はじめに
Amazon Adsが、広告クリエイティブ制作のプロセスを大きく変える可能性のある新しいツールを発表しました。このツールは、対話形式でAIとやり取りするだけで、プロ品質の広告を数時間で完成させることができるとされています。
本稿では、Amazon Adsが2025年9月17日に発表した「Amazon Ads launches new agentic AI tool that creates professional-quality ads」という記事をもとに、この新しいツールの概要、技術的な特徴、そして広告主にどのような価値をもたらすのかを解説します。
参考記事
- タイトル： Amazon Ads launches new agentic AI tool that creates professional-quality ads
- 発行元： Amazon Ads
- 発行日： 2025年9月17日
- URL： https://advertising.amazon.com/library/news/amazon-ads-agentic-ai-creative-tool
要点
- Amazon Adsは、対話形式で高品質な広告を生成する「エージェント的AIツール」をCreative Studio内で発表した。
- このAIは、製品リサーチ、コンセプト立案、絵コンテ作成、そして最終的なビデオ・ディスプレイ広告の制作まで、一連のクリエイティブ開発を自律的に実行する。
- Amazonが持つ膨大なリテールインサイト（顧客の購買データや行動シグナル）を活用し、ブランドや製品に最適化された広告を設計する。
- 従来、数万ドルの費用と数週間の時間が必要だったプロセスを、追加費用なしで数時間に短縮し、あらゆる規模の広告主が利用できる。
詳細解説
新ツールの概要：AIがクリエイティブパートナーに
今回発表された新しいツールは、Amazon Adsの「Creative Studio」内に搭載されたチャット機能です。広告主が「チャット」ボタンをクリックすると、対話型のAIアシスタントが起動します。このAIは単なる画像生成ツールではなく、広告キャンペーンの戦略パートナーとして機能します。
具体的には、以下のような一連の作業をAIが担います。
- リサーチと分析： 広告主の製品ページやブランドストア、ウェブサイトの情報を読み込み、Amazon内の顧客の行動データと組み合わせて、製品の強みやターゲット顧客を分析します。
- アイデアのブレインストーミング： 分析結果に基づき、広告のコンセプトやキャッチコピーを複数提案します。
- クリエイティブの具現化： 広告主がコンセプトを選択すると、AIは絵コンテ形式で具体的なシーンを設計し、画像やビデオスクリプトを生成します。
- 広告制作： 最終的に、アニメーション、音楽、ナレーションなどを追加し、ビデオ広告やディスプレイ広告として完成させます。
この全プロセスを通じて、広告主はAIと対話しながら、各ステップでフィードバックを与え、細かく編集・修正することが可能です。これにより、AIの効率性と人間の創造性を両立させています。
技術的な背景
この機能は、AmazonのクラウドコンピューティングサービスであるAWSの技術を基盤として構築されています。
特に、AIの頭脳部分には、Amazon Bedrockで利用可能な複数の基盤モデル（Amazon NovaやAnthropic社のClaudeなど）が活用されています。これらの高性能なAIモデルを協調して動作させることで、専門的なタスクを実行するエージェントとして機能させています。
広告主にもたらす価値
このツールは、Amazonに出品・出稿する事業者にとって、主に3つの大きな価値をもたらすとされています。
- コストと時間の劇的な削減
従来、質の高い広告クリエイティブを制作するには、専門の代理店に依頼する必要があり、多額の費用と長い時間が必要でした。このツールを使えば、追加費用なしで、そのプロセスを数時間に短縮できます。 - クリエイティブ制作の民主化
リソースが限られている中小企業や個人事業主でも、大企業と同じレベルの戦略的で高品質な広告クリエイティブにアクセスできるようになります。これにより、ブランド規模に関わらず、すべての広告主が平等な条件で競争できる環境が整います。 - データに基づいた効果的な広告
最大の強みは、Amazonの膨大なリテールインサイトを活用できる点です。どのような特徴が顧客の購買意欲を刺激するのか、どのようなビジュアルがターゲット層に響くのかをデータに基づいて判断し、広告クリエイティブに反映させます。これにより、単に見た目が良いだけでなく、実際の売上に繋がりやすい広告の制作が期待できます。
まとめ
今回Amazon Adsが発表した新しいAIツールは、単なる作業効率化ツールにとどまらず、広告制作のあり方そのものを変える可能性があります。特に、Amazonのプラットフォームが持つ膨大な購買データを背景に、戦略的な提案から実際のクリエイティブ制作までを一貫してサポートする点は、他のAIツールにはない大きな強みと言えるでしょう。
現在はベータ版とのことですが、将来的にはさらに改良が進むと述べられており、今後の展開を注視していく必要があります。
