［ニュース解説］米国エネルギー省、AI・データセンター開発に向け国内16ヶ所の連邦政府保有地を特定

2025-04-052025-04-08

はじめに

　近年、目覚ましい発展を遂げる人工知能（AI）技術は、社会のあらゆる分野に変革をもたらす可能性を秘めています。しかし、その進化を支えるためには、膨大な計算能力を提供するデータセンターと、それを稼働させるための安定したエネルギー供給が不可欠です。このような背景の中、米国エネルギー省（DOE）は、AI分野における米国のリーダーシップを確固たるものにするため、連邦政府が保有する土地を活用し、データセンターと新たなエネルギーインフラを併設する計画を発表しました。本稿では、この重要な発表内容について、米国エネルギー省が発表した「DOE Identifies 16 Federal Sites Across the Country for Data Center and AI Infrastructure Development」を基に分かりやすく解説します。

引用元:

記事タイトル: DOE Identifies 16 Federal Sites Across the Country for Data Center and AI Infrastructure Development
参照元URL: https://www.energy.gov/articles/doe-identifies-16-federal-sites-across-country-data-center-and-ai-infrastructure
発行日: 2025年4月3日

要点

米国エネルギー省（DOE）は、AIインフラ開発のため、国内16ヶ所の連邦政府保有地を候補地として特定しました。
これらの土地は、データセンターの迅速な建設に適しており、既存のエネルギーインフラや、原子力を含む新たな発電設備の許認可を迅速化できる可能性があります。
この計画は、データセンターとエネルギーインフラを併設することで、AI開発に必要な計算資源とエネルギー供給を効率的に確保し、エネルギーコストの削減も目指すものです。
DOEは情報提供依頼（RFI）を通じて、データセンター事業者やエネルギー開発者などから広く意見を募り、官民連携を推進します。
目標として、2027年末までの運用開始を目指しています。

詳細解説

　AI、特に大規模言語モデル（LLM）などの開発・運用には、膨大な量のデータを処理するための高性能なコンピューター群、すなわちデータセンターが必要です。そして、これらのデータセンターは大量の電力を消費します。AI技術が急速に発展するにつれて、データセンターの需要とそれに伴う電力需要は世界的に急増しています。

　今回、米国エネルギー省（DOE）が発表した計画は、この課題に対する国家レベルでの戦略的な一手と言えます。具体的には、DOEはAIインフラ開発を加速するため、連邦政府が保有する土地の活用可能性を検討し始めました。その第一歩として、データセンター建設に特に適した16ヶ所の候補地が特定されました。これらの土地は、単に広大なスペースがあるだけでなく、既存のエネルギーインフラが整っている点、さらに原子力発電所を含む新しいエネルギー生成設備の許認可プロセスを迅速に進められる可能性がある点が大きな特徴です。

　この計画の核心は、データセンターとエネルギーインフラ（特に発電施設）を同じ場所に設置（併設）するという点にあります。これにより、データセンターが必要とする大量の電力を、より効率的かつ安定的に、そして潜在的にはより低コストで供給することが可能になります。特に、原子力のようなクリーンで大規模なエネルギー源の活用も視野に入れている点は注目に値します。

　この取り組みは、トランプ大統領（当時）による「AIにおける米国のリーダーシップへの障壁除去」および「米国のエネルギー解放」に関する大統領令に沿ったものであり、AIとエネルギーという国家戦略上重要な二つの分野を同時に強化しようとする意図がうかがえます。エネルギー省長官クリス・ライト氏は、「AI覇権をめぐる世界的な競争は、次のマンハッタン計画だ」と述べ、この計画への強い意気込みを示しています。

　DOEは現在、情報提供依頼（RFI: Request for Information）を公開し、データセンター開発業者、エネルギー開発業者、そして広く一般から、この計画を推進するための意見や情報を求めています。収集された情報は、開発計画の策定、官民パートナーシップの促進、そして2027年末までの運用開始という目標達成のために活用されます。

　さらに、これらの候補地は、DOEが誇る世界クラスの研究施設に隣接している場合もあり、データセンターの運用に必要な電力システムの設計や、次世代データセンターハードウェアの開発において、産業界と研究機関との連携を深める機会も提供します。

まとめ

　米国エネルギー省による今回の発表は、AI時代の到来を見据え、その基盤となるデータセンターとエネルギー供給の問題に国家として取り組む姿勢を示すものです。連邦政府保有地の活用、エネルギーインフラとの併設、許認可の迅速化、そして官民連携の推進といったアプローチは、AI分野における米国の競争力をさらに強化する可能性があります。特に、データセンターの電力需要という大きな課題に対し、原子力を含む多様なエネルギー源との連携を模索する点は、今後のエネルギー政策やAIインフラ整備のあり方を考える上で、重要な示唆を与えてくれるでしょう。本稿で紹介した計画が、2027年末の運用開始という目標に向けてどのように進展していくのか、引き続き注目されます。