[ニュース解説]MetaとAppleが狙うAI検索「Perplexity」とは?次世代のGoogleになるか

目次

はじめに

 Perplexityは、従来の検索エンジンとは一線を画す「アンサーエンジン」として、情報の探し方を根本から変える可能性を秘めています。

 本稿では、現在シリコンバレーで大きな注目を集めているAIスタートアップ「Perplexity」について、米CNNの「What is Perplexity, the AI startup said to be catching Meta and Apple’s attention」という記事を基に、その実態と重要性を詳しく解説します。

引用元記事

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要点

  • AI検索スタートアップ「Perplexity」に対し、MetaとAppleが買収の関心を示していると報じられている。
  • Perplexityは、Web上の膨大な情報をAIが解析・要約し、出典を明記した上で直接的な「答え」を生成する「アンサーエンジン」である。これは、リンクの一覧を提示する従来の検索エンジンとは根本的に異なる。
  • 巨大テック企業は、GoogleやOpenAIが先行するAI分野で競争力を高めるため、優れたAI技術と人材の獲得に躍起になっており、Perplexityはその有力なターゲットと見なされている。
  • 一方で、PerplexityはBBCやウォール・ストリート・ジャーナルの親会社などから、コンテンツを無断で使用しているとして著作権侵害で訴えられるなど、法的な課題も抱えている。

詳細解説

Perplexityとは何か? – 検索の未来「アンサーエンジン」

 Perplexityは、2022年8月に設立されたAI企業が開発した、新しい形の検索ツールです。多くの人が日常的に利用するGoogle検索などが、入力されたキーワードに対して関連性の高いWebページの「リンク」を一覧で表示するのに対し、Perplexityはユーザーの質問に対して、AIがWeb上の情報を読み解き、要約した「答え」を文章で直接提供します。

 この仕組みは「アンサーエンジン」と呼ばれ、単に情報を探すだけでなく、その場で情報を理解・要約してくれる点に最大の特徴があります。さらに、生成された回答には必ず情報源となったWebページへのリンクが示されるため、ユーザーは情報の信頼性を確認したり、より深く掘り下げたりすることが容易になっています。

 サービスには無料版と、月額20ドルの有料版「Pro」があります。有料版では、より高度なAIモデルを利用できるほか、PDFなどのファイルをアップロードして内容について質問したり、旅行プランの作成を依頼したり、画像を生成したりと、単なる検索ツールの枠を超えた多機能なAIアシスタントとして活用できます。

なぜ巨大テック企業はPerplexityに注目するのか?

 AppleやMetaのような巨大企業が、設立から3年にも満たないスタートアップに熱視線を送る背景には、現在のAI業界における熾烈な覇権争いがあります。

 1. Appleの事情:AI戦略の遅れと「脱Google」への布石

 Appleは、AI分野においてGoogleやOpenAIといった競合他社に後れを取っていると見なされています。同社のAIアシスタント「Siri」の進化は遅く、新たなAI機能の発表も他社に比べて控えめです。

 また、同社は自社のWebブラウザ「Safari」のデフォルト検索エンジンとしてGoogleを採用するために、年間数十億ドルもの巨額の支払いを行っています。しかし、この契約は現在、米司法省による独占禁止法訴訟で厳しく精査されており、将来的に見直しを迫られる可能性があります。

 もしPerplexityを買収すれば、自社製品に強力なAI検索機能を統合し、AI分野での巻き返しを図ると同時に、Googleへの依存から脱却するための重要な一手を打つことができるのです。

 2. Metaの事情:AI人材の獲得とサービス体験の向上

 Meta(旧Facebook)のマーク・ザッカーバーグCEOは、AIを会社の未来にとって極めて重要な技術と位置づけ、トップクラスのAI研究者や技術者を獲得するために、数百万ドルもの報酬を提示するなど、熾烈な人材獲得競争を繰り広げています。

 同社は独自の高性能AIモデル「Llama」を開発するなど一定の成功を収めていますが、これを消費者が利用するサービスに落とし込む点では、まだ課題があると言われています。

 Perplexityの買収は、優秀なチームを丸ごと手に入れるだけでなく、その洗練された技術をInstagramやWhatsAppといった数十億人が利用する自社サービスに組み込み、全く新しいユーザー体験を提供するための起爆剤となり得ます。

Perplexityが直面する課題 – 避けられない著作権問題

 Perplexityの革新的な技術は、同時に大きな課題も抱えています。それは、AIが学習や回答生成の過程で利用するコンテンツの著作権の問題です。

 AIがWeb上の記事を要約して答えを提示するということは、ユーザーが元の記事を掲載しているWebサイトを訪れなくても情報を得られることを意味します。これにより、ニュースサイトなどのメディア企業は、広告収入の源であるサイトへのアクセス(トラフィック)を奪われることになります。

 実際に、英国放送協会(BBC)や、ウォール・ストリート・ジャーナルの親会社であるダウ・ジョーンズなどは、Perplexityが自社のコンテンツを許可なく盗用し、ビジネスに損害を与えているとして、法的措置を検討したり、実際に提訴したりしています。

 この問題はPerplexity一社だけのものではなく、生成AIという技術全体が直面している根源的な課題であり、今後の技術の発展と社会実装における最大の論点の一つとなっています。

まとめ

 本稿では、AI検索の新たな地平を切り開くスタートアップ「Perplexity」について解説しました。同社が提供する「アンサーエンジン」は、私たちの情報の探し方を大きく変えるポテンシャルを秘めています。

 AppleやMetaが示す強い関心は、AIがスマートフォンやインターネットそのものに匹敵する、次世代の技術覇権を左右する重要分野であることを物語っています。一方で、Perplexityが直面する著作権問題は、技術革新が既存の社会システムやビジネスモデルといかにして共存していくべきかという、私たち全員に投げかけられた問いでもあります。

 Perplexityの今後の動向は、単なる一企業の成功物語にとどまらず、未来のテクノロジーと社会のあり方を占う試金石となるでしょう。

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