はじめに
OpenAIが2025年10月28日、企業構造の再資本化完了を発表しました。非営利団体「OpenAI Foundation」が営利企業を管理する体制を維持しながら、約1,300億ドル相当の株式を保有し、史上最大規模の慈善組織の1つとなります。本稿では、この発表内容をもとに、OpenAIの新しい企業構造と今後の取り組みについて解説します。
参考記事
- タイトル: Built to benefit everyone
- 著者: Bret Taylor(OpenAI取締役会会長)
- 発行元: OpenAI
- 発行日: 2025年10月28日
- URL: https://openai.com/index/built-to-benefit-everyone/
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要点
- OpenAIは再資本化を完了し、非営利団体「OpenAI Foundation」が営利企業を管理する体制を維持している
- OpenAI Foundationは約1,300億ドル相当の営利企業の株式を保有し、史上最大規模の慈善組織の1つとなる
- 250億ドルのコミットメントとして、健康・疾病治療とAI強靭性の技術的ソリューションに注力する
- 営利企業は「OpenAI Group PBC」という公益法人となり、非営利団体と同じミッションを掲げる
- カリフォルニア州とデラウェア州の司法長官との約1年間の対話を経て、再資本化が完了した
詳細解説
企業構造の変更内容
OpenAIによれば、今回の再資本化により企業構造が簡素化されました。非営利団体は「OpenAI Foundation」という名称となり、2019年に設立された営利企業を引き続き管理します。営利企業は「OpenAI Group PBC」という公益法人に移行し、OpenAI Foundationと同じミッション「AGI(汎用人工知能)がすべての人類に利益をもたらすことを確保する」を掲げています。
この構造により、営利企業が成功するほど非営利団体の株式価値が高まり、その資金を慈善活動に活用できる仕組みとなります。OpenAIによれば、営利企業が特定の評価額マイルストーンに達すると、Foundationに追加の所有権が付与されるとのことです。
公益法人(Public Benefit Corporation)は、米国の企業形態の1つで、株主利益だけでなく社会的利益も追求することが法的に認められています。これにより、OpenAIは商業的成功とミッション遂行を両立させる体制を整えたと言えます。
OpenAI Foundationの資金規模と位置づけ
OpenAIによれば、OpenAI Foundationは現在約1,300億ドル相当の営利企業の株式を保有しており、これは史上最大規模の慈善組織の1つとなります。この資金規模を活用し、AGI到達前に重要な資源にアクセスできる道筋が確保されました。
一般的な非営利組織では、資金調達が常に課題となりますが、OpenAIの場合は営利企業の成長が直接的に非営利団体の資金力向上につながる独自の構造となっています。これは、技術開発と社会貢献を同時に推進する新しいモデルと考えられます。
また、OpenAIは約1年間にわたりカリフォルニア州とデラウェア州の司法長官と建設的な対話を行い、その結果として複数の変更を加えたと述べています。この過程を経たことで、公共の利益により適した構造になったとしています。
250億ドルのコミットメント: 具体的な取り組み
OpenAIによれば、OpenAI Foundationは当初、250億ドルのコミットメントを2つの分野に注力します。
第1の分野は健康と疾病治療です。OpenAI Foundationは、より迅速な診断、より良い治療法、治療法の開発を通じて、誰もが健康面での進歩から恩恵を受けられるよう、研究に資金を提供します。具体的には、オープンソースで責任を持って構築された最先端の健康データセットの作成や、科学者への資金提供から開始するとのことです。
医療分野におけるAIの活用は、診断精度の向上や創薬の加速など、多くの可能性が指摘されています。オープンソースのデータセットを提供することで、研究者コミュニティ全体の研究が促進される可能性があります。
第2の分野はAI強靭性のための技術的ソリューションです。OpenAIによれば、インターネットが包括的なサイバーセキュリティエコシステムを必要としたように、AIにも並行した強靭性レイヤーが必要とされています。これは、発電所、病院、銀行、政府、企業、個人を保護するための取り組みで、AIの利益を最大化し、リスクを最小化することを目的としています。
AI強靭性という概念は、AIシステムの安全性、セキュリティ、信頼性を包括的に指すと考えられます。技術の普及に伴い、悪用や誤作動のリスクも高まるため、こうした予防的な取り組みは重要性を増しているでしょう。
これらの取り組みは、既存の5,000万ドルの「People-First AI Fund」と非営利委員会の提言に基づいて構築されています。
ミッション重視のガバナンス体制
OpenAIは2015年に非営利組織として設立され、当時からのミッション「AGIがすべての人類に利益をもたらすことを確保する」を今日でも維持しています。OpenAIによれば、今回の再資本化により、業界で最も強力なミッション重視のガバナンス体制が維持されているとのことです。
OpenAI FoundationとOpenAI Groupが協力して、AIの進歩がもたらす困難な問題と機会に対するソリューションを推進します。これには、誰もが利益を得られる知能をツールにすること、安全で調整されたシステムの構築、科学的発見の加速、グローバルな協力と強靭性の強化が含まれます。
OpenAIによれば、世界で最も強力な技術は、世界の集合的利益を反映する方法で開発されるべきだとしています。今回の再資本化の完了により、AIのフロンティアを推進し続ける能力と、進歩がすべての人に役立つことを確保する更新された企業構造が得られたとのことです。
まとめ
OpenAIは企業構造の再資本化を完了し、非営利団体OpenAI Foundationが約1,300億ドル規模の株式を保有する体制となりました。250億ドルのコミットメントで健康とAI強靭性に注力し、営利企業の成長が社会貢献に直結する独自のモデルを構築しています。この構造が、技術開発と公共の利益の両立にどのように機能していくのか、今後の展開が注目されます。
