はじめに
Googleは、検索エンジンにさらに高度なAIを統合し、単なる情報検索ツールから、ユーザーのタスクを能動的に支援するパートナーへと進化させようとしています。本稿は、Googleが2025年7月16日に公式ブログで公開した「More advanced AI capabilities are coming to Search」をもとに、私たちの情報収集のあり方を大きく変える可能性を秘めた、Google検索の新しいAI機能について詳しく解説します。
参考記事
- タイトル: More advanced AI capabilities are coming to Search
- 発行元: Google
- 発行日: 2025年7月16日
- URL: https://blog.google/products/search/deep-search-business-calling-google-search/
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要点
- Google検索の有料プラン(Google AI Pro / AI Ultra)向けに、最新のAIモデルであるGemini 2.5 Proが検索エンジンに搭載に導入される。
- Gemini 2.5 Proを活用した新機能「Deep Search」が搭載され、複雑な調査をAIが代行し、複数の情報源を統合した包括的なレポートを自動で作成する。
- AIがユーザーに代わって店舗に電話をかけ、価格や予約の空き状況を確認する「AI電話代行」という画期的なエージェント機能が導入される。
- これらの先進的な機能は、まず米国の対象サブスクライバーから展開が開始される。
詳細解説
今回Googleが発表した新機能は、大きく分けて3つの柱から成り立っています。それぞれがどのように機能し、私たちの検索体験をどう変えるのか、詳しく見ていきましょう。
最新最強AIモデル「Gemini 2.5 Pro」が検索エンジンに搭載
今回のアップデートの核となるのが、Googleの最も高性能なAIモデル「Gemini 2.5 Pro」の検索機能への統合です。
Geminiは、Googleが開発したマルチモーダルAI、つまりテキストだけでなく、画像、音声、動画など複数の種類の情報を同時に理解し、処理できるAIモデル群の総称です。Gemini 2.5 Proはその中でも特に高度な推論、数学、そしてプログラミング(コーディング)の問題解決能力に優れています。
これまでの検索は、キーワードに合致するウェブページを見つけるのが主な役割でした。しかし、Gemini 2.5 Proが搭載されることで、「複数の条件を含む複雑な住宅ローンの計算」や「特定の機能を持つPythonコードの生成とデバッグ」といった、これまで人間が複数のツールを駆使して行っていたような高度な知的作業を、検索ウィンドウの中だけで完結させられるようになります。ユーザーはAIモードで「2.5 Proモデル」を選択することで、この強力な頭脳をいつでも呼び出すことができるようになります。

あなただけの調査アシスタント「Deep Search」
次に紹介する「Deep Search」は、Gemini 2.5 Proの能力を最大限に活用した調査ツールです。これは、現在Geminiで提供されているDeepResearchをAIモードに導入し、より使いやすくしたものです。
例えば「初めての住宅購入で、A地区とB地区の物件価格、学区、治安、将来性を比較検討したい」といった複雑なテーマについて調査したいとします。Deep Searchは、この一つの指示だけで、AIが自律的に数百もの関連検索を実行します。そして、集めた膨大な情報の中から、食い違う情報や関連性の薄い情報を整理し、最終的に引用元を明記した一つの包括的なレポートとしてまとめてくれます。
AIが電話も代行!究極の時短エージェント機能
そして、AIがユーザーに代わって実世界のタスクを実行するエージェント機能です。
例えば、あなたが「近くで評判の良いペットグルーマーを探している」とします。検索結果に表示された複数の店舗に、料金や予約の空き状況を一つ一つ電話して確認するのは面倒です。この新機能を使えば、検索結果に表示される「AIに価格を確認させる」といったボタンを押すだけで、あとはAIがやってくれます。
AIは、あなたが指定した条件(例えば「小型犬のシャンプーカット、今週末の空き状況」)に基づき、複数の店舗に自動で電話をかけ、必要な情報を聞き出します。そして、収集した情報を一覧にまとめてあなたに提示します。これにより、ユーザーは電話をかける手間なく、最適な選択肢を簡単に見つけることができます。これは、ユーザーの時間を節約するだけでなく、店舗側にとっても新たな顧客獲得の機会を生み出す、画期的な仕組みと言えるでしょう。
まとめ
今回Googleが発表した新機能群は、検索エンジンが「答えを探す場所」から「タスクを解決してくれるパートナー」へと、その役割を大きく変えようとしていることを示しています。Gemini 2.5 Proという強力な頭脳を得たGoogle検索は、Deep Searchによって私たちの調査能力を拡張し、AI電話代行によって実世界での行動までサポートしてくれるようになります。
現時点では米国内の一部のユーザーから利用可能となる機能ですが、将来的にはより多くの人々が使えるようになることが期待されます。AIに面倒な作業を任せ、人間はより創造的で本質的な活動に時間を使う。そんな未来が、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。