はじめに
Google Labsが2026年4月23日、クリエイター向けAI活用プログラム「Flow Sessions」の第3期終了レポートをGoogle公式ブログで公開しました。今期は映像制作以外にも報道・広告・ファッションなど幅広い分野のアーティストが参加。本稿では、参加者の作品と実践から得られた3つの学びを紹介します。
参考記事
- タイトル: 3 creative tips from our Flow Sessions artists
- 著者: Brianna Doyle(Head of Community, Google Labs)
- 発行元: Google Blog
- 発行日: 2026年4月23日
- URL: https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/google-labs/flow-sessions-artists-lessons/
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要点
- Google Labsのクリエイター共同制作プログラム「Flow Sessions」が第3期を終了し、今回は映像制作以外の報道・広告・ファッション分野のアーティストも初めて参加した
- 実験を楽しみながらアイデアを広げる、個人の記憶や感情を素材にする、映像を業界横断の表現ツールとして活用するという3つの視点が示された
- アーティストたちはFlowに加えてAI StudioやVeoの視覚的変化(ビジュアルドリフト)、スタイル転送ツールなど複数のAIツールを組み合わせて制作した
- ファッションデザイナーは実際の刺繍作品を起点に、物理的には実現不可能な素材感の誇張表現をFlowで実現した
- Flow Sessionsは「共同制作(co-creation)」を核に置き、ツール開発者と利用者が共に作り上げるという姿勢のもと運営されている
詳細解説
Flow Sessionsとは
Flow Sessionsは、Google LabsがAI映像制作ツール「Flow」とともに運営するクリエイター向けの6週間のパートナーシッププログラムです。参加者はお互いにつながりながらFlowを使った制作を探求し、その成果と知見をGoogleにフィードバックします。
今回で第3期を迎えた今回のコホートには、これまでと異なる点がありました。Google Labsによれば、今期は映像制作以外の分野──ジャーナリズム、広告、ファッション──のクリエイターを初めて積極的に採用したとのことです。AIの経験レベルもさまざまな参加者が集まり、「このツールが従来の映像制作を超えた何かを解放できるか」という問いを軸に据えた構成でした。
昨年11月にも前回期のFlow Sessionsが紹介されました。今回はその延長線上に位置する回で、参加者の多様性がさらに広がっています。
ヒント1:実験を楽しみ、驚きを大切にする
アーティストのJulie WielandはFlowを「無限の遊び場」として使い、固定したゴールを設けず、探索の過程で物語が形成されていくアプローチをとりました。完成作「Until We Meet Again」は、ゴーレムがたんぽぽの命の営みを季節ごとに見守る循環的な物語です。
この作品でJulieは、FlowとAI Studioを組み合わせてフレームレートを調整し、手作り感のあるコマ撮り風スタイルを実現しました。「最終フレームに到達すること」より「可能性をリアルタイムで発見していくこと」がプロセスの中心だったと語っています。AIツールを目的達成の手段としてではなく、思考を広げる道具として扱う姿勢は、初めてFlowを使うクリエイターにも参考になる視点だと思います。
ヒント2:個人の記憶や感情を素材にする
Calvin HerbstはGoogle Labsのブログで「最も自分に大切なものを作るべきだ」と語っています。彼はFlowとは別のツールを使って幼少期の16mmフィルム映像からスタイル転送のモデルをトレーニングし、亡き愛犬Annieとの別れを映像作品「A Small Gap in Time」として昇華させました。子ども時代の記憶の中の陽光が差し込む家を舞台に、愛犬との超現実的な別れの場面が描かれています。
一方、Stephane Beniniはプログラムについて「Flowを触る前に、自分が何を言いたいかが重要だ」と述べています。彼の作品「Echoes of Us」は、断片化した記憶の世界で娘を探す父の物語で、Flowの大量出力能力とVeoのビジュアルドリフト(映像が微妙に変化していく視覚的特性)をノスタルジアや喪失感を表現する演出手法として使いました。
これら2作品に共通するのは、AIツールを「何か新しいものをゼロから作る手段」ではなく「すでに持っている記憶や感情を可視化する手段」として活用している点です。個人的な物語がAIと組み合わさることで、独自性の高い表現が生まれています。
ヒント3:映像を業界横断的な表現ツールとして使う
ファッションデザイナーのCharline PratはフランスのクリエイティブスタジオCOMBOと組み、自身がデザインした刺繍作品を起点とした短編映画「My Body Knows Things」を制作しました。Flowを使って生地の質感や素材感を実際の縫製では不可能なレベルまで誇張し、幻想的な世界観を構築しています。視覚的な一貫性を保つために、キャラクターや質感の参照ライブラリを事前に作成して制作に活用したとのことです。
また、クリエイティブディレクター兼研究者のChloe Desaullesは、ドキュメンタリーの手法を用いながらAI生成メディアにおける「リアリズム」をテーマにした作品「Veneer」を制作しました。架空のニューヨーク市の一区画が極めてリアルに描かれており、報道・研究の視点からAI映像表現を問い直す内容です。
この2作品は、Flowがフィルムメーカーだけでなくデザイナーやジャーナリストにとっても有効な表現ツールになり得ることを示しています。「映像を使って何かを伝えたい人」であれば、専門的な映像制作の経験がなくてもFlowを活用できる可能性があると考えられます。
まとめ
今回のFlow Sessions第3期は、AIを活用した映像表現の裾野を広げる試みとして注目されます。実験を楽しむ、個人の記憶を素材にする、業界を超えて映像を活用するという3つの視点は、クリエイターに限らずAIツールを仕事や表現に取り入れようとしている方にも参考になるだと思います。Google Flowに関心がある方は、基本的な使い方をまとめた過去記事もあわせてご覧いただければと思います。
