はじめに
OpenAIが2025年12月8日、Instacartとの提携を深化させ、ChatGPT内で食料品の検索から購入、決済まで完結できる新機能を発表しました。本稿では、この統合ショッピング体験の仕組みと、両社の長期的なパートナーシップの背景について解説します。
参考記事
- タイトル: Instacart and OpenAI partner on AI shopping experiences
- 発行元: OpenAI
- 発行日: 2025年12月8日
- URL: https://openai.com/news/instacart-and-openai-partner-on-ai-shopping-experiences
要点
- ChatGPT内でInstacartアプリを通じて食料品の検索、カート作成、決済が完結できる統合体験が実現した
- OpenAIのAgentic Commerce Protocolを活用した初のチェックアウト体験であり、タブ切り替えなしで購入が完了する
- InstacartはOpenAIのOperatorリサーチプレビューへの初期貢献者であり、長年のパートナーシップを持つ
- Instacartは内部業務でChatGPT EnterpriseやCodexを活用し、顧客体験の向上に取り組んでいる
詳細解説
ChatGPT内で完結するショッピング体験
OpenAIによれば、今回の統合により、ユーザーはChatGPTとの会話の中で食料品の購入から配達まで完結できます。たとえば「Instacartでアップルパイの材料を探して」と依頼すると、ChatGPTがInstacartアプリを表示し、適切な商品を提案します。
ユーザーがInstacartアカウントでサインインすると、OpenAIのモデルが地元の小売店から適切な商品を見つけ、レビュー可能なカートを組み立てます。その後、ChatGPT内でセキュアに決済が完了し、Instacartのプラットフォームを通じて配達が手配される仕組みです。
この統合ショッピング体験は、OpenAIのAgentic Commerce Protocolを基盤としており、ChatGPT内でチェックアウトを提供する初のアプリとなりました。Agentic Commerce Protocolは、AIエージェントが実世界のサービスに接続し、ユーザーに代わって取引を実行する仕組みを提供する技術と考えられます。
InstacartのCTO談話と技術的背景
InstacartのCTOであるAnirban Kundu氏は、「InstacartとChatGPTは、AIを活用したショッピングの可能性を再定義しています」と述べ、この統合が日常生活に不可欠な食料品購入にインテリジェントでリアルタイムなサポートをもたらすと説明しています。
OpenAIのChatGPT担当VP、Nick Turley氏も「食事の計画からチェックアウトまでを1つの会話で完結できます」とコメントし、AIが実世界のサービスと直接接続することで、日常生活の時間と労力を節約するビジョンを示しました。
技術的には、Instacartのリアルタイムな食料品ネットワークとフルフィルメント機能が、OpenAIの最先端モデルと組み合わさることで実現しています。この統合により、ユーザーはタブを切り替えることなく、会話から購入へとシームレスに移行できます。
長年のパートナーシップの深化
今回の発表は、両社の長期的な協力関係の延長線上にあります。OpenAIによれば、InstacartはOperatorリサーチプレビューへの最初期の貢献者の1つであり、技術が実世界のニーズに対応し、既存の規範を尊重するよう貴重なフィードバックを提供してきました。
Operatorは、OpenAIが開発しているウェブブラウジングやタスク実行を自律的に行うAIエージェント技術です。Instacartがこの初期段階から関与していることは、同社がAI駆動のコマース体験の開発に積極的に取り組んでいることを示しています。
また、InstacartはOpenAI APIを活用して、顧客が時間を節約し、インスピレーションを得て、パーソナライズされた推奨を通じて自信を持って食品関連の決定を下せる体験を提供しています。さらに、社内業務ではChatGPT Enterpriseを使用して従業員がより速く、よりスマートで、よりパーソナライズされた顧客体験を構築できるようにしており、OpenAIのCodexを活用した内部コーディングエージェントも運用しています。
企業パートナーシップの拡大
このパートナーシップの更新は、OpenAIが世界最大級の確立された企業との協力を拡大する取り組みの一環です。OpenAIによれば、Accenture、Walmart、Salesforce、PayPal、Intuit、Target、Thermo Fisher、BNY、Morgan Stanley、BBVAなど、多数の大手企業とパートナーシップを結んでいます。
これらの提携は、AIを活用した実世界のサービス統合が、さまざまな業界で進展していることを示しています。特に小売、金融、エンタープライズソフトウェアの分野で、AIエージェントが実際の商取引や業務プロセスに組み込まれる動きが加速していると考えられます。
まとめ
OpenAIとInstacartの統合により、ChatGPTでの会話から食料品の購入まで、シームレスな体験が実現しました。Agentic Commerce Protocolを基盤とした初のチェックアウト体験として、AIが実世界のサービスと直接接続する新たな可能性を示しています。両社の長年のパートナーシップと、Operatorなどの次世代技術への協力が、今後のAI駆動コマースの発展にどのような影響を与えるか注目されます。
