はじめに
本稿では、Googleの最新かつ高速なマルチモーダルモデルである「Gemini 2.5 Flash Image」の能力を最大限に引き出すためのプロンプト作成方法について、Google Developers Blogで公開された「How to prompt Gemini 2.5 Flash Image Generation for the best results」という記事を元に、網羅的に解説します。単にテキストから画像を生成するだけでなく、画像の編集や複数画像の合成など、その高度な機能を使いこなすための具体的なテクニックを、豊富な実例とテンプレートを交えて紹介します。
参考記事
- タイトル: How to prompt Gemini 2.5 Flash Image Generation for the best results
- 発行元: Google Developers Blog
- 発行日: 2025年8月28日
- URL: https://developers.googleblog.com/ja/how-to-prompt-gemini-2-5-flash-image-generation-for-the-best-results/
要点
- Gemini 2.5 Flash Imageは、テキストと画像を統合的に処理するためにゼロから訓練された、ネイティブなマルチモーダルモデルである。
- 単なる画像生成(Text-to-image)だけでなく、既存画像の編集(Image + text-to-image)、複数画像の合成(Multi-image to image)、対話を通じた反復的な修正、画像内へのテキスト描画など、多彩な機能を持つ。
- 高品質な画像を生成するための最も重要な原則は、単語を羅列するのではなく、具体的なシーンを物語のように文章で記述することである。
- 写真のようなリアルな画像から、特定のスタイルのイラスト、ロゴ、製品モックアップまで、目的に応じたプロンプトの型(テンプレート)を活用することで、より意図に近い結果を得ることができる。
詳細解説
Gemini 2.5 Flash Imageとは?
Gemini 2.5 Flash Imageは、テキストと画像を単一の統合されたステップで処理するように設計された、Googleの最新画像生成モデルです。多くのモデルがテキストの指示を理解してから画像を生成するという別々のステップを踏むのに対し、このモデルは最初からテキストと画像を一緒に学習しています。これにより、両者の関係性をより深く理解し、単なる画像生成に留まらない高度な機能を実現しています。
主な機能は以下の通りです。
- テキストから画像を生成(Text-to-image): シンプルまたは複雑なテキスト記述から高品質な画像を生成します。
- 画像とテキストで画像を編集(Image + text-to-image): 元となる画像とテキストの指示を使い、要素の追加、削除、変更、スタイルの変換などを行います。
- 複数画像から画像を生成(Multi-image to image): 複数の入力画像を組み合わせて新しいシーンを構成したり、ある画像のスタイルを別の画像に適用したりします。
- 反復的な修正(Iterative refinement): モデルと対話するように複数回のやり取りを行い、画像を段階的に修正していきます。
- テキストのレンダリング(Text rendering): ロゴやポスターなどに適した、クリアで配置の整ったテキストを画像内に生成します。
基本原則:キーワードではなく「シーン」を記述する
このモデルから最良の結果を得るための最も重要な考え方は、「キーワードを並べるのではなく、シーンを描写する」ことです。モデルは言語を深く理解しているため、物語のような記述的な文章の方が、単語の羅列よりも遥かに一貫性のある高品質な画像を生成できます。
テキストからの画像生成:6つの実践テンプレート
ここでは、目的別に6つのカテゴリに分けて、画像生成のためのテンプレートと具体的なプロンプト例を紹介します。
1. 写実的なシーン
写真のようにリアルな画像を求める場合、カメラマンのように考えるのがコツです。カメラアングル、レンズの種類、照明、細部のディテールに言及することで、モデルを写実的な結果へと導きます。
- テンプレート:
[被写体]の[ショットの種類]の写実的な写真。[アクションや表情]をしており、[環境]にいる。シーンは[照明の説明]によって照らされ、[雰囲気]なムードを作り出している。[カメラ/レンズの詳細]で撮影され、[主要な質感やディテール]を強調している。画像は[アスペクト比]形式であること。 - プロンプト例:
年配の日本の陶芸家の、写実的なクローズアップポートレート。深く日に焼けたしわと、温かく物知りな微笑みを浮かべている。彼は釉薬をかけたばかりの茶碗を注意深く調べている。背景は素朴で日当たりの良い彼の工房。シーンは窓から差し込む柔らかく金色の夕暮れの光に照らされ、粘土の細かい質感を際立たせている。85mmのポートレートレンズで撮影され、背景は柔らかくぼけている(ボケ効果)。全体のムードは穏やかで熟練した雰囲気。縦長のポートレート。
2. 様式化されたイラスト&ステッカー
プロジェクト用のアセットやステッカーを作成するには、スタイルを明確に指定し、必要であれば白い背景を要求することを忘れないでください。
- テンプレート:
[主題]の[スタイル]のステッカー。[主な特徴]と[カラーパレット]を特徴とする。デザインは[線のスタイル]と[陰影のスタイル]を持つこと。背景は白でなければならない。 - プロンプト例:
小さな竹の帽子をかぶった、幸せそうなレッサーパンダのカワイイ風ステッカー。緑の笹の葉を食べている。デザインは、太くクリーンなアウトライン、シンプルなセルシェーディング(アニメ塗りのような陰影)、鮮やかなカラーパレットを特徴とする。背景は白でなければならない。
3. 画像内の正確なテキスト
Gemini 2.5 Flash Imageは画像内にテキストを描画できます。希望するテキスト、フォントスタイル、全体のデザインを明確に伝えましょう。
- テンプレート:
[ブランド/コンセプト]のための[画像の種類]を作成する。テキスト「[描画するテキスト]」を[フォントスタイル]で表示する。デザインは[スタイルの説明]で、[カラースキーム]であること。 - プロンプト例:
「The Daily Grind」という名前のコーヒーショップのための、モダンでミニマリストなロゴを作成する。テキストはクリーンで太いサンセリフフォントであること。デザインは、コーヒー豆のシンプルな様式化されたアイコンがテキストとシームレスに統合されていることを特徴とする。カラースキームは白黒。
4. 製品モックアップ&商業写真
Eコマースや広告、ブランディングのための、クリーンでプロフェッショナルな製品写真を生成します。
- テンプレート:
[製品の説明]の高解像度スタジオ撮影の製品写真。[背景の表面/説明]の上に置かれている。照明は[照明の目的]のために[照明設定、例:3点ソフトボックス設定]である。カメラアングルは[特定の特徴]を見せるための[アングルの種類]である。超リアルで、[重要なディテール]にシャープなフォーカスが合っていること。[アスペクト比]。 - プロンプト例:
マットブラックのミニマリストなセラミック製コーヒーマグの高解像度スタジオ撮影の製品写真。磨かれたコンクリートの表面に置かれている。照明は、柔らかく拡散したハイライトを作り出し、きつい影をなくすように設計された3点ソフトボックス設定である。カメラアングルは、そのクリーンなラインを見せるために少し高めの45度ショット。超リアルで、コーヒーから立ち上る湯気にシャープなフォーカスが合っていること。正方形の画像。
5. ミニマリスト&ネガティブスペースデザイン
ウェブサイトの背景やプレゼンテーション資料など、後からテキストを重ねることを想定したデザインを作成します。
- テンプレート:
フレームの[右下/左上など]に配置された単一の[被写体]を特徴とするミニマリストな構図。背景は広大で何もない[色]のキャンバスで、大きなネガティブスペース(余白)を作り出している。柔らかく、ほのかな照明。[アスペクト比]。 - プロンプト例:
フレームの右下に配置された、一枚の繊細な赤い紅葉を特徴とするミニマリストな構図。背景は広大で何もないオフホワイトのキャンバスで、テキストを配置するための大きなネガティブスペースを作り出している。左上からの柔らかく拡散した照明。正方形の画像。
6. 連続アート(漫画パネル / ストーリーボード)
ストーリーボードや漫画など、連続性のある視覚的な物語をパネル単位で作成します。明確なシーン描写が鍵となります。
- テンプレート:
[アートスタイル]風の漫画の1コマ。前景には[キャラクターの説明と行動]。背景には[設定の詳細]。パネルには「[テキスト]」というセリフ/キャプションボックスがある。照明が[ムード]な雰囲気を作り出している。[アスペクト比]。 - プロンプト例:
コントラストの強い白黒インクを使った、ザラザラしたノワールアートスタイルの漫画の1コマ。前景では、トレンチコートを着た探偵が、点滅する街灯の下に立っており、雨が彼の肩を濡らしている。背景では、寂れたバーのネオンサインが水たまりに反射している。上部のキャプションボックスには「この街は秘密を守るのが難しい場所だった」と書かれている。照明は厳しく、ドラマチックで陰鬱なムードを作り出している。横長の画像。
既存画像を活用した高度な編集:4つのテクニック
Gemini 2.5 Flash Imageの真価は、テキストだけでなく画像も入力として使える点にあります。ここでは、既存の画像を使った高度な編集テクニックを紹介します。
1. 要素の追加と削除
画像を提供し、加えたい変更を説明するだけです。モデルは元の画像のスタイル、照明、遠近感を分析し、自然に見えるように編集を行います。
- テンプレート:
提供された[被写体]の画像を使い、シーンに[要素]を[追加/削除/修正]してください。変更が[変更がどのように統合されるべきかの説明]になるようにしてください。 - プロンプト例:
提供された私の猫の画像を使い、頭に小さなニットの魔法使いの帽子を追加してください。それが快適に収まり、写真の柔らかい照明と一致するように見せてください。
2. インペインティング:特定領域の編集
画像の特定の部分だけを編集し、残りは完全にそのままに保つよう指示できます。
- テンプレート:
提供された画像を使い、[特定の要素]だけを[新しい要素/説明]に変更してください。元のスタイル、照明、構図を維持し、画像内の他のすべては全く同じに保ってください。 - プロンプト例:
提供されたリビングルームの画像を使い、青いソファだけをヴィンテージの茶色い革製チェスターフィールドソファに変更してください。ソファの上のクッションや照明など、部屋の残りの部分は変更しないでください。
3. スタイル転送
写真を提供し、その内容を特定のアーティストや芸術様式のスタイルで再描画するように依頼します。
- テンプレート:
提供された[被写体]の写真を、[アーティスト/アートスタイル]の芸術スタイルに変換してください。元の構図は維持しつつ、[様式的要素の説明]でそれを描画してください。 - プロンプト例:
提供された夜の近代的な街路の写真を、フィンセント・ファン・ゴッホの「星月夜」の芸術スタイルに変換してください。建物や車の元の構図は維持しつつ、すべての要素を渦巻くような厚塗りの筆致と、深い青と明るい黄色のドラマチックなパレットで描画してください。
4. 高度な合成:複数画像の組み合わせ
複数の画像を文脈として提供し、全く新しい合成シーンを作成します。製品のモックアップやクリエイティブなコラージュに最適です。
- テンプレート:
提供された画像を組み合わせて新しい画像を作成してください。[画像1の要素]を[画像2の要素]の上/中に配置してください。最終的な画像は[最終的なシーンの説明]であるべきです。 - プロンプト例:
プロフェッショナルなEコマースのファッション写真を作成してください。最初の画像の青い花柄のドレスを、2番目の画像の女性に着せてください。屋外の環境に合うように照明と影を調整し、そのドレスを着た女性のリアルな全身ショットを生成してください。
より良い結果を得るためのベストプラクティス
- 超具体的に: 詳細が多ければ多いほど、制御が効きます。「ファンタジーの鎧」ではなく、「銀の葉模様が刻まれた華麗なエルフのプレートアーマーで、高い襟とハヤブサの翼の形をした肩当てが付いている」のように記述します。
- 文脈と意図を提供する: 画像の目的を説明します。「ロゴを作成して」よりも、「高級でミニマリストなスキンケアブランドのロゴを作成して」の方が良い結果を生みます。
- 反復と改良: 最初の試行で完璧な画像を期待せず、対話的な性質を利用して小さな変更を加えます。「素晴らしいですが、照明をもう少し暖かくできますか?」のように続けます。
- 「セマンティックネガティブプロンプト」を使う: 「車なし」と言う代わりに、「交通の気配がない、空っぽで寂れた通り」のように、望むシーンを肯定的に記述します。
- カメラを制御する: 写真や映画の専門用語(広角ショット、マクロショット、ローアングル、85mmポートレートレンズなど)を使うと、構図を精密に制御できます。
まとめ
本稿では、Gemini 2.5 Flash Imageを使って思い通りの画像を生成・編集するための、具体的なプロンプト作成方法を解説しました。
最も重要なのは、キーワードを並べるのではなく、生成したい画像の「シーン」を物語のように豊かに描写することです。今回紹介したテンプレートやベストプラクティスを活用することで、この強力なモデルのポテンシャルを最大限に引き出すことができるでしょう。