はじめに
OpenAIのCFO(最高財務責任者)Sarah Friarが2026年1月18日、同社のビジネスモデルと成長戦略を詳述した記事を公開しました。ChatGPTの急速な普及を背景に、コンピュートリソースへの投資と収益成長の強い相関関係、そして「インテリジェンスの価値に応じてスケールする」というビジネス原則について説明しています。本稿では、この発表内容をもとに、OpenAIの収益構造と今後の展開について解説します。
参考記事
- タイトル: A business that scales with the value of intelligence
- 著者: Sarah Friar, CFO, OpenAI
- 発行元: OpenAI
- 発行日: 2026年1月18日
- URL: https://openai.com/index/a-business-that-scales-with-the-value-of-intelligence/
要点
- ChatGPTは単なる実験ツールから、個人や企業の日常業務に不可欠なインフラへと進化した
- OpenAIの収益は2023年の20億ドルから2025年には200億ドル超へと、年間3倍のペースで成長している
- コンピュートリソース(計算資源)の拡大が収益成長と直接的に連動しており、2023年の0.2GWから2025年には1.9GWへと増加した
- ビジネスモデルは「インテリジェンスが提供する価値に応じてスケールする」という原則に基づき、サブスクリプション、API、広告・コマースの多層構造となっている
- 2026年の焦点は、AIの実践的採用を加速させること、特に医療、科学、企業分野での展開である
詳細解説
ChatGPTの普及と実用化の進展
OpenAIによれば、ChatGPTは当初、研究プレビューとして公開されましたが、予想を超える規模での採用と深い利用が見られたとのことです。学生が深夜の宿題に行き詰まった際の解決手段として使い始め、保護者が旅行計画や予算管理に活用し、ライターがブランクページを乗り越えるツールとして使用するなど、人々の生活に組み込まれていきました。
さらに、健康症状の理解、医師の診察準備、複雑な意思決定のサポートなど、人生の重要な局面でも使われるようになったと説明されています。その後、このレバレッジが職場にも持ち込まれ、会議前の資料精査、スプレッドシートの再確認、顧客メールの文面調整といった小さな用途から始まり、エンジニアのコード推論、マーケターのキャンペーン設計、財務チームのシナリオモデリング、マネージャーの難しい会話の準備など、日常業務の一部へと変化していったとされています。
「好奇心のためのツール」から「人々が実際の仕事を成し遂げるために頼るインフラ」へという転換が、OpenAIのビジネス構築の中心にあると位置づけられています。OpenAIは自身を「研究・展開企業」と定義し、インテリジェンスの進歩と、個人・企業・国家による実際の採用・利用との距離を縮めることを使命としていると述べています。
ビジネスモデルの基本原則
OpenAIは、「ビジネスモデルはインテリジェンスが提供する価値に応じてスケールすべき」という原則を一貫して適用してきたと説明しています。
具体的には、人々がより高い能力と信頼性を求めるようになると、消費者向けサブスクリプションを導入しました。AIがチームやワークフローに組み込まれると、職場向けサブスクリプションを作成し、実際に行われた仕事に応じてコストがスケールする使用量ベースの価格設定を追加したとされています。また、開発者や企業がAPI経由でインテリジェンスを組み込めるプラットフォームビジネスも構築し、支出は提供される成果に直接比例する形になっていると述べています。
最近では、この原則をコマース領域にも適用しているとのことです。人々はChatGPTに質問するだけでなく、次に何をすべきか、何を買うべきか、どこに行くべきか、どの選択肢を選ぶべきかを決定するために使用しています。探索から行動への移行を支援することで、ユーザーと彼らにサービスを提供するパートナーの両方に価値を創出すると説明されています。広告も同様の考え方で、人々が意思決定に近い状態にあるとき、関連性のある選択肢は明確にラベル付けされ、真に有用である限り、実際の価値を持つとされています。
すべての経路において、「収益化は体験にネイティブであるべきで、価値を追加しないなら、それは存在すべきではない」という基準が適用されていると強調されています。
コンピュートリソースと収益の強い相関
OpenAIは、過去3年間の顧客サービス能力(収益で測定)が、利用可能なコンピュートリソースと直接的に連動していると明らかにしています。
コンピュートは年間3倍のペースで成長し、2023年から2025年にかけて9.5倍に拡大しました。具体的には、2023年に0.2GW(ギガワット)、2024年に0.6GW、2025年には約1.9GWとなっています。収益も同じ曲線をたどり、年間3倍成長で、2023年から2025年にかけて10倍になりました。2023年の年換算収益(ARR)は20億ドル、2024年は60億ドル、2025年は200億ドル超とされています。
OpenAIはこれを「このスケールでかつてない成長」と表現し、これらの期間により多くのコンピュートがあれば、顧客採用と収益化がより速く進んでいたと確信していると述べています。
AI業界において、コンピュートは最も希少なリソースと位置づけられています。3年前、OpenAIは単一のコンピュートプロバイダーに依存していましたが、現在は多様化されたエコシステム全体のプロバイダーと協力していると説明されています。この転換により、レジリエンス(回復力)と、決定的に重要なコンピュート確実性がもたらされるとのことです。アクセスがスケール能力を定義する市場において、容量を計画し、資金調達し、展開することが可能になったと述べられています。
コンピュートを固定的な制約から、積極的に管理されるポートフォリオへと転換したことで、能力が最も重要なときはプレミアムハードウェアでフロンティアモデルを訓練し、効率が純粋なスケールより重要なときは低コストのインフラストラクチャで大量のワークロードを処理できるようになったとされています。その結果、レイテンシが低下し、スループットが向上し、百万トークンあたり数セント単位のコストで有用なインテリジェンスを提供できるようになり、エリート的なユースケースだけでなく、日常的なワークフローでもAIが実用的になっていると説明されています。
プロダクトプラットフォームと将来展望
このコンピュートレイヤーの上には、テキスト、画像、音声、コード、APIにまたがるプロダクトプラットフォームが存在すると説明されています。個人と組織がこれを使用して、より効果的に考え、創造し、運営しているとのことです。
次の段階は、継続的に実行され、時間をかけてコンテキストを保持し、ツール間でアクションを実行するエージェントとワークフロー自動化であると述べられています。個人にとっては、プロジェクトを管理し、計画を調整し、タスクを実行するAIを意味し、組織にとっては、ナレッジワークのための運営レイヤーになると説明されています。
これらのシステムが新奇性から習慣へと移行するにつれて、使用がより深く、より持続的になり、その予測可能性がプラットフォームの経済性を強化し、長期投資を支えると考えられています。
2026年の焦点:実践的採用の加速
OpenAIの2026年の焦点は、実践的採用の加速に設定されていると明らかにされています。優先事項は、AIが現在可能にしていることと、人々、企業、国家が日常的にそれをどのように使用しているかとの間のギャップを埋めることです。
機会は大きく即座のものであり、特に医療、科学、企業分野において、より優れたインテリジェンスが直接的により良い成果につながるとされています。
インフラストラクチャは提供できるものを拡大し、イノベーションはインテリジェンスができることを拡大し、採用はそれを使用できる人を拡大し、収益は次の飛躍に資金を提供するという好循環が説明されています。これがインテリジェンスがスケールし、グローバル経済の基盤となる方法であると述べられています。
この発表からは、OpenAIが単なる技術開発企業ではなく、ビジネスモデルと成長戦略を明確に持った企業として進化している様子が伺えます。コンピュートリソースへの大規模投資と収益の相関を公開することで、投資家や顧客に対する透明性を示すとともに、AI産業全体の成長に必要なインフラ投資の重要性を強調していると考えられます。
また、サブスクリプション、API、広告・コマースという多層的な収益モデルは、さまざまなユーザー層と利用パターンに対応する柔軟性を持っており、今後のさらなる成長を支える基盤になると思われます。ただし、広告やコマース機能の導入については、ユーザー体験への影響や、OpenAIが掲げる「価値を追加しない収益化は行わない」という原則がどのように実装されるのか、注視していく必要がありそうです。
まとめ
OpenAIは過去3年間で年間3倍というペースで成長し、2025年には年換算収益200億ドル超を達成しました。この成長の背景には、コンピュートリソースへの積極的な投資と、「インテリジェンスの価値に応じてスケールする」という明確なビジネス原則があります。2026年は実践的採用の加速に焦点を当て、特に医療、科学、企業分野での展開を進めるとされています。AIがインフラとして定着する過程で、どのような新しいビジネスモデルや価値創出が生まれるのか、引き続き注目していきたいところです。
