[AIツール利用者向け]OpenAI、教育システムへのAI導入を支援する「Education for Countries」を発表――エストニアなど8カ国・地域が参加

目次

はじめに

 OpenAIが2026年1月21日、各国政府や大学と連携して教育システムにAIを組み込む新プログラム「Education for Countries」を発表しました。本稿では、この発表内容をもとに、プログラムの概要、参加国の取り組み、教育分野におけるAI活用の可能性について解説します。

参考記事

要点

  • OpenAIは「Education for Countries」プログラムを通じて、各国政府や大学コンソーシアムと協力し、教育システムにAI技術を導入する取り組みを開始した
  • 第1弾の参加国・地域は、エストニア、ギリシャ、イタリア、ヨルダン、カザフスタン、スロバキア、トリニダード・トバゴ、UAEの8カ国・地域である
  • プログラムは、ChatGPT EduなどのAIツール提供、学習成果の研究、OpenAI認定とトレーニング、グローバルネットワークの4つの柱で構成される
  • エストニアでは既にChatGPT Eduが全国展開され、初年度に3万人以上の学生、教育者、研究者が利用している
  • 世界経済フォーラムの調査によれば、2030年までに労働者が依存する中核スキルの約40%がAI主導で変化すると予測されている

詳細解説

AIの「能力オーバーハング」と教育の役割

 OpenAIによれば、現在「能力オーバーハング」と呼ばれる現象が顕在化しています。これは、AIツールができることと、人々が実際にそれをどう使っているかの間にあるギャップを指す概念です。

 技術史を振り返ると、最大の経済的利益は発明そのものからではなく、新しい能力を大規模な日常利用に転換することから生まれてきました。AIについても同様で、能力の向上だけでなく、その活用の普及が重要と考えられます。

 教育システムは、このギャップを埋める重要な経路です。世界経済フォーラムの調査では、2030年までに労働者が依存する中核スキルの約40%がAI主導で変化すると予測されています。学校や大学の基盤インフラにAIツール、トレーニング、研究を組み込むことで、教育システムはこうした変化と並行して進化し、学生がAIと共存する世界で活躍できるよう準備できると思います。

Education for Countriesプログラムの4つの柱

 OpenAIは「Education for Countries」を、既存の「OpenAI for Countries」イニシアチブの新たな柱として位置づけています。このプログラムは、各国政府や大学コンソーシアムと協力し、教育システムにAIを導入して学習の個別化、管理業務の削減、学生の労働力準備を実現することを目指しています。

 プログラムは以下の4つの要素で構成されます。

 AIツール提供では、ChatGPT Edu、GPT-5.2、スタディモード、キャンバスへのアクセスが提供されます。これらは各国の学習優先事項に合わせてカスタマイズ可能です。ChatGPT Eduは教育機関向けに最適化されたバージョンで、GPT-5.2は最新のモデルを指します。スタディモードは学習に特化した機能、キャンバスは協働作業を支援する機能と考えられます。

 学習成果研究では、AIが学習をどのように支援し、教師の生産性にどう影響するかを理解するための大規模な国家研究イニシアチブでの協力が行われます。この研究結果は、各国の政策立案、労働力開発、将来の技術設計に活用されることが期待されます。

 OpenAI認定とトレーニングでは、教育省や教育システムと連携したカスタマイズされたトレーニングが提供されます。OpenAI AcademyからChatGPTベースの認定まで、教育者と学生に各国の労働力優先事項に沿った実践的なAIスキルが提供されます。

 グローバルネットワークでは、政府、研究者、教育リーダーが知見を共有し、成功事例を紹介し、教育におけるAIへの責任あるアプローチを形成する成長するネットワークが構築されます。

参加国の取り組み――エストニアの先行事例

 第1弾の参加国・地域は、エストニア、ギリシャ、イタリアの大学学長会議(CRUI)、ヨルダン、カザフスタン、スロバキア、トリニダード・トバゴ、UAEの8カ国・地域です。

 特にエストニアは先行事例として注目されます。同国では既にChatGPT Eduが全国の公立大学と中等学校に展開されており、初年度に3万人以上の学生、教育者、研究者に利用されています。

 さらに、タルトゥ大学とスタンフォード大学との共同による大規模研究も進行中です。この研究では、2万人の学生を対象に、AIが時間経過とともに学習成果にどのように影響するかを測定する縦断的研究が行われています。

 エストニアのAI LeapのCEO、Ivo Visak氏は「AIは学生が何を知っているかだけでなく、どのように学ぶかを強化すべきです」とコメントしています。同国のアプローチは、Alar Karis大統領の呼びかけによる「AIを最も多く使うのではなく、最もスマートに使う」という方針に基づいており、教室におけるAIの利点とリスクの両方を研究することを重視しています。

段階的な導入アプローチと若年層への配慮

 OpenAIによれば、AIが大規模に導入される際、通常は段階的なアプローチが取られます。まず、教育者が教室でAIの使用をリードするために必要なツールとトレーニングを提供することから始まります。

 高等教育では、ChatGPT Eduは既に学生に利用可能です。高校では、学生のアクセスは、地域のリーダーと緊密に協力して開発された小規模なパイロットプログラムから始まり、安全性と地域のカリキュラムとの整合性を確保します。

 これらのパイロットプログラムは、ChatGPTを使用する若者への保護を強化するOpenAIの継続的な取り組みと並行して実施されます。具体的には、年齢に応じたモデル動作の改善や、Common Sense Mediaのような信頼できるパートナーと共同で教育者向けのAIリテラシーコンテンツを開発することが含まれます。

 これは若年層へのAI導入において慎重なアプローチが必要であることを示していると考えられます。技術的な可能性だけでなく、発達段階に応じた適切な利用方法の確立が重要と思います。

より広範な教育支援の取り組みとの関連

 OpenAIは、このプログラムが同社のミッション「高度なAIがすべての人に利益をもたらすことを保証する」の一環であると位置づけています。AIで難しい問題を解決することで、より多くの科学的発見、より良い医療と教育、生産性の向上を通じて、最も多くの人々に利益をもたらすことができるという考えです。

 Education for Countriesプログラムは、AIが経済的機会を拡大することを保証する取り組みの一部でもあります。OpenAI認定プログラムは、個人が基礎的なAIスキルを構築し、職場でAIを効果的に使用する能力について雇用主に明確なシグナルを提供します。

 また、このプログラムは、AIを活用した学習支援に対するOpenAIの継続的なコミットメントの一歩でもあります。大学間でAIと学習に関する研究を加速するNextGenAIプログラム、ChatGPT Eduやスタディモードのような教育におけるAIの使用を強化する製品、米国の全米教員連盟(AFT)とのパートナーシップのような教師主導のAI導入を支援する取り組みを補完するものです。

 次回のコホートは2026年後半に発表される予定で、参加を希望する国や機関はOpenAIチームに連絡することができます。

まとめ

 OpenAIの「Education for Countries」プログラムは、8カ国・地域との協力から始まり、教育システムへのAI統合を段階的に進める取り組みです。エストニアの先行事例では3万人以上が利用し、縦断的研究も実施されています。AIツール提供、研究、トレーニング、ネットワーク構築の4つの柱を通じて、学習の個別化と労働力準備を目指しています。2030年に向けて変化する労働市場に対応する教育の在り方として、今後の展開が注目されます。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次