［ニュース解説］AIで年間122時間節約！事務作業をAIで効率化するために必要な方法とは？

2025-04-26

はじめに

近年、AI（人工知能）技術は目覚ましい発展を遂げ、私たちの働き方にも変化をもたらし始めています。特に、日常的な事務作業においてAIを活用することで、大幅な時間短縮が可能になるという調査結果が報告されました。本稿では、Googleがイギリスで行ったパイロット・スキーム（試行プログラム）の結果をもとに、AI導入による業務効率化の可能性と、その導入を促進するためのポイントについて解説します。

引用元記事

タイトル: Workers could save 122 hours a year by adopting AI in admin tasks, says Google
発行元: Reuters
発行日: 2025年4月25日
URL: https://www.reuters.com/business/world-at-work/workers-could-save-122-hours-year-by-adopting-ai-admin-tasks-says-google-2025-04-24/

・本稿中の画像に関しては特に明示がない場合、引用元記事より引用しております。
・記載されている情報は、投稿日までに確認された内容となります。正確な情報に関しては、各種公式HPを参照するようお願い致します。
・内容に関してはあくまで執筆者の認識であり、誤っている場合があります。引用元記事を確認するようお願い致します。

要点

Googleがイギリスで行った調査によると、労働者は事務作業にAIを活用することで年間平均122時間を節約できる可能性がある。
AI利用の許可や数時間のトレーニングといった簡単なステップで、AI技術の導入率は倍増し、経済成長を促進する可能性がある。
調査対象となった労働者の3分の2、特に低所得者層の年配女性は、これまで職場で生成AIを使用したことがなかった。
AI利用への心理的な障壁（「プロンプトを使う許可」が欲しいという感覚）を取り除くことが重要である。
簡単なトレーニングで自信をつけることで、AIの利用頻度が大幅に向上し、その効果が数ヶ月後も持続した。

詳細解説

Googleは、同社が開発したAIチャットボット「Gemini」などを活用した業務効率化に関する調査を、イギリスの中小企業ネットワーク、教育トラスト（学校運営組織）、労働組合を対象に行いました。この調査は「AI Works」パイロットと呼ばれています。

調査の結果、参加した労働者は、メール作成、情報収集、文書要約といった事務的なタスクにAIを活用することで、年間平均122時間もの時間を節約できたことが明らかになりました。これは、1日8時間労働とすると、年間で約15日分に相当する時間です。

しかし、調査開始前には、労働者の3分の2が職場で生成AI（文章、画像、アイデアなどを生成するAI）を利用した経験がありませんでした。特に、55歳以上の女性や低所得者層において、その傾向が顕著でした。

AI利用が進まない背景には、技術的な問題だけでなく、心理的な障壁も存在します。Googleのヨーロッパ・中東・アフリカ地域担当プレジデントであるデビー・ワインスタイン氏によると、多くの労働者は「仕事でAIを使うことは正当なのか、ずるいことではないか」という懸念を抱いており、「プロンプトを使う許可（AIに指示を出すことへの許可）」を求めている感覚があったといいます。つまり、「AIを使っても良い」という組織からの明確なメッセージや安心感が、導入の第一歩として非常に重要であるということです。

そこで、このパイロット・スキームでは、AI利用の許可を与えるとともに、数時間程度の簡単なトレーニングを実施しました。その結果、参加者のAIに対する自信が高まり、AIの利用頻度はトレーニング前の2倍になりました。さらに、トレーニングから3ヶ月後も、その利用習慣は継続していました。例えば、トレーニング前は週に1回AIを利用する55歳以上の女性は17%でしたが、3ヶ月後には56%に増加し、毎日利用する人も9%から29%へと増加しました。

これらの結果は、AI導入において、高価なツールや複雑なシステム導入だけでなく、従業員への利用許可の明示と基本的なトレーニングがいかに重要であるかを示唆しています。こうした簡単な介入によって、AI導入の格差を縮小し、より多くの労働者がAIの恩恵を受けられるようになると、Googleは報告しています。さらに、Googleは、労働人口へのAIトレーニングが進めば、イギリス経済はAIによる成長で4000億ポンド（約5330億ドル）の利益を得る可能性があると述べています。