はじめに
本稿では、GitHub公式ブログが2025年9月16日に公開した記事「Meet the GitHub MCP Registry: The fastest way to discover MCP Servers」を基に、AIエージェント開発の新たなハブとなる「GitHub MCP Registry」についてご紹介します。
AIエージェントを外部ツールと連携させる際の大きな課題であった「ツールの発見しにくさ」を解決し、よりオープンで相互運用性の高いエコシステムを目指しています。
参考記事
- タイトル: Meet the GitHub MCP Registry: The fastest way to discover MCP Servers
- 発行元: GitHub Blog
- 発行日: 2025年9月16日
- URL: https://github.blog/ai-and-ml/github-copilot/meet-the-github-mcp-registry-the-fastest-way-to-discover-mcp-servers/
GitHub MCP Registry
要点
- GitHubは、AIエージェントが使用するMCPサーバーを簡単に見つけられる「GitHub MCP Registry」を公開した。
- MCP (Model Context Protocol) は、AIエージェントと外部ツールが連携するための標準的なプロトコルである。
- これまでMCPサーバーは様々な場所に散在し発見が困難だったが、このレジストリによって一元的に管理・発見できるようになる。
- VS Codeからの直接インストールや、GitHubスター数による評価など、開発者にとって使いやすい機能が提供される。
- 将来的には、オープンソースのコミュニティレジストリと連携し、よりオープンで相互運用性の高いAIエコシステムの構築を目指している。
詳細解説
これまでのAIエージェント開発における課題
GitHub CopilotのようなAIツールが進化し、AI自身が外部のツールやサービスと連携して複雑なタスクをこなす「AIエージェント」の開発が活発になっています。この連携を実現する上で重要な役割を果たすのがMCPサーバーです。
しかし、これまでMCPサーバーは特定の統一された場所がなく、開発者は様々なレジストリ、個人のリポジトリ、コミュニティのスレッドなどを探し回る必要がありました。この状況は、以下のような課題を生んでいました。
- 発見の困難さ: 必要なツールを見つけるのに時間がかかり、開発の生産性を下げていた。
- 作成者の負担: サーバーの作成者は、複数の場所へツールを公開し、同じようなセットアップの質問に何度も答える必要があった。
- セキュリティリスク: 管理が一元化されていないため、信頼できるサーバーを見極めるのが難しく、セキュリティ上の懸念があった。
このように、エコシステムが分断されている状態は、開発者と作成者の双方にとって大きな摩擦となっていました。
解決策としての「GitHub MCP Registry」
こうした課題を解決するために、GitHubは「GitHub MCP Registry」を立ち上げました。これは、MCPサーバーを発見するための新しい「ホームベース(中心的な拠点)」となることを目指しています。
開発者はこのレジストリを利用することで、GitHub Copilotやその他のMCPに対応したAIツールで利用できるサーバーを簡単に見つけることができます。GitHubは既に多くのMCPサーバーがホストされている場所であるため、このレジストリはそれらを発見しやすくし、開発者がより速く適切なツールを見つけられるように支援します。

GitHub MCP Registryの主な特徴
GitHub MCP Registryは、開発者がスムーズにMCPサーバーを発見し、利用できるようにするためのいくつかの便利な機能を備えています。
- VS Codeとの連携によるワンクリックインストール: 開発環境であるVS Code内から、必要なMCPサーバーを簡単に見つけてワンクリックでインストールできます。
- 信頼性の高いサーバーの発見: 各サーバーはGitHubリポジトリと直接連携しています。そのため、GitHubのスター数やコミュニティでの活動状況を指標として、信頼性や人気のあるサーバーを簡単に見分けることが可能です。
- 既存スタックとの互換性: GitHub Copilotだけでなく、MCPと互換性のあるあらゆるホスト(AIツール)で動作します。
オープンなエコシステムに向けた連携
GitHub MCP Registryは、GitHub単独の取り組みではなく、多くのパートナーやコミュニティとの協力によって成り立っています。
Figma、Postman、HashiCorp (IBM)、Dynatraceといった主要なテクノロジー企業が、ローンチパートナーとして既に参加しています。例えば、FigmaはデザインのコンテキストをCopilotに持ち込むサーバーを、PostmanはAPIプラットフォームと連携するサーバーを提供しており、開発者はこれらの強力な機能をAIエージェントを通じて利用できます。
さらに重要なのは、オープンソースコミュニティとの連携です。GitHubは、AIモデル開発企業であるAnthropicやMCP運営委員会と協力し、オープンソースのMCPレジストリ「OSS MCP Community Registry」の構築を進めています。
将来的には、開発者はこのコミュニティレジストリに自作のMCPサーバーを公開するだけで、自動的にGitHub MCP Registryにもその情報が反映されるようになります。この仕組みは、以下のような利点をもたらします。
- 重複の削減: 複数のレジストリに同じ情報を登録する手間がなくなる。
- 透明性の向上: サーバーに関するメタデータや検証情報が明確に表示される。
- エコシステム全体の活性化: コミュニティ全体での貢献が促進され、イノベーションが加速する。
まとめ
今回発表された「GitHub MCP Registry」は、これまで分断され発見が困難だったMCPサーバーに、信頼できる中心的な発見の場を提供するものです。
これにより、開発者はAIエージェント開発に必要なツールを迅速かつ安全に探し出せるようになり、開発効率の大幅な向上が期待できます。また、サーバー作成者にとっても、公開の手間が簡素化され、より多くの開発者にツールを使ってもらう機会が増えると考えられます。
この取り組みは、単なるツールの置き場所を作るだけでなく、オープンソースコミュニティと連携して、AI開発のためのより健全で相互運用性の高いエコシステムを構築するという、GitHubの意思が見えるものです。今後の発展が期待されます。