はじめに
Googleが2025年12月3日、同社の教育向けAIツール「Google for Education」の年間利用実績を発表しました。Gemini for Educationが米国の1,000以上の高等教育機関に導入され、1,000万人以上の学生に到達したことが明らかになりました。本稿では、この発表内容をもとに、教育現場でのAI活用の実態と新機能について解説します。
参考記事
- タイトル: How institutions worldwide used Google for Education tools in 2025
- 著者: Shantanu Sinha
- 発行元: Google Blog
- 発行日: 2025年12月3日
- URL: https://blog.google/outreach-initiatives/education/google-for-education-year-in-review-2025/
要点
- Gemini for Educationは2025年に米国の1,000以上の高等教育機関に統合され、1,000万人以上の学生に到達した
- Google for Educationは150以上の機能とアップデートをリリースし、北アイルランドでは教育者が週10時間の時間削減を実現している
- Gemini for EducationとNotebookLMは、ガイド付き学習、試験対策、視覚的説明の作成など多様な教育シーンで活用されている
- ChromeOSとGoogle Classroomには、教室管理を簡素化するClass toolsや学習進捗を可視化するClassroom analyticsなどの新機能が追加された
- 2025年には100万人以上の教育者と学生がGoogleのAIトレーニングを受講し、10万人以上がGemini認定資格を取得した
詳細解説
教育現場でのAI普及状況
Googleによれば、2025年にGemini for Educationは米国の1,000以上の高等教育機関に統合され、1,000万人以上の学生に到達しました。このAIツールは、プライベートで安全、かつ無料で提供されており、教育現場に変革的な変化をもたらしていると説明されています。
具体的な成果として、北アイルランドの教育者は週10時間の作業時間削減を実現し、メキシコでは従来週末にかかっていた作業を20分で完了できるようになったと報告されています。これらの事例は、AIツールが教育者の業務効率化に大きく貢献していることを示しています。
高等教育機関でのAI導入は、単なる業務効率化だけでなく、学習体験の質的向上にも寄与していると考えられます。特に、個別化された学習支援や即時フィードバックの提供など、従来は人的リソースの制約で困難だった教育アプローチが実現可能になっています。
Gemini for EducationとNotebookLMの主な活用方法
教育現場では、Gemini for EducationとNotebookLMが以下のような多様な方法で活用されています。
学習面では、単に素早い答えを得るのではなく、Guided Learning機能を通じて深い理解を構築する使い方が広がっています。また、Gemini CanvasのパーソナライズされたクイズやNotebookLMのフラッシュカード機能を使った試験対策も一般的になっています。これらの機能は、学習者の理解度に応じて難易度を調整できるため、効果的な反復学習が可能になります。
NotebookLMのMind Maps機能は、複数の資料間の関連性を視覚的に整理でき、研究や情報統合を容易にします。さらに、Video OverviewsやAudio Overviewsを活用することで、書面コンテンツを動画や音声に変換し、移動中などでも柔軟に学習できる環境が整っています。
教育者向けには、Google Classroom内のGeminiが、レッスンへの新しいアイデア、関連リソース、差別化された活動の追加を支援します。この機能は、Google Workspace for Educationユーザー(18歳以上)に無料で提供されています。また、Google Vidsを使用することで、AIによるサンプルスクリプトやナレーション機能を活用し、洗練された共同制作動画コンテンツの作成が簡素化されています。
これらのAIツールの特徴は、単なる作業の自動化ではなく、教育的な意図を持った支援を提供している点にあります。例えば、Guided Learningは単に答えを提示するのではなく、学習者が自ら考えるプロセスを重視する設計になっており、教育学的な配慮が組み込まれていると言えます。
ChromeOSとGoogle Classroomの新機能
ChromebookとChromeOSには、教室管理を簡素化し、指導のアイデアを実現する新機能が追加されています。
管理対象のChromebook向けのClass toolsは、教師が学生の画面にコンテンツを共有したり、作業状況を確認したり、デバイスを探索、集中、ロックモードに設定したりできる機能です。この機能により、教師は教室全体の学習環境をより効果的にコントロールできるようになります。
新しいChromebook Plusデバイスには、Quick Insert(レッスンプランでのオンデバイス画像生成)やText capture(画面から情報を素早く抽出)などのAI搭載機能が組み込まれており、生産性向上と時間節約を実現しています。また、Chromebox OPSという新製品は、既存のインタラクティブフラットパネルディスプレイにプラグインすることで、ChromeOS上でシームレスに動作するようアップグレードできます。
Google Classroomも、AI搭載の教育・学習体験を提供するLMSソリューションとして進化を続けています。拡張されたClassroom analyticsにより、学生の進捗に関する実用的な洞察が得られるようになり、学習基準でのタグ付けと課題追跡機能も試験的に導入されています。これにより、データに基づいた指導が可能になり、個別学習のニーズに応えやすくなります。
Read Along in Classroomは、より柔軟な使用方法が追加され、学生のニーズに合わせたストーリーの生成やアップロード、さまざまな読書モードの提供が可能になっています。これは、識字能力の向上支援に特化した機能です。
ChromeOS環境全体の強化は、ハードウェアとソフトウェアの統合により、教育現場特有のニーズに応える包括的なソリューションを目指していると考えられます。
AIリテラシー教育の取り組み
Googleは2025年、教育機関、教育者、学生にAIリテラシーリソースを提供してきました。具体的には、100万人以上の教育者と学生がGoogle for EducationのAIトレーニングを受講し、10万人以上がGemini認定資格を取得しました。これらのリソースは、刷新されたLearning Centerで無料で利用できます。
教育者向けには、すぐに使えるAIプロンプト集や、教育現場でGeminiを活用する100以上の方法をまとめた資料が提供されています。これらの実践的なリソースは、AIツールの導入障壁を下げ、教育現場での効果的な活用を促進する役割を果たしています。
さらに、若年層の学習者向けには、Be Internet AwesomeのAIリテラシーカリキュラムや、AI Questsという新しい学習プログラムが展開されています。AI Questsは、GoogleリサーチとStanford Accelerator for Learningが開発したゲームベースのコード不要のAI学習体験で、中学生がAIのライフサイクルを体験できる内容になっています。
AIリテラシー教育は、単にツールの使い方を教えるだけでなく、AIの仕組みや限界、倫理的な側面についても理解を深める必要があります。Google for Educationのアプローチは、実践的なスキル習得と理論的な理解の両面をカバーしようとしていると思います。
まとめ
Google for Educationは2025年、1,000万人以上の学生にAIツールを提供し、150以上の新機能をリリースしました。教育現場での具体的な時間削減効果や、学習・教育の両面での多様な活用事例が報告されています。ChromeOSとGoogle Classroomの機能強化により、教室管理から個別学習支援まで、包括的な教育環境の構築が進んでいます。今後、AIリテラシー教育の充実とともに、教育現場でのAI活用がさらに深化していくと考えられます。
