[レポート解説]GoogleのAI要約はウェブサイトへの訪問者を減らすのか?最新調査報告を解説

目次

はじめに

 近年、Google検索の結果画面にAIが生成した要約が表示される「AI Overviews」という機能が導入され、私たちの情報収集の方法は変化しつつあります。ユーザーにとっては素早く答えが得られる便利な機能ですが、一方でウェブサイト運営者からは「サイトへの訪問者が減少するのではないか」という懸念の声も上がっています。

 本稿では、この疑問に迫るため、米国の著名な調査機関であるPew Research Centerが2025年7月22日に公開した報告書「Google users are less likely to click on links when an AI summary appears in the results」を基に、AI要約がユーザーの検索行動に具体的にどのような影響を与えているのかを、前提知識も交えながら詳しく解説していきます。

参考記事

要点

  • Google検索でAI要約が表示されると、ユーザーが従来の検索結果リンクをクリックする確率は約半分に減少する。
  • AI要約内に表示される引用元のリンクがクリックされることは極めて稀である。
  • AI要約が表示されたページでは、ユーザーがそれ以上情報を探さずにブラウジングを終了する割合が高まる。
  • 検索する文章が長い、または質問形式であるほど、AI要約は表示されやすい傾向にある。

詳細解説

前提知識:Googleの「AI Overviews」とは?

 まず前提として、「AI Overviews」について簡単にご説明します。これは、Googleが検索エンジンに導入した生成AI技術を活用した機能です。ユーザーが何かを検索した際に、関連するウェブページの情報をAIが自動的に読み取り、検索結果ページの上部に要約文を生成して表示します。これにより、ユーザーは複数のウェブサイトを訪れることなく、質問に対する直接的な答えを得やすくなります。しかし、この利便性の裏側で、情報を提供するウェブサイトへのアクセスが減少するという、いわゆる「ゼロクリック検索」の増加が懸念されています。

調査結果①:AI要約はリンクのクリック率を大幅に低下させる

 今回のPew Research Centerの調査は、米国の成人900人の実際のウェブブラウジングデータを分析したものです。その結果、AI要約の有無でユーザーの行動に明確な違いが見られました。

  • AI要約が表示されなかった場合:ユーザーの15%が検索結果のリンクをクリックした。
  • AI要約が表示された場合:ユーザーの8%しか検索結果のリンクをクリックしなかった。

 このデータは、AI要約が表示されると、ユーザーがウェブサイトを訪問する確率が約半分にまで減少することを示しています。さらに衝撃的なのは、AI要約の中に示されている情報源(引用元)のリンクがクリックされたのは、全体のわずか1%だったという事実です。これは、多くのユーザーがAIの要約だけで満足し、情報の詳細や一次情報源を確認するためにウェブサイトを訪れることがほとんどない、という実態を浮き彫りにしています。

調査結果②:ユーザーは検索を早く切り上げる傾向に

 AI要約は、ユーザーが情報探索を終えるタイミングにも影響を与えていました。

  • AI要約が表示されなかった場合:16%のユーザーがその検索でブラウジングを終了した。
  • AI要約が表示された場合:26%のユーザーがその検索でブラウジングを終了した。

 つまり、AI要約が答えを提示することで、ユーザーは満足し、それ以上他のサイトを見たり、追加で検索したりすることなく、セッションを終えてしまう傾向が強まるということです。これはウェブサイト運営者にとっては、自サイトを訪れてもらう機会そのものが失われることを意味します。

調査結果③:AI要約が表示されやすい検索とは?

 では、どのような検索をするとAI要約は表示されやすいのでしょうか。調査によると、以下の特徴を持つ検索で生成率が高まることがわかりました。

  • 長い検索語句:検索語句が10語以上の場合、53%の確率でAI要約が生成されました(1〜2語の場合は8%)。
  • 質問形式の検索:「なぜ」「何が」「どのように」といった疑問詞で始まる検索では、60%という高い確率でAI要約が表示されました。

 このことから、ユーザーが具体的で複雑な質問を投げかけた際に、AIが積極的に介入して答えを要約しようとする傾向がうかがえます。

調査結果④:AIが参照する情報源

 AI要約と従来の検索結果で最も多く引用された情報源は、Wikipedia、YouTube、Redditでした。特にAI要約では、従来の検索結果と比較してWikipediaと政府系サイト(.govドメイン)の割合が高いという特徴が見られました。これは、AIが情報の信頼性や権威性を評価する上で、これらのサイトを重要視している可能性を示唆しています。

まとめ

 本稿で紹介したPew Research Centerの調査は、GoogleのAI要約機能が、ユーザーに利便性をもたらす一方で、ウェブサイトへのトラフィックを明確に減少させるという事実をデータで裏付けました。

 この変化は、広告収入や商品の販売で成り立つ多くのウェブサイト、そして良質なコンテンツを提供することでビジネスを行っているメディアにとって、無視できない大きな課題です。今後は、単に検索順位を上げるだけでなく、いかにしてAIに引用されやすい、信頼性の高いコンテンツを作成するか、あるいは検索エンジンに依存しない集客方法を確立するかといった、新たな戦略が求められることになるでしょう。

 私たちユーザーも、AIが提供する情報の速さや手軽さを享受しつつ、その情報がどのようなソースから来ているのか、そして一つの要約された答えの裏にある多様な視点や深い情報に触れる機会を失っていないか、という点を意識することが重要になってくるかもしれません。

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