[ニュース解説]OpenAIが「GPT-5.6」を正式公開——Sol・Terra・Lunaの3モデルでコーディング・サイバーセキュリティの性能を刷新

目次

はじめに

 OpenAIが2026年7月10日、次世代モデル群「GPT-5.6」を正式公開したと発表しました。フラッグシップの「Sol」を筆頭に、日常業務向けの「Terra」、低コストの「Luna」の3モデルで構成されます。本稿では、この発表内容をもとに、性能・安全対策・料金体系について解説します。

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要点

  • OpenAIは2026年7月10日、次世代モデル群「GPT-5.6」を正式公開した。ファミリーはフラッグシップの「Sol」、日常業務向けの「Terra」、低コストの「Luna」で構成されている
  • Solはコーディング性能を測る「Artificial Analysis Coding Agent Index」で80点を記録し、新たな最高性能を達成した
  • サイバーセキュリティ評価「ExploitBench」ではGPT-5.5の47.9%から73.5%へと大きく性能が向上した
  • 知識労働の評価「BrowseComp」で92.2%、コンピュータ操作の評価「OSWorld 2.0」で62.6%を記録し、いずれも新たな最高性能となった
  • 料金は100万トークンあたりSolが入力5ドル・出力30ドル、Terraが入力2.5ドル・出力15ドル、Lunaが入力1ドル・出力6ドルに設定されている

詳細解説

GPT-5.6ファミリーの位置づけ

 GPT-5.6は、6月下旬に限定プレビューとして紹介したモデル群の正式版にあたります。OpenAIによれば、Solは知能と効率の両面で新たな水準を打ち出したフラッグシップモデルであり、Terraは日常業務向けのバランス型、Lunaは最も費用対効率に優れたモデルと位置づけられています。数字がモデルの世代を示し、Sol・Terra・Lunaという呼称自体は世代を超えて使われる能力階層だという説明も添えられています。

 また、複数のエージェントを並列に動かして複雑な作業を高速化する新モードとして「ultra」が導入されました。ひとつのタスクに対して最大16体のエージェントを協調させる構成も可能で、時間を要する調査・検証タスクほど効果を発揮する仕組みだと考えられます。

コーディング性能とエージェント機能

 OpenAIによれば、SolはコーディングAIエージェントの性能を測る「Artificial Analysis Coding Agent Index」で80点を記録し、新たな最高性能を達成しました。出力トークン数は半分以下、所要時間も半分以下、コストは約3分の1に抑えられているとのことです。長時間にわたるコマンドライン作業を評価する「Terminal-Bench 2.1」や、実際のコードベースでの長時間のエンジニアリング作業を評価する「DeepSWE」でも新たな最高性能を記録しました。

 この背景には、「Programmatic Tool Calling」という仕組みがあります。モデルがツール呼び出しの結果をすべて往復させるのではなく、軽量なプログラムを自ら記述・実行して中間結果を処理できるようにする機能です。これにより、ツールを多用する作業がより少ないトークン数・往復回数で進められると考えられます。

設計判断力とナレッジワーク

 OpenAIは、Solが高レベルな指示だけでも洗練されたインターフェースを作成できると説明しています。生成したコードや文章だけでなく、実際にコンピュータ操作を通じて表示結果を確認・修正できる点も特徴の一つとされています。

 知識労働に関する評価では、ウェブ上での情報収集タスクを評価する「BrowseComp」で92.2%、コンピュータ操作を評価する「OSWorld 2.0」で62.6%を記録し、いずれも新たな最高性能となりました。プレゼンテーションや文書、表計算においても、参照ファイルのデザインルールを読み取って新しい資料に一貫して適用できる点が向上したとのことです。

サイバーセキュリティと科学分野での性能

 サイバーセキュリティ分野では、脆弱性の発見から任意コード実行までの過程を評価する「ExploitBench」で、GPT-5.5の47.9%から73.5%へと大きく性能が向上しました。実際の脆弱性を悪用可能な形にする「ExploitGym」でも、2時間の制限内でGPT-5.5の15.1%から24.9%まで上昇し、6時間まで許容すると33.7%に達しています。

 これに伴い、悪用リスクの高い機能へのアクセスは一段と絞られています。個人が高度なサイバー関連機能を利用し続けるには、9月1日までにハードウェア型パスキーによる本人確認の強化設定を行う必要があるとされており、企業でのアカウント管理を担う立場の方は留意しておくとよいと思います。

 科学分野でも、生命科学関連のベンチマークで前世代からの改善が見られたとのことです。ゲノミクスや定量生物学の分析といった長期的なタスクで、より少ないトークン数・時間で強い結果を出したと説明されています。

安全対策と提供体制

 OpenAIは、GPT-5.6の安全対策について、モデルに訓練された拒否行動に加え、リアルタイムの分類器、継続的なモニタリング、アカウント単位のアクセス制御を組み合わせた多層構造だと説明しています。一般提供前には、約70万A100e相当のGPU時間を投じた自動化レッドチーミングを含む、これまでで最も大規模な安全性評価を実施したとのことです。

 料金は100万トークンあたり、Solが入力5ドル・出力30ドル、Terraが入力2.5ドル・出力15ドル、Lunaが入力1ドル・出力6ドルです。ChatGPT・Codex・APIを通じて順次提供されており、開発者はAPI経由でSol・Terra・Lunaのいずれも利用できます。プロンプトキャッシュの仕組みも見直され、キャッシュの最低保持時間が30分に設定されたほか、明示的なキャッシュ区切りの指定が可能になりました。

各ベンチマーク比較

Professional

EvalGPT‑5.6 SolGPT‑5.6 TerraGPT‑5.6 LunaGPT‑5.5Claude Fable 5Claude Opus 4.8Gemini 3.1 Pro PreviewGemini 3.5 Flash
Agents’ Last Exam52.7%50.4%50.3%46.9%40.5%45.2%32.1%—
GDPval-AA v21,747.8 Elo1,593 Elo1,591.8 Elo1,493.7 Elo1,759.6 Elo1,600.1 Elo962.3 Elo1,348.8 Elo
Management Consulting Tasks (Internal)43.2%37.2%35.4%31.3%35.5%31.6%13.2%—
Big Finance Bench53%51%36%49%—44%——
Artificial Analysis Intelligence Index v4.158.9 Index score55 Index score51.2 Index score54.8 Index score59.9 Index score55.7 Index score46.5 Index score50.2 Index score

Coding

EvalGPT‑5.6 SolGPT‑5.6 Sol UltraGPT‑5.6 TerraGPT‑5.6 LunaGPT‑5.5Claude Mythos 5Claude Mythos PreviewClaude Fable 5Claude Opus 4.8Gemini 3.1 Pro Preview
Artificial Analysis Coding Agent Index v1.180 Index score—77.4 Index score74.6 Index score76.4 Index score——77.2 Index score72.5 Index score42.7 Index score
SWE-Bench Pro64.6%—63.4%62.7%59.4%80.3%77.8%80%69.2%54.2%
DeepSWE v1.172.7%—69.6%67.2%67%——69.7%59%11.8%
Terminal-Bench 2.188.8%91.9%87.4%84.7%85.6%88%—83.1%78.9%70.7%

Science and health

EvalGPT‑5.6 SolGPT‑5.6 TerraGPT‑5.6 LunaGPT‑5.5Claude Fable 5Claude Opus 4.8Gemini 3.1 Pro PreviewGemini 3.5 Flash
GeneBench Pro28.7%23.3%10.8%12%—16%3.1%8.14%
LifeSciBench59.9%56%51.2%50.4%—53.6%——
MedChemBench (Internal)48.3%35%30.4%35.5%————
HealthBench Professional⁶60.5%57.7%55.7%49.5%60.9%53%——

Computer use

EvalGPT‑5.6 SolGPT‑5.6 Sol UltraGPT‑5.6 TerraGPT‑5.6 LunaGPT‑5.5Claude Mythos 5Claude Mythos PreviewClaude Opus 4.8Gemini 3.1 Pro Preview
OSWorld 2.062.6%—50.2%45.6%47.5%——54.8%—
BrowseComp90.4%92.2%87.5%83.3%84.4%88%87.9%84.3%85.9%
BenchCAD70.6%—62.3%63.1%44.4%38.4%35.5%27.3%—
BenchCAD (python tool)83.4%—78.2%73.9%55.8%65%61%51.8%—

Cybersecurity

EvalGPT‑5.6 SolGPT‑5.6 Sol UltraGPT‑5.6 TerraGPT‑5.6 LunaGPT‑5.5Claude Mythos 5Claude Mythos PreviewClaude Opus 4.8
Capture-the-Flag Challenges96.7%—91.8%85.2%88.1%———
SEC-Bench Pro71.2%74.3%57.7%48.9%45.8%———
CyberGym84.5%—81.8%77.9%81.8%83.8%83%78.1%
ExploitBench73.5%—52.9%33.2%47.9%78%74.2%40%
ExploitGym33.7%—23.2%12.4%15.1%———

Self-improvement

EvalGPT‑5.6 SolGPT‑5.6 TerraGPT‑5.6 LunaGPT‑5.5
Internal Research Debugging Evaluation68.3%67.8%50.8%50%
KernelGen 1P61.1%49.2%22.4%29.3%
NanoGPT9.69%14.5%1.66%2.65%
PostTrainBench Lite50.3%51.5%29.6%38.8%
RSI Index57.9%56.3%41.9%41.7%

Multimodal

EvalGPT‑5.6 SolGPT‑5.6 TerraGPT‑5.6 LunaGPT‑5.5Claude Fable 5Claude Opus 4.8Gemini 3.1 Pro Preview
MMMU Pro (no tools)83%80.7%78.4%81.2%——80.5%
MMMU Pro (with tools)84.6%82%79.5%83.2%———
gdp.pdf30.7%24.7%22.7%26%29.8%22.5%16.7%

Academic

EvalGPT‑5.6 SolGPT‑5.6 TerraGPT‑5.6 LunaGPT‑5.5Claude Mythos 5Claude Mythos PreviewClaude Fable 5Claude Opus 4.8Gemini 3.1 Pro Preview
GPQA Diamond94.6%92.9%92.3%93.6%94.1%94.6%92.6%92%94.3%
FrontierMath Tier 1-3 (v2)89%84.9%78.6%85.3%——87%80%59.6%
FrontierMath Tier 4 (v2)83%68.3%58.5%72.5%——87.8%56.1%—

Tool use

EvalGPT‑5.6 SolGPT‑5.6 TerraGPT‑5.6 LunaGPT‑5.5Claude Mythos 5Claude Mythos PreviewClaude Fable 5Claude Opus 4.8Gemini 3.1 Pro PreviewGemini 3.5 Flash
AutomationBench18.1%15.2%14.9%12.9%——17.4%15.5%—14.5%
Toolathlon58%53.1%53.4%55.6%61.7%61.1%61.7%59.9%48.8%—

Long context

EvalGPT‑5.6 SolGPT‑5.6 TerraGPT‑5.6 LunaGPT‑5.5Claude Mythos 5Claude Mythos PreviewClaude Opus 4.8
OpenAI MRCR v2 8-needle 256K-512K91.5%89.6%41.3%81.5%———
OpenAI MRCR v2 8-needle 512K-1M73.8%72.5%41.3%74%———
GraphWalks BFS 256k f190.7%76.9%81.3%73.7%91.1%85.7%85.9%
GraphWalks BFS 1mil f177.1%71.2%51.2%45.4%79.4%74.3%68.1%

Abstract reasoning

EvalGPT‑5.6 SolGPT‑5.6 TerraGPT‑5.6 LunaGPT‑5.5Claude Opus 4.8Gemini 3.1 Pro Preview
ARC-AGI-3⁷7.78%0.8%0.18%0.43%1.5%0.42%

まとめ

 GPT-5.6は、コーディング・サイバーセキュリティ・知識労働の各分野で前世代から大きく性能を伸ばし、費用対効果の面でも改善が図られたモデル群と言えます。ベンチマークではAnthropicのモデルとの比較も示されており、Claude Fable 5の発表内容もあわせてご覧いただくと、両社の技術動向を立体的に把握できるかと思います。

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