術館とAIを組み合わせる取り組みは今回が初めてではなく、京都・福田美術館とVeoによる「動く絵画」プロジェクトでも同様の試みが行われました。こうした蓄積の延長線上に、Datalandという常設の物理空間が誕生したと言えます。
Splash Canvas:AIキャラクターと描く対話型アート
もう一つの発表が、Googleの「Blob Opera」や「Viola the Bird」の制作者として知られるDavid Li氏による新作「Splash Canvas」です。画面上の「Splosh」「Splish」「Splat」という3体のタコ・イカのキャラクターを操作して絵の具のように色を飛び散らせ、「Smudge」「Scrape」という2体のカメのキャラクターで色を馴染ませたり消したりして作品を仕上げます。公式ブログによれば、キャラクターの人格や会話はGeminiが生成し、Chirp(Googleの音声合成モデル)で声として再生されます。背景では、流体シミュレーションとニューラルセルラーオートマトン(細胞同士が周囲の状態を参照しながら変化していく計算モデル)を組み合わせ、絵の具が混ざり合う様子を再現しているとのことです。
ブラウザ上で誰でも無料で試せる手軽さに加え、AIキャラクターが描く過程に合わせて講評やアートの豆知識を返してくる点が、単なる「お絵描きツール」と一線を画していると思います。
Google Arts & Cultureが広げるアーティスト支援
Dataland開館にあわせ、Google Arts & CultureはAIアーティスト 4名 を対象に、1人あたり 2万5000ドル の助成金と6カ月間のメンタリングを提供する「Dataland AI Artist Residency」を開始しました。参加アーティストはRefik Anadol Studioから直接指導を受けられるほか、Google Cloudの機械学習ツールにもアクセスできるといいます。制作された作品は、年内にDatalandとGoogle Arts & Cultureのウェブサイトで公開される予定です。
Google Arts & Cultureは、旅先での文化体験をAIで個別化する機能など、ここ数カ月でAIを使った企画を相次いで打ち出しており、今回のレジデンシーもその流れに位置づけられそうです。
まとめ
GoogleはAIアート美術館「Dataland」と対話型ツール「Splash Canvas」という、規模も形も異なる2つの取り組みを同時に発表しました。技術を一方的に披露するのではなく、人とAIが影響し合う体験を志向している点が共通していると思います。
