[ニュース解説]GoogleがロンドンにAI拠点「Platform 37」を開設――AlphaGoの伝説的な一手が名前の由来

目次

はじめに

 Google DeepMindのCEO兼共同創業者Demis Hassabis氏が2026年3月12日、ロンドンのキングス・クロス駅近くに建設中の新オフィスビルの名称「Platform 37」と、一般公開スペース「The AI Exchange」の設置計画を発表しました。本稿では、施設の概要と命名に込められた背景を解説します。

参考記事

要点

  • GoogleのロンドンAI拠点に「Platform 37」という名称が付けられた。名称はキングス・クロス駅の立地と、2016年のAlphaGoによる伝説的な一手「Move 37」にちなんでいる
  • 建物内に「The AI Exchange」と呼ばれる一般公開スペースが設けられ、無料の教育プログラムや体験型展示、文化的なイベントなどを提供する予定である
  • 建物はThomas HeatherwickとBjarke Ingelsが設計し、低炭素素材と高いエネルギー効率を採用。Googleにとって「最も野心的な建物」と位置づけられている
  • Google DeepMindのチームは2026年夏から入居を開始する予定であり、AI研究の前進に向けた多分野チームの活動拠点となる

詳細解説

「Move 37」に込められた命名の由来

 Googleによれば、「Platform 37」という名称は2つの要素を組み合わせたものです。1つはキングス・クロス駅に隣接するというロケーション、もう1つは2016年にDeepMindのAIシステム「AlphaGo」が囲碁の世界チャンピオン、李世乭(イ・セドル)との対局で見せた「Move 37(第37手)」という歴史的な一手への言及です。

 囲碁は盤面の可能な配置数が宇宙の原子数を超えると言われるほど複雑なゲームであり、AI研究の試金石として長らく注目されてきました。AlphaGoが指したこの第37手は、当初は人間の専門家から「ミスではないか」と見られるほど型破りなものでした。しかし対局が進むにつれ、この一手が勝利を導く決定的な布石であったことが明らかになりました。

 AlphaGoの勝利は、現在「AIの現代」と認識される時代の幕開けとして位置づけられており、その後のDeepMindによる科学的課題へのAI活用を加速させるきっかけとなりました。以来、素材科学の探索、核融合エネルギー研究、数学的推論、生物学分野(タンパク質構造予測ツール「AlphaFold」)など、幅広い領域でAIを活用した成果が生まれています。こうした歴史を背景に持つ組織の拠点として、「Move 37」にちなんだ命名が選ばれたことには、一定の意味合いがあると考えられます。

AIを社会に開く場所「The AI Exchange」

 「The AI Exchange」はPlatform 37の1階に設けられる、一般市民向けの公開スペースです。Googleの発表によれば、無料の教育プログラム、体験型展示、文化的なイベントを通じて、訪問者がAIについて幅広く学び、社会への影響を議論できる場として設計されています。開設は2026年内を予定しているとのことです。

 AI開発の最前線にある企業が、研究拠点と隣接する形で市民向けの対話・学習空間を設けるというアプローチは、AIの透明性や社会との関係構築を重視する姿勢の表れと言えます。技術の専門家と一般市民が同じ建物のなかで交わる機会が生まれるという点で、注目される試みと思います。

建物の設計と環境への配慮

 Platform 37は、Thomas Heatherwick(トーマス・ヘザーウィック)とBjarke Ingels(ビャルケ・インゲルス)という2人の建築家が設計を担当しています。どちらも現代建築において独自のスタイルで知られる設計者であり、両者の共同作業はこの建物の外観デザインにも反映されていると考えられます。

 構造的な特徴として、「ハング(吊り下げ)構造」と呼ばれる工法が採用されています。これにより建物内部から柱がなくなり、チームのクリエイティブな活動ニーズに応じて柔軟にレイアウトを変更できる空間が実現します。低炭素素材の使用と高いエネルギー効率も設計の重点として挙げられており、環境負荷の低減にも配慮されています。

 さらに屋上には緑豊かな庭園が設けられており、ロンドン野生生物トラストおよびカムデン区との協力のもと、地域の生物多様性を高める生息環境としての役割も担うとされています。美しいロンドンの景観を望めるスペースとしても設計されているとのことです。Demis Hassabis氏は今回の発表のなかで、この建物を「オフィス以上の存在であり、科学と知性への記念碑だ」と表現しています。

まとめ

 GoogleはロンドンのAI研究拠点「Platform 37」の名称と、一般向け学習・対話スペース「The AI Exchange」の計画を発表しました。2016年のAlphaGoが示した型破りな一手の精神を受け継ぐ拠点が、2026年内に本格始動します。研究と社会の接点をどのように設計するか、今後の展開が注目されます。

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