[開発者向け]SQLもコードも不要——MicrosoftのオープンソースAI分析ツール「Data Formulator 0.7」でエンタープライズデータを横断分析する

目次

はじめに

 Microsoft Researchが2026年5月28日、企業のデータ分析ワークフローをAIエージェントで一気通貫に支援するオープンソースシステム「Data Formulator 0.7」を公開しました。本稿では、同システムの主要機能であるData Connectors・コンテキスト認識エージェント・インタラクティブワークスペースの仕組みと、実際のセットアップ手順を解説します。

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要点

  • Data Formulator 0.7はデータベース・ウェアハウス・BIシステム・オブジェクトストア・ローカルファイルを横断して接続できるData Connectors機能を備えたオープンソースのAI分析システムである
  • コンテキスト認識エージェントが接続済みデータソース・ロード済みテーブル・過去のチャートなど分析ワークスペース全体を参照しながら、データ準備・変換・可視化を自律的に実行する
  • Data Thread(構造化チャット)が分析履歴・中間結果・チャートをすべて記録し、長時間セッションでも過去のステップに戻って分岐分析や比較が可能である
  • インタラクティブキャンバス上でチャートを直接編集するか、自然言語で指示すればエージェントがラベル・アノテーション・色などを調整できる
  • SQLやプログラミングの専門知識なしで利用でき、GitHubリポジトリからオープンソースとして公開されている

詳細解説

背景——企業データ分析の「断絶」問題

 企業の分析ワークフローは、複数のストレージシステムやツールに分断されていることが多く、分析を始める前にガバナンスに沿った接続の確立、メタデータの整備、権限管理、複数システム間のデータ結合ワークフローの構築といった作業が必要になります。Microsoft Researchの発表によれば、こうした問題に対処するために設計されたのがData Formulator 0.7です。

 また、コーディングの専門知識を持たないアナリストや業務担当者にとっては、新しい指標の計算、データ整理方法の比較、中間出力の確認、可視化の調整といった作業が、孤立したチャット型インターフェース上では再現性を持って管理しにくいという課題もあります。Data Formulator 0.7はこの両方を解決することを目指しています。

Data Connectors——ガバナンスを維持したまま多様なデータソースを接続

 Data Connectorsは、データベース・ウェアハウス・BIシステム・オブジェクトストア・ローカルファイルにまたがる認証・永続接続・プレビュー・メタデータ・統合ワークスペースモデルを提供する機能です。プラットフォームチームが一元管理した再利用可能なデータ接続を基盤とするため、毎回手動でファイルをアップロードし直す作業が不要になります。

 従来のデータ分析ツールでは、データソースごとに個別の接続設定を行い直すことが多く、ガバナンスの観点から接続情報が属人化しやすいという課題がありました。Data Connectorsの「中央管理・再利用可能な接続」という設計は、こうした運用コストを削減できる可能性があると思います。

コンテキスト認識エージェント——分析ワークスペース全体を「見て」動く

 Data Formulator 0.7の核心はコンテキスト認識AIエージェントです。単一のプロンプトに応答するのではなく、エージェントは接続済みデータソース・ロード済みテーブル・過去のチャート・ユーザーの目的を含む分析ワークスペース全体にアクセスします。エージェントはテキストだけでなくツールを通じて推論・行動し、1回のやり取りの中でデータの検査・コードの記述と実行(分離された環境内)・チャート仕様の生成・結果の説明・中間ステップの表示を行うことができます。

 リクエストが曖昧な場合は、エージェントが処理を進める前に確認の質問を行います。これにより、ユーザーの目標に沿った分析の実行・データ準備と変換・フォローアップ質問の提案・テーブルとチャートのバッチ生成・すべての結果に対する検証可能で再現性のあるコードの生成といった複雑な分析ワークフローが実現します。

Data Thread とインタラクティブキャンバス——長時間セッションを管理する

 Data Formulator 0.7では、エージェントとのやり取りをData Threadという構造化チャットで管理します。分析プロセスを通じてすべての質問・中間結果・チャートが記録されるため、長時間のセッションでも管理しやすい状態を保ちます。ユーザーは過去のステップに戻って別の分析に分岐したり、並べて比較したりすることが、コンテキストを失わずに行えます。

 インタラクティブキャンバスはData Threadを補完する機能です。探索から発表・共有フェーズへ移行する際、ユーザーはキャンバス上でチャートを直接編集するか、自然言語で変更を指示してエージェントにラベル・アノテーション・レイアウト・色・強調箇所を調整させることができます。分析結果はレポートとして生成し、他のメンバーと共有することも可能です。

インストール・セットアップ

 Data Formulator 0.7はGitHubで公開されているオープンソースプロジェクトです。以下の手順で環境を構築できます(参考記事のGitHubリポジトリをもとにしています)。

前提条件

以下のツールが必要です。バージョンを事前に確認してください。

# Pythonのバージョンを確認します(3.10以上を推奨)
python --version

# Node.jsのバージョンを確認します(16以上を推奨)
node --version

注意: Pythonが入っていない場合は python.org からインストールしてください。Node.js(JavaScriptの実行環境)は nodejs.org から入手できます。

1. リポジトリのクローン

# GitHubからリポジトリをローカルにコピーします
git clone https://github.com/microsoft/data-formulator

# クローンしたディレクトリに移動します
cd data-formulator

2. Pythonパッケージのインストール

pip(Pythonのパッケージ管理ツール)を使って依存ライブラリをインストールします。

# 必要なPythonパッケージを一括インストールします

pip install -r requirements.txt

注意: pip: command not found と表示される場合は pip3 を試してください。また、他プロジェクトとの依存関係の衝突を防ぐため、仮想環境(venv)の利用を推奨します。仮想環境とは、プロジェクトごとにパッケージを独立して管理できる隔離された実行空間です。

# 仮想環境を作成します(初回のみ)
python -m venv venv

# 仮想環境を有効化します(Mac/Linux)
source venv/bin/activate

# 仮想環境を有効化します(Windows)
venv\Scripts\activate

3. フロントエンドのビルド
# Node.jsの依存パッケージをインストールします
npm install

# フロントエンドをビルドします
npm run build

4. サーバーの起動
# Data Formulatorサーバーを起動します
python -m data_formulator

ブラウザで http://localhost:5000 にアクセスするとUIが表示されます。

注意: ポートが使用中の場合は –port 8080 のようにオプションでポートを指定できます。

5. LLMバックエンドの設定

AIエージェント機能にはLLM(大規模言語モデル)のAPIキーが必要です。UIの設定画面からOpenAIまたはAzure OpenAIのAPIキーを入力して接続します。


 詳細な最新手順はGitHubリポジトリ(https://github.com/microsoft/data-formulator)を確認することをお勧めします。リリースのたびに手順が更新される場合があります。

実際の分析フロー——利用イメージ

 セットアップ完了後の基本的な使い方は以下の流れになります。

  1. データ接続: Data Connectorsパネルからデータベース・CSVファイル・BIシステムなどのデータソースを接続する
  2. 分析リクエスト: Data Threadのチャットに自然言語で分析内容を入力する(例:「売上を月別・製品カテゴリ別に集計して棒グラフにしてください」)
  3. エージェントの処理: エージェントが自動でデータを確認・コードを生成・実行し、チャートを生成する
  4. 調整・深掘り: キャンバス上で直接チャートを編集するか、続けて「前年同期比を追加して」などと指示する
  5. 共有: レポートとして出力し、チームメンバーに共有する

 MicrosoftがMagenticLiteを公開した際に示されたように、Microsoftはエージェントが複数のツールを横断して作業を完結させる設計思想を一貫して推進しています。Data Formulator 0.7もその流れに位置づけられるシステムと考えられます。

まとめ

 Microsoft Researchが公開したData Formulator 0.7は、企業内に散在するデータソースをAIエージェントが横断しながら、SQLやコードの知識なしで分析・可視化を完結させることを目指したオープンソースシステムです。Data Thread による分析履歴の保持と、インタラクティブキャンバスによる柔軟な編集が特徴的だと思います。オープンソースとして公開されているため、自社の分析基盤へ組み込む形での活用も検討できると考えられます。

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