はじめに
米メディアAxiosが2026年3月25日に報じたところによると、民主党のマーク・ウォーナー上院議員(バージニア州)がAIデータセンターの建設一時停止を求める法案に強く反論しました。同日に共同提出されたサンダース上院議員とオカシオ=コルテス下院議員による法案をめぐり、民主党内でもAI政策に対する見解が分かれていることが明らかになっています。
参考記事
- タイトル: Exclusive: Sen. Warner calls AI data center moratorium championed by AOC “idiocy”
- 著者: Kathleen Hunter
- 発行元: Axios
- 発行日: 2026年3月25日
- URL: https://www.axios.com/2026/03/25/warner-ai-data-center-moratorium-aoc-idiocy
要点
- バーニー・サンダース上院議員とアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員は、AIの「強力な国家的安全策」が整うまで新規AIデータセンターの建設を一時停止する法案を提出した
- マーク・ウォーナー上院議員はこの法案を「愚かだ(idiocy)」と批判し、建設停止は中国のAI開発を有利にするだけだと主張した
- ウォーナー議員はさらに、国防長官ピート・ヘグセス氏がAnthropicなどのAI企業を単独でサプライチェーンリスクに指定できる現状も問題だと述べた
- Anthropicはペンタゴンによる指定の取り消しを求めて提訴しており、連邦裁判所の判事が同指定を「問題がある(troubling)」と述べるなど司法の動向も注目されている
詳細解説
データセンター建設停止法案の概要
Axiosによれば、サンダース議員とオカシオ=コルテス議員は2026年3月25日、AIに関する「強力な国家的安全策」が整備されるまで、全米でのAIデータセンター新設を一時停止する法案を共同提出しました。今議会においてもっとも積極的なAI規制姿勢の一つとされており、急拡大するAI産業との対立構図が鮮明になっています。
データセンターはAIモデルの学習・推論に不可欠なインフラです。AIの処理能力はGPUやサーバーの規模と密接に関係しており、データセンターの拡充がAI開発の速度そのものを左右すると言えます。その意味で、建設を一時停止する法案はAI開発全体に直接的な影響を与え得るものと考えられます。
ウォーナー議員の反論——中国との競争という観点
一方、同じ民主党に属するウォーナー議員はAxiosが主催した「AI+DCサミット」でこの法案に真っ向から反対しました。Axiosの報道によれば、「データセンターの建設停止は、中国を有利にするだけだ」と述べ、法案を「愚かだ」と断言しました。また「このAIという魔神を瓶に戻すという考え方は、まったくもって荒唐無稽だ」とも語っています。
AIをめぐる米中の技術競争は、近年の安全保障・経済政策において繰り返し言及されるテーマです。ウォーナー議員の発言は、AI規制の議論において「安全性の確保」と「国際競争力の維持」をどう両立させるかという問いを投げかけるものと言えます。
Anthropicのサプライチェーンリスク指定問題
ウォーナー議員はデータセンター法案とは別に、国防長官がAI企業をサプライチェーンリスクに指定できる権限についても問題を提起しました。Axiosによれば、「AIツールが米国民の監視や、人間の関与なしに攻撃兵器の開発に使われるかどうかを、一人の人物に決定させてよいのか」と述べ、「そうした判断は個人ではなく政策として決定されるべきだ」と主張しました。さらに「一企業をサプライチェーンリスクと宣言できる権限を一人に与えることは、その企業への死刑宣告に等しい」とも語っています。
Axiosの報道によれば、トランプ政権はAnthropicが開発するAI「Claude」を連邦機関から排除しようとしており、Anthropicと取引のある企業が契約の見直しを検討する動きも出ています。こうした状況を受け、Anthropicはペンタゴンによる指定の取り消しと執行停止を求めて提訴しています。2026年3月24日には連邦裁判所の判事がペンタゴンの対応を「問題がある」と表現したと報じられており、今後の司法判断が注目される状況です。
まとめ
AIデータセンターの建設停止法案をめぐり、同じ民主党内でも意見が対立していることが明らかになりました。安全性を重視した規制論と、中国との競争を念頭に置いた成長論が交錯するなか、米国のAI政策の行方は引き続き注目されます。Anthropicのサプライチェーンリスク問題とあわせて、議会・司法の両面での動向を見守りたいところです。
