はじめに
Googleが2025年12月16日、NotebookLMのSlide Decks機能について、具体的な活用方法を8つのユースケースとともに紹介しました。画像生成モデル「Nano Banana Pro」を活用したこの機能により、リサーチから資料デザインまでのプロセスが単一ワークフローで完結できるようになっています。本稿では、Googleの公式ブログで紹介された活用事例をもとに、この機能の可能性を解説します。
参考記事
- タイトル: 8 ways to make the most out of Slide Decks in NotebookLM
- 著者: Tomas Vorel (Product Marketing Manager), Usama Bin Shafqat (Software Engineer)
- 発行元: Google (The Keyword)
- 発行日: 2025年12月16日
- URL: https://blog.google/technology/google-labs/8-ways-to-make-the-most-out-of-slide-decks-in-notebooklm/
要点
- NotebookLMのSlide Decks機能は、画像生成モデル「Nano Banana Pro」とNotebookLM独自のクリエイティブエージェントを組み合わせた視覚的ストーリーテリングツールである
- Deep Researchの結果、ラフノート、手書きメモ、既存のスライド、写真など、多様な入力形式からプロフェッショナルなスライド資料を自動生成できる
- ブランドガイドラインの適用、データの視覚化、長文書のストーリーブック化など、8つの具体的な活用パターンが提示されている
- 18歳以上の全NotebookLMユーザーが利用可能で、AI Ultraサブスクリプションユーザーは2倍の長さのスライド生成が可能である
詳細解説
Slide Decks機能の基盤技術
Googleによれば、NotebookLMのSlide Decks機能は、画像生成モデル「Nano Banana Pro」の視覚的能力と、Audio OverviewやVideo Overviewで使用されているのと同じクリエイティブエージェントを組み合わせたものです。
この組み合わせにより、リサーチから資料デザインまでの工程を単一のワークフロー内で完結できると説明されています。従来はデザインチームに限定されていたプロフェッショナルなビジュアルコンテンツの作成が、より広範なユーザーに開放される形と考えられます。
8つの活用パターン
Googleは具体的な活用方法として8つのユースケースを提示しています。
1. Deep Researchからスライド生成
Deep Research機能で得られた調査結果を、視覚的なスライド資料に変換できます。Googleの事例では、世界各国の新年の祝い方に関する調査結果から、時間計測システムの比較図や文化的テーマの分類図などを含むスライドが生成されています。
密度の高い調査レポートは、特に視覚的な学習スタイルを好む人にとって理解の障壁となることがあります。この機能は、そうした情報を構造化されたビジュアル資料に変換することで、理解を促進する可能性があると思います。
2. ラフノートからのスライド作成
箇条書きのメモ、アウトライン、あるいは手書きのノートといった未完成の素材から、完成されたスライドを生成できます。NotebookLM内でメモを作成してソースとして追加するか、Google Slidesのドラフトをアップロードする方法があります。
Googleの例では、手書きのメモや簡単なスケッチから、「The ‘List’ Protocol」という題材のプレゼンテーション資料が生成されています。直前のプレゼンテーション準備における時間的制約を軽減する用途が考えられます。
3. アイデアのブレインストーミング
プロジェクトのソース資料に基づいて、新しいアイデアや概念を視覚的に探索できます。Googleは、ジェーン・オースティン関連の資料を使用して、ホリデーをテーマにした二次創作小説のピッチデッキを生成する例を示しています。
このユースケースでは、既存の資料から創造的な派生アイデアを視覚化する可能性が示されていると言えます。
4. ブランドスタイリングの適用
既存のプレゼンテーションをNotebookLMにアップロードし、デザインの改善、ブランドカラーの適用、ソース資料からのビジュアル追加を依頼できます。
Googleの事例では、ブランドブック(企業のデザインガイドライン文書)を参照資料として追加することで、NotebookLMの2025年の機能リリースをまとめたスライドに統一されたコーポレートアイデンティティが適用されています。この機能により、デザインの専門知識がなくてもブランドガイドラインに準拠した資料作成が可能になると考えられます。
5. イラストによる理解促進
数値データを含む文書について、Geminiの世界知識を活用した視覚的なメタファーや図表で説明できます。Googleは、国際観光統計を扱った例を示しており、「2024年の国際観光客到着数が14億人でパンデミック前の99%に達した」といった数値が、インフォグラフィック形式で表現されています。
複雑な概念に馴染みのある形式を適用することで、詳細を失わずに内容を理解しやすくする効果があると思います。
6. 長文書のストーリーブック化
長い文書、記事のセット、書籍全体を視覚的なナラティブに変換できます。Googleの例では、19世紀と21世紀の料理本を比較し、現代的な漫画スタイルで表現したストーリーが生成されています。
この用途では、大量のテキスト情報を消化しやすい視覚的フォーマットに再構成する可能性が示されています。
7. 写真からレシピブック作成
料理の写真を撮影し、NotebookLMに変換させることで、レシピブックを作成できます。Geminiの世界理解を使用してレシピを記述するか、自分のメモをアップロードして詳細を補完できます。
Googleの事例では、ホリデーベーキングの写真から、「シナモンシュガーパフ」や「15分スパイスドーナツホール」などのレシピを含む資料が生成されています。
8. 好みのスタイルでのプラン作成
ユーザーは任意のビジュアルスタイルや創作スタイルを定義できます。Googleの例では、新年の決意を整理するための資料を「深緑の黒板デザイン、白・黄・ピンクの手書きチョーク風テキスト」というスタイルで生成しています。
従来のスライド編集ソフトウェアで可能だったスタイルのカスタマイズが、NotebookLMでも制限にならないという設計思想が示されていると言えます。
利用可能性と制限
Googleによれば、Slide Decks機能は18歳以上のすべてのNotebookLMユーザーが利用可能です。現在、長さと形式について2つのオプションが提供されています。
2025年12月上旬から、AI Ultraサブスクリプションユーザーは、通常の2倍の長さのスライドを生成できるようになっています。この拡張機能により、より詳細な資料作成のニーズに対応できると考えられます。
NotebookLMの進化の方向性
Googleは今回のアップデートについて、「NotebookLMがリサーチアシスタントから知識伝達のパートナーへと進化している」と表現しています。
従来のNotebookLMは主に情報の収集と整理に焦点を当てていましたが、Slide Decksの追加により、得られた知識を他者に効果的に伝えるための資料作成までをカバーするようになったということです。この変化は、AIツールが単なる情報処理から、より創造的なコンテンツ制作支援へと役割を拡大している業界の流れを反映していると思います。
まとめ
NotebookLMのSlide Decks機能は、リサーチから視覚的資料作成までを統合したワークフローを提供しています。Deep Researchの結果、手書きメモ、写真など多様な入力から、ブランドガイドラインに準拠したスライドを生成できる点が特徴です。18歳以上の全ユーザーが利用可能で、AI Ultraサブスクリプションではより長いスライド生成が可能となっています。今後、この種のAI支援による資料作成ツールがどのように進化していくか、注目されるところです。
