はじめに
Microsoft AIが2025年12月10日、Copilotユーザーの利用実態を分析した「Copilot Usage Report 2025」を公開しました。本稿では、3750万件の会話データから明らかになった、人々がAIをどのように日常生活に組み込んでいるかを解説します。
参考記事
- タイトル: It’s About Time: The Copilot Usage Report 2025
- 著者: Bea Costa-Gomes, Seth Spielman
- 発行元: Microsoft AI
- 発行日: 2025年12月10日
- URL: https://microsoft.ai/news/its-about-time-the-copilot-usage-report-2025/
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要点
- Microsoft AIは3750万件の非識別化された会話を分析し、Copilot利用の実態を調査した
- モバイルデバイスでは健康関連のトピックが年間を通じて最も多く、利用者の日常的な健康管理ニーズを反映している
- 8月にプログラミングとゲームのトピックが交差し、平日はコーディング、週末はゲームという明確な使い分けが見られた
- 2月はバレンタインデー前後で人間関係に関する相談が急増し、AIが人生の重要な局面でのサポート役となっている
- 情報検索に加えて、アドバイスを求める利用が増加傾向にあり、AIが信頼できる相談相手として機能している
詳細解説
Copilot利用実態の大規模調査
Microsoft AIによれば、2025年のレポートでは3750万件の非識別化された会話サンプルを分析し、実際の利用パターンを明らかにしました。分析では会話の要約のみを抽出し、トピックと意図を学習する仕組みを採用することで、完全なプライバシー保護を実現しています。
このような大規模な利用データ分析は、AIツールが実際にどのように使われているかを理解する上で重要な取り組みと言えます。従来、AIツールの評価はベンチマークテストが中心でしたが、実際のユーザー行動を分析することで、より実用的な改善点を見出すことが可能になります。
モバイルでは健康が最優先トピック
Microsoft AIの調査では、モバイルデバイスでの利用において、健康関連のトピックが年間を通じて一貫して最も多いことが明らかになりました。ウェルネスの追跡、健康に関するヒント検索、日常的なルーティン管理など、利用者は健康的な生活をサポートするツールとしてCopilotを活用しています。
モバイルデバイスは個人との距離が近く、即時性も高いため、健康という身近で重要なテーマでの利用が多くなると考えられます。この傾向は月や時間帯に関わらず安定しており、健康管理がデジタル習慣の中心的な位置を占めていることを示しています。

プログラミングとゲームの使い分け
8月のデータでは興味深いパターンが確認されました。Microsoft AIによれば、プログラミングとゲームのトピックが曜日によって明確に入れ替わる傾向が見られました。プログラミング関連の会話は月曜日から金曜日にかけて順位が上昇し、一方でゲーム関連の会話は週末に優位となっています。
この現象は、ユーザーが平日と週末で異なるモードでAIを活用していることを示唆します。仕事や学習のためのコーディング支援を平日に求め、週末はエンターテインメントとしてゲーム情報を探すという、生活リズムに合わせた使い分けが行われていると考えられます。

バレンタインデーと人間関係相談
2月のデータでは、バレンタインデーを中心とした特徴的な利用パターンが観察されました。Microsoft AIによれば、バレンタインデー前は個人的成長とウェルネスに関する会話が増加し、当日には人間関係に関する会話が明確なピークを示しました。
この傾向は、人々が人生の重要な瞬間において、準備や意思決定のサポートをAIに求めていることを示しています。デジタルツールが単なる情報提供ツールを超えて、人生の節目における相談相手として機能していることがうかがえます。

深夜の哲学的会話と時間帯別の利用傾向
時間帯による利用パターンの分析では、興味深い発見がありました。Microsoft AIによれば、宗教や哲学に関する会話は早朝の時間帯に順位が上昇します。対照的に、旅行に関する会話は通勤時間帯に最も多く発生しています。
深夜や早朝に人生の大きな問いについて考えることは、人間の自然な行動パターンと言えます。一方で通勤時間に旅行の計画を立てることも、日常的なスキマ時間の活用として理解できます。AIが生活の異なる時間帯で、それぞれに適した役割を果たしていることが分かります。

アドバイスを求める利用の増加
調査では、Copilotの最も一般的な用途として情報検索が挙げられていますが、同時に注目すべき傾向も明らかになりました。Microsoft AIによれば、特に個人的なトピックについて、アドバイスを求める利用が明確に増加しています。
人間関係の課題、人生の決断、日常的な指針など、思慮深いサポートを求めるユーザーが増えていることは、AIツールの役割が変化していることを示唆します。単なる迅速な回答提供から、日常的な問いに寄り添う信頼できる相談相手へと、デジタルツールの位置づけが変わりつつあると考えられます。
プライバシー保護と品質向上の両立
Microsoft AIは、トピックと意図という高レベルな情報のみを分析することで、ユーザーデータのプライバシーを最大限保護しながら、これらの洞察を得ることに成功しています。この手法により、個人を特定できる詳細な会話内容にアクセスすることなく、利用パターンの理解が可能になります。
こうしたパターン理解は、Copilotの改善に直接つながります。ユーザーにとって最も重要なもの(健康、創造性、重要な瞬間でのサポート)を把握することで、実際の生活により適合する機能を設計できるためです。また、Copilotの発言が重要な意味を持つことが明らかになったことで、品質基準を高く保つ必要性も示されています。
まとめ
Microsoft AIの調査は、AIツールが情報提供だけでなく、健康管理、創造的活動、人間関係の相談など、生活の多様な場面で活用されている実態を明らかにしました。特に、時間帯や曜日による使い分け、個人的なアドバイスを求める傾向の増加は、AIが日常生活に深く組み込まれていることを示しています。
