はじめに
Google Labsが2025年12月8日、AIを活用したアイデア探索ツール「Mixboard」の大幅なアップデートを発表しました。最新の画像生成モデル「Nano Banana Pro」を搭載し、ボードからプレゼンテーションを自動作成できるようになったほか、Geminiを活用した「メタプロンプト」という手法でVeo動画を効率的に生成する実践例も紹介されています。本稿では、これらの新機能と活用方法について詳しく解説します。
参考記事
メイン記事:
- タイトル: Create presentations with Nano Banana Pro in Mixboard and more
- 著者: Jaclyn Konzelmann (Director, Product Management, Google Labs)
- 発行元: Google Blog (The Keyword)
- 発行日: 2025年12月8日
- URL: https://blog.google/technology/google-labs/create-presentations-with-nano-banana-pro-in-mixboard-and-more/
関連情報:
- タイトル: A Googler explains how to “meta prompt” for incredible Veo videos
- 著者: Joel Meares (Contributor, The Keyword)
- 発行元: Google Blog (The Keyword)
- 発行日: 2025年12月8日
- URL: https://blog.google/products/gemini/meta-prompting-veo-gemini-tips/
要点
- Google LabsのMixboardに、Nano Banana Proを活用したプレゼンテーション自動作成機能が追加された
- ボードの内容とユーザーの指示を組み合わせて、高品質なビジュアルとテキストを含むプレゼンを生成できる
- セルフィーカメラ機能やPDF対応など、アップロード可能なコンテンツの種類が拡張され、複数ボードの管理も可能になった
- Google DeepMindのエンジニアが実践する「メタプロンプト」という手法では、Geminiに詳細なプロンプトを生成させることで、Veoで高品質な動画を効率的に作成できる
- メタプロンプトでは、タスクの明確化、形式とスタイルの指定、制約条件の設定、感情的な要素の追加が有効とされている
詳細解説
Mixboardとは―AIによるアイデア探索ツール
Mixboardは、Google Labsが提供するAI実験ツールで、アイデアの探索・拡張・洗練を支援するキャンバス型のアプリケーションです。画像やテキストを使ってアイデアを視覚化でき、DIYプロジェクト、製品デザイン、ホリデーパーティーのメニューや装飾など、さまざまなプロジェクトに活用できます。
このツールは、ユーザーがアイデアを自由に配置・整理できる柔軟なワークスペースを提供し、AI生成コンテンツと手動編集を組み合わせた創作活動をサポートすることを目的としています。
Nano Banana Proによるプレゼンテーション自動生成
今回のアップデートで最も注目される機能が、Nano Banana Proを活用したプレゼンテーション自動作成です。Googleによれば、Mixboardはボードのコンテンツとユーザーの指示(形式、プレゼンテーションの焦点、希望するビジュアルスタイルなど)を組み合わせて、美しくデザインされたプレゼンテーションを生成します。
Nano Banana Proは、Gemini Imageファミリーの最新モデルで、高精細なビジュアルとテキストを生成する能力を持っています。このモデルを活用することで、プレゼンテーションの内容を視覚的に魅力的な形で表現でき、アイデアの伝達が容易になります。
ただし、リアルタイムのサーバー負荷やネットワークトラフィックに応じて生成制限が変動する可能性があることが示されており、商用利用を検討する際にはこの点を考慮する必要があると考えられます。
コンテンツアップロードと編集機能の拡張
Mixboardは、ユニークなリファレンスビジュアルの生成や、ユーザー自身のリファレンスのアップロードに対応していますが、今回のアップデートでアップロード可能なコンテンツの種類が大幅に拡張されました。
特に注目すべき機能として、「セルフィー」カメラが直接Mixboardに追加されました。これにより、自分の写真を簡単に追加できるようになり、ワードローブのインスピレーションを得るためにMixboardを使用する場合などに便利です。また、PDFを含む対応ファイル形式も拡張されています。
編集機能については、画像に直接落書きすることで、より制御された編集が可能になりました。領域をマークして説明を加えると、その内容が反映されます。この落書き機能はプレゼンテーションの編集にも使用できます。
これらの機能は、従来のテキストベースの指示のみでは実現が難しかった、より直感的で視覚的な編集ワークフローを可能にすると考えられます。
複数ボード管理機能の導入
Mixboardのキャンバスサイズは最近拡大されましたが、今回のアップデートでは、1つのプロジェクト内で複数のボードを管理できるようになりました。
この機能により、異なるカテゴリーやテーマごとに別々のボードを作成できます。たとえば、プロジェクトのブレインストーミング用ボード、作業中に見つけたさまざまなアイデアを集めるボード、最終的なビジョンを示すボードなど、用途に応じて整理できます。
プロジェクト管理の観点から見ると、この機能はアイデアの段階的な発展や、複数の方向性の並行検討を効率化する可能性があります。
メタプロンプト―Geminiを活用した高品質動画生成
Google DeepMindのUXエンジニアであるAnna Bortsovaは、「メタプロンプト」という手法を実践しています。これは、Veo用の具体的なシーンのプロンプトを直接書くのではなく、Geminiに複数の詳細なプロンプトを作成させるアプローチです。
Annaによれば、彼女はGeminiに一度に5〜10個の異なるシーンのプロンプトを作成させ、それをFlowやGeminiアプリで使用します。生成されるプロンプトは非常に長く具体的で、時には複数ページに及ぶこともありますが、その結果として息をのむような出力が得られます。
彼女が制作したストップモーション風のペーパーアート動画は、社内のチャットグループで話題となり、Googleのマーケティングチームから公式ソーシャルチャンネルでの紹介依頼を受けるほどの反響を呼んでいます。
メタプロンプトの効果的な構成要素
Annaが効果的だと考えるメタプロンプトの要素は、以下の通りです。
まず、非常に具体的なタスクを定義することが重要です。例えば、「LLMが理解できる詳細なプロンプトを書く」と明確に指示します。次に、形式とスタイルを明確にします。「8秒のストップモーションアニメーション、紙で作られたシーン」というように具体的に示します。
さらに、制約条件を与えることも効果的です。単に「紙」と言うのではなく、「ホイル紙」や「光沢のある紙」といった具体的な素材を指定します。そして、Geminiに自由に考えさせることも重要な要素とされています。
モデルの反応に応じて、プロンプトを微調整することも推奨されます。音やテクスチャについての詳細を追加または変更することは、Geminiとの協働作業の一環と考えられています。
興味深い点として、Annaは感情的な要素を加えることも有効だと指摘しています。「満足感のあるシーンを考えてほしい」といった感情的な目標を伝えることで、より魅力的な出力が得られる可能性があります。
植物アートの制作を依頼した際、Geminiは「アニメーションは緩やかで魅惑的であり、各葉が優しく、リズミカルなシーケンスで繊細に展開する」というプロンプトを生成しました。Veoはこの指示を正確に理解し、実行したとのことです。
彼女の最大のアドバイスは、「自分が好きな題材を選んで、実験を始めること」です。彼女自身もまだ学習中であり、楽しみながら取り組んでいると語っています。
このアプローチは、AIツールの習熟において、技術的な理解だけでなく、実践的な試行錯誤が重要であることを示していると言えます。
まとめ
Google LabsのMixboardは、Nano Banana Proの搭載によりプレゼンテーション自動作成機能を獲得し、アイデア探索から成果物の作成までをシームレスに行えるツールへと進化しました。また、メタプロンプトという手法は、Geminiの言語理解能力を活用してVeoでの動画生成を効率化する実践的なアプローチとして注目されます。これらの機能とテクニックは、AIツールを創造的なプロジェクトに活用する新たな可能性を示していると考えられます。
