はじめに
本稿では、AIを日々の業務にどのように活用すれば生産性を高められるのか、具体的な手法を探ります。今回は、MicrosoftのCEOであるサティア・ナデラ氏が実際に日常業務で使用している5つのAIプロンプトを、その背景や効果的な活用法と共に詳しく解説します。
参考記事
- タイトル: Microsoft CEO Satya Nadella reveals the 5 AI prompts he uses that can ‘supercharge your everyday workflow’
- 発行元: Fortune
- 発行日: 2025年9月2日
- URL: https://fortune.com/2025/09/02/billionaire-microsoft-ceo-satya-nadella-reveals-ai-prompts-superchage-everyday-workflow-gpt-5-co-pilot-prompting-success/
要点
- MicrosoftのCEOサティア・ナデラ氏は、自身の業務効率を飛躍的に向上させるため、GPT-5を搭載したCopilotで5つの具体的なAIプロンプトを日常的に使用している。
- これらのプロンプトは、会議の準備、プロジェクトの進捗報告、時間管理の分析といった、極めて実用的なビジネスシーンを対象としている。
- AIの活用は、もはや技術者だけのものではなく、経営層を含むあらゆる職種で生産性向上のための重要なスキルである。
- 効果的なプロンプトを作成する鍵は、「AIに何をさせたいのかを明確かつ具体的に指示する」ことであり、AIとの対話を通じて精度を高めていく姿勢が求められる。
詳細解説
なぜ今、経営トップがAI活用法を公開するのか
AI技術が急速に進化する中で、その活用は一部の専門職から、あらゆるビジネスパーソンの基本的なスキルへと変わりつつあります。参考記事によれば、AIによって仕事が奪われるかもしれないという懸念は、若手社員だけでなく、CEOのような経営層にまで広がっているとされています。
このような時代背景の中、世界のトップリーダーたちはAIを脅威としてではなく、生産性を最大化するための強力なパートナーとして積極的に活用し始めています。ナデラ氏が自身のプロンプトを公開したことは、AIが日常業務に深く浸透し、具体的な「使い方」を学ぶことが重要であることを象徴しています。
サティア・ナデラ氏が実践する5つのプロンプト
ナデラ氏が自身のLinkedInで公開したプロンプトは、単なる情報の検索に留まらず、AIにデータ分析、要約、さらには予測まで行わせる、一歩進んだ活用法です。ここでは、各プロンプトの日本語訳と、その活用ポイントを解説します。
1. 会議前の情報収集を効率化するプロンプト
原文: “Based on my prior interactions with [/person], give me 5 things likely top of mind for our next meeting.”
日本語訳: 「[/人物名]との過去のやり取りに基づき、次回の会議で相手が最も気にしている可能性が高いことを5つ挙げてください。」
このプロンプトは、過去のメールやチャット、議事録などのデータをAIに分析させ、次回の会議で重要となる論点を予測させるものです。これにより、会議の準備時間を大幅に短縮し、相手の関心事に焦点を当てた、より質の高い議論が期待できます。
2. プロジェクトの進捗報告を自動生成するプロンプト
原文: “Draft a project update based on emails, chats, and all meetings in [/series]: KPIs vs. targets, wins/losses, risks, competitive moves, plus likely tough questions and answers.”
日本語訳: 「[/シリーズ]内のメール、チャット、全ての会議内容を基にプロジェクトの進捗報告書を下書きしてください。内容は、KPIと目標の比較、成功点と失敗点、リスク、競合の動き、そして想定される厳しい質問とそれに対する回答を含めてください。」
複数のコミュニケーションツールに散らばった情報を手作業でまとめるのは大変な労力です。このプロンプトは、関連情報すべてをAIに読み込ませ、網羅的な進捗報告書を自動で作成させます。特に「想定される厳しい質問と回答」まで含めることで、報告会やレビューに万全の体制で臨むことができます。
3. プロジェクトのリスクと成功確率を評価するプロンプト
原文: “Are we on track for the [Product] launch in November? Check eng progress, pilot program results, risks. Give me a probability.”
日本語訳: 「[製品名]の11月のローンチは計画通りに進んでいますか? エンジニアリングの進捗、パイロットプログラムの結果、リスクを確認し、成功確率を提示してください。」
これは、単なる現状報告ではなく、AIに未来の予測を求めるプロンプトです。関連データを多角的に分析させ、プロジェクトの成功確率を算出させることで、より客観的でデータに基づいた意思決定を支援します。
4. 自身の時間管理を分析・可視化するプロンプト
原文: “Review my calendar and email from the last month and create 5 to 7 buckets for projects I spend most time on, with % of time spent and short descriptions.”
日本語訳: 「先月の私のカレンダーとメールをレビューし、私が最も時間を費やしているプロジェクトを5〜7つのカテゴリーに分類してください。それぞれのカテゴリーに費やした時間の割合と、簡単な説明も付けてください。」
多忙なビジネスパーソンにとって、時間管理は永遠の課題です。このプロンプトは、自身の活動記録をAIに分析させ、何にどれだけ時間を使っているかを客観的に可視化するのに役立ちます。これにより、生産性向上のための具体的な改善点を見つけ出すことができます。
5. 特定の会議に特化した準備を行うプロンプト
原文: “Review [/select email] + prep me for the next meeting in [/series], based on past manager and team discussions.”
日本語訳: 「[/選択したメール]をレビューし、過去のマネージャーやチームとの議論内容を踏まえて、[/シリーズ]における次の会議の準備をしてください。」
1つ目のプロンプトと似ていますが、こちらは特定のメールを起点とすることで、よりテーマを絞った会議準備をAIに依頼するものです。重要なメールを受け取った直後などに活用することで、迅速かつ的確な対応が可能になります。
効果的なプロンプトを作成するためのヒント
AI「Claude」を開発したAnthropic社の専門家による、プロンプト作成のコツも参考になります。
- 明確な指示を出す: 最も重要なのは、AIにやってほしいことを具体的に、明確に伝えることです。「このタスクに詳しくない同僚が読んでも理解できる指示か?」を基準にすると、AIにも伝わりやすくなります。
- 対話を通じて改善する: 一度の指示で完璧な結果が得られなくても問題ありません。人間と会話するように、追加で指示を出したり、間違いを指摘したりすることで、AIの回答の精度は向上します。
- AIに尋ねてみる: 「このタスクをあなたに依頼する場合、どのようなプロンプトが最も効果的ですか?」とAI自身に尋ねてみるのも有効な手段です。AIは、自らが理解しやすい指示の形式を教えてくれます。
まとめ
本稿では、MicrosoftのCEOサティア・ナデラ氏が実践する5つのAIプロンプトをご紹介しました。これらのプロンプトからわかるように、AI活用の最前線は、日々の定型業務をいかに自動化し、より創造的で戦略的な活動に時間を割くかという点にあります。
紹介したプロンプトをそのまま使うだけでなく、ご自身の業務内容に合わせてカスタマイズし、試行錯誤を繰り返すことが、AIを真のパートナーとするための第一歩です。