[ニュース解説]MetaがAIチャットボット向けにニュース各社と提携、リアルタイム情報提供を強化

目次

はじめに

 Meta(旧Facebook)が2025年12月5日、USA Today、CNN、Fox Newsなど複数のニュースパブリッシャーとAIデータ利用契約を締結したことを発表しました。Meta AIチャットボットでリアルタイムのニュース情報を提供するための取り組みで、同社のAI競争力強化の一環と見られます。本稿では、この発表内容をもとに、契約の詳細と背景について解説します。

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要点

  • MetaはUSA Today、People Inc.、CNN、Fox News、The Daily Caller、Washington Examiner、Le Mondeなど複数のニュースパブリッシャーと複数年のAIデータ利用契約を締結した
  • これらの契約により、Meta AIチャットボットがリアルタイムのニュース情報を提供し、パブリッシャーのウェブサイトへリンクする仕組みとなる
  • Metaは数年前にニュースパブリッシャーへの報酬支払いを停止していたが、AI投資の一環として報酬支払いを再開した
  • Meta AIチャットボットはFacebook、Instagram、WhatsApp、Messengerの検索・メッセージ機能に統合されている
  • 保守系メディアとの提携は、過去の保守派検閲疑惑への配慮も背景にあると考えられる

詳細解説

契約の概要とパートナー企業

 Metaによれば、今回の契約はUSA Today、People Inc.、CNN、Fox News、The Daily Caller、Washington Examiner、フランスのLe Mondeなど、幅広いジャンルと政治的スタンスのニュースパブリッシャーを対象としています。これらは複数年契約で、パブリッシャーはコンテンツ利用に対して報酬を受け取ります。

 Axiosによれば、これらの契約は以前発表されたReuters社との契約と同様の形式で、グローバルニュース、エンターテインメント、ライフスタイルにわたる幅広い検証済みコンテンツをユーザーに提供することを目的としています。複数の情報源から多様な視点を提供する体制は、AI情報の信頼性確保において重要な要素と考えられます。

Meta AIチャットボットでの活用方法

 ユーザーがMeta AIチャットボットにリアルタイムのニュース回答を必要とする質問をすると、チャットボットは情報源に関する情報を提供するだけでなく、パブリッシャーのウェブサイト上の記事へリンクします。このチャットボットはFacebook、Instagram、WhatsApp、Messengerの検索機能とメッセージ機能に統合されており、各プラットフォームで利用可能です。

 この仕組みでは、AI回答の透明性を確保しつつ、元記事へのトラフィックも生み出す設計となっています。生成AIによる情報提供において、情報源の明示とオリジナルコンテンツへの誘導は、パブリッシャーとの共存を図る上で重要な設計と言えます。

Metaのニュース戦略の変遷

 Axiosによれば、Metaは数年前にニュースパブリッシャーへの報酬支払いを停止していましたが、検証済みニュース情報へのリアルタイムアクセスを必要とするAIチャットツールへの投資拡大に伴い、編集コンテンツへの支払いを再開しました。

 具体的には、Metaは2024年に米国でNews Tabを終了し、2022年には収益性の高いニュースパブリッシャー支払いプログラムを終了していました。一方で、Facebookなどのプラットフォームは2022年頃からニュース記事共有のハブではなく、バイラル動画コンテンツを重視する方向へシフトしています。AI時代においては、従来のソーシャルメディアとは異なる形でのニュース活用が進んでいると考えられます。

保守系メディアとの提携の背景

 Axiosによれば、今回Fox News、The Daily Caller、Washington Examinerといった保守系ニュース組織と提携したことは注目に値します。これは、Metaがニュースパートナーシップの決定において複雑な歴史を持つためです。

 2016年、Facebookはトレンディングトピック機能で保守的な記事を検閲しているとの疑惑を受けました。同社はこれを否定しましたが、この疑惑をきっかけに、テックジャイアントが保守派の声に対して偏向しているとの共和党からの精査が何年も続きました。2019年にNews Tabを立ち上げた際には、Breitbartなどの保守系メディアも情報源として含めていました。

 今回の幅広い政治的スペクトラムのパートナー選定は、こうした過去の経緯を踏まえた配慮と考えられます。

AI競争における位置づけ

 Reutersによれば、この動きはAIサービス市場での競争が激化する中、より多くのユーザーをMetaのAIサービスに引き付けることを目的としています。競合他社もAI機能強化のためにコンテンツライセンス契約に多額の投資を行っています。

 また、Reutersは、MetaのLlama 4モデルが不評だった後、同社がAI競争で存在感を維持しようと奮闘していると報じています。数十億ドルをAI取り組みに投じる一方、メタバース構想では予算削減を検討しているとも伝えられており、AI分野への注力姿勢が窺えます。

まとめ

 MetaはAIチャットボットの競争力強化のため、複数のニュースパブリッシャーと提携し、リアルタイムで検証済みのニュース情報を提供する体制を構築しました。ソーシャルメディアとしてのニュース配信から撤退する一方、AI時代に適した形でのニュース活用を進めており、今後さらにパートナー拡大と新機能開発を計画しています。

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