[ビジネスマン向け]Anthropic「Claude for Financial Services」が大幅拡張:Excel統合と7つの新コネクター追加

目次

はじめに

 Anthropicが2025年10月28日、金融サービス向けClaudeの大幅な機能拡張を発表しました。Excel add-inのベータ版リリース、リアルタイム市場データへの接続を可能にする7つの新コネクター、そして金融業務に特化した6つのAgent Skillsが追加されます。

参考記事

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要点

  • AnthropicはExcelのサイドバーでClaudeを直接利用できる「Claude for Excel」をベータ版としてリリースし、読み取り、分析、修正、作成を可能にした
  • Aiera、LSEG、Moody’sなど7つの新コネクターにより、リアルタイムの市場データ、決算情報、信用格付けにClaudeが直接アクセスできるようになった
  • DCFモデル構築、類似企業分析、カバレッジレポート作成など、金融業務に特化した6つのAgent Skillsが追加された
  • Vals AIのFinance Agent benchmarkにおいて、Claude Sonnet 4.5は55.3%の精度でトップの成績を記録している

詳細解説

Claude for Excelの機能と特徴

 Anthropicによれば、Claude for ExcelはMicrosoft Excelのサイドバーに統合され、ユーザーはClaudeと対話しながらシートを操作できます。Claudeはワークブックの読み取り、分析、修正、新規作成が可能で、実行した変更内容を追跡し、参照したセルへ直接ナビゲートできる透明性の高い設計になっています。

 具体的には、シートの構造や数式の仕組みを解説したり、構造と数式の依存関係を保持しながら修正を行ったり、セル数式のデバッグと修正、テンプレートへのデータ入力、あるいはゼロから新しいスプレッドシートを構築することができます。この機能により、従来は手作業で時間がかかっていた財務モデリングやデータ分析の作業を、AIとの対話を通じて効率化できる可能性があります。

 現在はMax、Enterprise、Teamsユーザー向けのベータ版として提供されており、1,000名の初期ユーザーからフィードバックを収集した後、より広範な展開を予定しています。

リアルタイム情報への接続を実現する新コネクター

 Anthropicは今回、7つの新しいコネクターを追加しました。コネクターとは、Claudeが外部ツールやプラットフォームに直接アクセスするための仕組みです。7月にはS&P Capital IQ、Daloopa、Morningstar、PitchBookへの接続が追加されており、今回の拡張でさらに多様な情報源にアクセスできるようになりました。

Aiera 

 リアルタイムの決算発表の文字起こしや投資家イベントの要約を提供します。また、Aieraのコネクターを通じてThird Bridgeのデータフィードにもアクセスでき、専門家や元経営幹部によるインサイトインタビュー、企業インテリジェンス、業界分析のライブラリが利用可能です。

Chronograph

 プライベートエクイティ投資家向けに、ポートフォリオのモニタリングやデューデリジェンスに必要な運営情報と財務情報を提供します。パフォーマンス指標、評価額、ファンドレベルのデータなどが含まれます。

Egnyte

 内部データルーム、投資文書、承認済み財務モデルに対するセキュアな検索を可能にしながら、アクセス制御を維持します。

LSEG

 債券価格、株式、為替レート、マクロ経済指標、アナリストの推定値など、ライブ市場データへの接続を提供します。

Moody’s

 独自の信用格付け、リサーチ、6億社以上の公開・非公開企業の所有権、財務、ニュースを含む企業データへのアクセスを提供し、コンプライアンス、信用分析、事業開発における業務を支援します。

MT Newswires

 金融市場と経済に関する最新のグローバルなマルチアセットクラスのニュースを提供します。

 これらのコネクターにより、Claudeは静的なデータではなく、リアルタイムで更新される情報を基に分析や提案を行えるようになります。金融業界では情報の鮮度が意思決定の質に直結するため、この機能は実用的な価値が高いと考えられます。

金融業務に特化したAgent Skills

 Anthropicは今月初めにAgent Skillsを発表しました。Skillsとは、特定のタスクを実行するための指示、スクリプト、リソースを含むフォルダで、Claude.ai、Claude Code、APIを含むすべてのClaudeアプリで機能します。

 今回追加された6つの金融特化Skillsは以下の通りです:

  • 類似企業分析(Comparable Company Analysis): 評価倍率と運営指標を用いた分析で、更新されたデータで容易に再計算が可能
  • DCFモデル(Discounted Cash Flow Models): フリーキャッシュフローの完全な予測、WACC計算、シナリオ切り替え、感度分析表を含む
  • デューデリジェンスデータパック(Due Diligence Data Packs): データルームの文書をExcelスプレッドシートに処理し、財務情報、顧客リスト、契約条件を整理
  • 企業ティーザーとプロファイル(Company Teasers and Profiles): ピッチブックやバイヤーリスト向けの簡潔な企業概要
  • 決算分析(Earnings Analyses): 四半期の文字起こしと財務諸表を調査し、重要な指標、ガイダンスの変更、経営陣のコメントを抽出
  • カバレッジレポート(Initiating Coverage Reports): 業界分析、企業の詳細調査、評価フレームワークを含む

 これらのSkillsは、金融アナリストや投資銀行業務において日常的に求められる作業を自動化・効率化するものです。特に、DCFモデルやカバレッジレポートの作成は専門性が高く時間のかかる作業ですが、Skillsを活用することで、初期ドラフトの作成や標準的な分析の実行を迅速に行える可能性があります。

 ただし、これらはあくまでも作業の効率化を支援するツールであり、最終的な判断や責任は人間が担う必要があることに留意すべきです。

金融業務におけるベンチマーク性能

 Anthropicによれば、Claude Sonnet 4.5はVals AIのFinance Agent benchmarkにおいて55.3%の精度でトップの成績を記録しました。Finance Agent benchmarkは、金融業務におけるAIエージェントの能力を評価する指標です。

 この55.3%という数値は、従来のタスク自動化ツールで一般的に求められる90%以上の精度と比較すると、まだ人間の監視や確認が必要なレベルと考えられます。金融業務では正確性が極めて重要であるため、現時点ではAIを補助ツールとして活用し、専門家が最終的な検証を行う運用が適切でしょう。

対象ユーザーと展開計画

 Claude for ExcelおよびこれらのAgent Skillsは、Max、Enterprise、Teamsユーザー向けにプレビュー版として展開されています。Anthropicは初期ユーザーからのフィードバックを収集し、より広範な展開を進める予定です。

 また、Claudeはすでに主要な銀行、資産運用会社、保険会社、金融テクノロジー企業で広く利用されており、顧客対応などのフロントオフィス業務、引受・リスク・コンプライアンスなどのミドルオフィス業務、コード刷新やレガシープロセスなどのバックオフィス業務を支援しています。

まとめ

 AnthropicによるClaude for Financial Servicesの拡張は、金融業界におけるAI活用の具体的な形を示すものと言えます。Excel統合、リアルタイムデータへの接続、業務特化型のSkillsにより、時間のかかる定型業務の効率化が期待できます。ただし、ベンチマークの精度水準を考慮すると、AIは専門家の判断を補助する位置づけとして活用し、最終的な意思決定は人間が行う運用が現実的でしょう。金融業界におけるAI導入の方向性を考える上で、参考になる発表ではないでしょうか。

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