[事例紹介] ZendeskがOpenAIで実現する、次世代カスタマーサポート:AIエージェントが解決へ導く未来

目次

はじめに

 近年、AI(人工知能)の進化は目覚ましく、様々な分野で活用が進んでいます。特にカスタマーサポートの領域では、顧客体験の向上と業務効率化の両面からAIへの期待が高まっています。

 本稿では、カスタマーサービスプラットフォーム大手のZendeskが、OpenAIの技術を活用して開発を進めている新しいAIエージェントについて解説します。従来のチャットボットの限界を超え、より自律的に顧客の問題解決を目指すこの取り組みは、カスタマーサポートの未来を大きく変える可能性を秘めています。

引用元情報

  • 記事タイトル: Zendesk uses OpenAI to build adaptive service agents focused on resolutions
  • 参照元URL: https://openai.com/index/zendesk/
  • 発行日: 2025年3月27日

・本稿中の画像に関しては特に明示がない場合、引用元記事より引用しております。
・記載されている情報は、投稿日までに確認された内容となります。正確な情報に関しては、各種公式HPを参照するようお願い致します。
・内容に関してはあくまで執筆者の認識であり、誤っている場合があります。引用元記事を確認するようお願い致します。

要点

  • ZendeskはOpenAIと協力し、自律的に対話を管理・実行できる新しいAIエージェントを開発・試験運用中である。
  • 従来の意図分類型ボットの限界(定型的な応答しかできない)を超え、顧客の変化する要求に柔軟に対応し、「解決」を重視する。
  • このAIエージェントにより、セットアップ時間が数日から数分に短縮され、自動化率80%を目指す。
  • Zendeskは、コスト、応答速度、品質を考慮し、最適なAIモデル(OpenAIのo3-miniなど)を選択・調整する厳格な内部テストプロセスを持つ。
  • 初期のフィードバックは良好で、より迅速なセットアップ、正確な応答、スムーズな顧客体験が報告されている。

詳細解説

従来のチャットボットとその限界

 これまで多くの企業で導入されてきたチャットボットは、「意図分類」という仕組みに基づいていました。これは、顧客からのメッセージに含まれるキーワードなどから「顧客が何をしたいのか(意図)」を予測し、あらかじめ用意された回答シナリオやワークフローを呼び出すというものです。

 例えば、「パスワードを忘れた」というメッセージに対して、「パスワード再設定ページはこちらです」という定型文とリンクを返す、といった具合です。

 この方法は、よくある質問(FAQ)のような単純で構造化されたやり取りには有効でした。しかし、顧客が途中で質問を変えたり、補足情報を求めたり、少し複雑な状況を説明したりすると、うまく対応できないという限界がありました。AIはあくまで事前に決められたシナリオに沿って応答するため、柔軟性に欠け、結局人間のオペレーターに対応を引き継ぐケースも少なくありませんでした。記事内でZendeskのCTO、Adrian McDermott氏が指摘するように、「メッセージ入力、応答出力」という一方向的なやり取りになりがちで、真の「問題解決」には至りにくい側面があったのです。

Zendeskが目指す「AIエージェント」とは?

 そこでZendeskがOpenAIの技術を用いて開発しているのが、「AIエージェント」と呼ばれる新しいタイプのAIです。これは単に定型文を返すだけでなく、会話全体を自律的に管理し、応答を計画・実行できる能力を持ちます。

 「エージェント」という言葉には「代理人」や「主体的に行動するもの」といった意味合いが含まれます。つまり、このAIエージェントは、単なる応答プログラムではなく、顧客の問題解決という目標達成のために、より能動的に、そして柔軟に思考・行動できる存在を目指しています。

 顧客が途中で質問を変えても、文脈を理解して自然に対応を続けたり、問題解決に必要な情報を聞き出したり、場合によっては関連部署への連携を示唆したりといった、より人間らしい、高度な対応が期待されます。

なぜOpenAIなのか? – 高度なAIモデルの活用

 このような高度なAIエージェントを実現するために、ZendeskはOpenAIの強力なAIモデルを活用しています。これらのモデルは、大量のテキストデータを学習しており、人間が使うような自然な言葉遣いや文脈理解能力に長けています。

 Zendeskは、単一のモデルに依存するのではなく、様々なユースケース(例えば、顧客の質問に関連する情報を社内文書から探し出すRAGタスクや、裏側で推論を行うタスクなど)ごとに応答速度(Latency)、コスト、品質(Quality)の観点から最適なAIモデルを厳選しています。記事では、OpenAIのo3-miniのような新しいモデルもテスト対象になっていると言及されています。

 驚くべきは、新しいモデルの評価、テスト、導入を24時間以内に行えるという、そのスピード感です。導入後も、解決率やAI応答の修正率、応答速度などの指標を監視し、継続的にパフォーマンスを追跡・改善しています。将来的には、機械学習の専門家でなくても、Zendeskのエンジニアリングチームが自由にモデルをテスト・導入できるセルフサービス基盤の展開も計画されています。

導入効果と目指す未来:「自動化率80%」

 この新しいAIエージェントプラットフォームは、現在一部の顧客で試験運用(パイロット運用)が行われています。Zendeskが目指しているのは、顧客が既存のシステムを大幅に作り変えることなく、スムーズにこの新しいAIを導入できるようにし、カスタマーサポート業務の自動化率を80%まで高めることです。

 これは、単にコスト削減を目指すだけでなく、人間オペレーターがより複雑で感情的な対応が求められる業務に集中できるようにするという狙いもあります。 

 初期のフィードバックでは、「セットアップ時間の短縮」「応答精度の向上」「チャネル(電話、チャット、メールなど)を横断したスムーズな顧客体験」といった肯定的な声が上がっているとのことです。2025年後半には、より広範な指標が公開される予定です。

まとめ

 本稿では、ZendeskがOpenAIの技術を活用して開発を進める、次世代のAIエージェントについて解説しました。従来の意図分類型ボットの限界を超え、顧客の問題解決に主眼を置いたこの新しいAIは、より柔軟で人間らしい対応を可能にし、カスタマーサポートの自動化を大きく前進させる可能性を秘めています。
 セットアップ時間の短縮や80%という高い自動化目標は、企業にとって大きなメリットとなるでしょう。同時に、私たち顧客にとっても、より迅速で的確なサポートを受けられるようになることが期待されます。
 AIがカスタマーサポートの現場でどのように進化し、私たちの体験をどう変えていくのか、今後の動向に注目していきたいと思います。

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