はじめに
現代のビジネス環境は、かつてないスピードで変化しています。この変化に対応するためには、単にデータを収集・蓄積するだけでなく、リアルタイムにデータを活用し、迅速な意思決定につなげる「データアクティベーションのフライホイール」を回すことが不可欠です。
Google Cloudは、この新しい時代の要請に応えるべく、データプラットフォームにAIを深く統合し、インテリジェントエージェントと連携させることで、誰もがデータから洞察を得て、自律的かつリアルタイムなアクションを実行できる世界の実現を目指しています。本稿では、その中核となるBigQueryとLookerに関する最新の発表内容を「What’s new for Data Analytics in the AI driven, autonomous and agentic era」をもとに詳しく見ていきます。
引用元:
- タイトル: What’s new for Data Analytics in the AI driven, autonomous and agentic era
- URL: https://cloud.google.com/blog/products/data-analytics/data-analytics-innovations-at-next25?hl=en
- 発行日: 2025年4月10日
・本稿中の画像に関しては特に明示がない場合、引用元記事より引用しております。
・記載されている情報は、投稿日までに確認された内容となります。正確な情報に関しては、各種公式HPを参照するようお願い致します。
・内容に関してはあくまで執筆者の認識であり、誤っている場合があります。引用元記事を確認するようお願い致します。
要点
- AIアシスタントとエージェントの進化: データエンジニア、データサイエンティスト、アナリスト、ビジネスユーザーそれぞれに特化した専門エージェントが登場し、データ活用を強力に支援します。
- データサイエンスと高度な分析の加速: AI支援機能が組み込まれたBigQueryノートブックや、リアルタイム・オープンソース技術との連携により、データサイエンスのワークフローが大幅に強化されます。BigQuery AIクエリエンジンにより、構造化データと非構造化データを組み合わせた高度な分析が可能になります。
- 自律的なデータ基盤: BigQueryが非構造化データやオープンデータフォーマット(Iceberg)にネイティブ対応。データの取り込みから管理、オーケストレーションまでを自律的に行い、運用負荷を軽減しつつ最適な価格性能比を実現します。
詳細解説
すべてのユーザーのための専門エージェント
Google Cloudは、AIを誰もが利用できるようにすることを目指しています。今回、BigQueryとLookerに組み込まれたAI支援機能がさらに進化し、各役割に特化したエージェントが登場しました。
- データエンジニアリングエージェント: BigQueryパイプライン (GA) に組み込まれ、データパイプラインの構築、データ準備 (GA)(変換やエンリッチメント)、異常検知 (プレビュー)によるデータ品質維持、メタデータ自動生成などを支援します。これにより、データエンジニアは退屈な作業から解放され、信頼できるデータの準備に集中できます。
- データサイエンスエージェント (GA): GoogleのColabノートブック内に組み込まれ、特徴量エンジニアリングの自動化、インテリジェントなモデル選択、スケーラブルなトレーニング、迅速なイテレーションを実現し、モデル開発の全段階を支援します。データサイエンティストは、データやインフラの管理に煩わされることなく、高度なワークフロー構築に専念できます。
- Looker会話型分析 (プレビュー): 自然言語でデータと対話できるようになります。DeepMindとの連携で開発された拡張機能により、高度な分析を実行するだけでなく、その思考プロセスを透明性をもって説明します。これにより、ユーザーはエージェントの挙動を理解し、曖昧さを解消できます。Lookerのセマンティックレイヤーは精度を最大2/3向上させ、「収益」や「セグメント」といったビジネス用語を正確に理解し、リアルタイムで指標を計算します。開発者向けに会話型分析API (プレビュー)も提供され、アプリケーションやワークフローへの組み込みが可能になります。
これらのインテリジェントな体験を支えるのが、BigQueryナレッジエンジン (プレビュー) です。Geminiの能力を活用し、スキーマ関係、テーブル説明、クエリ履歴を分析して、メタデータを動的に生成、データ関係をモデル化し、ビジネス用語集の用語を推奨します。これは、AIによるデータインサイトやセマンティック検索 (GA) など、AIを活用した体験の基盤となります。

データサイエンスと高度な分析の加速
BigQueryは、データサイエンティストやアナリストの働き方を根本から変えようとしています。
- BigQueryノートブックのAI強化: コード記述中にデータコンテキストを理解し、スマートな提案を行うインテリジェントSQLセルを導入。ノートブック内で直接データソースを結合したり、探索的分析や可視化を容易に行ったり、同僚とのコラボレーションを促進する機能が追加されます。さらに、分析の定期実行や、ノートブックを基にしたインタラクティブなデータアプリの構築も可能になります。
- BigQuery AIクエリエンジン: 構造化データだけでなく、非構造化データもシームレスに処理し、実世界のコンテキストを加えて分析できます。従来のSQLとGeminiを連携させ、リアルタイムの知識、言語理解、推論能力を注入します。「新興国の国で主に製造されている在庫製品はどれか?」といった質問に答えたり、「このSNS画像に含まれる製品はどれか?」といった問いに対して非構造化画像を処理し、製品カタログと照合したりできます。これにより、モデルの特徴量構築、高度なセグメンテーション、これまで不可能だった洞察の発見などが可能になります。
- オープンソースエコシステムとの連携強化: Google Cloud for Apache Kafka (GA) はリアルタイムデータパイプラインを促進し、BigQuery内でのApache Sparkワークロードのサーバーレス実行 (プレビュー) を可能にします。サーバーレスSparkの利用は過去1年でほぼ倍増しており、処理速度も前年比で2.7倍高速化されています。
これにより、データサイエンティストは、SQL、Spark、基盤モデルのセマンティックパワーなど、必要なツールをGoogleのサーバーレスでスケーラブルなアーキテクチャ上で活用でき、インフラの課題なくイノベーションを加速できます。

データライフサイクル全体にわたる自律的なデータ基盤
これらのエージェントや分析エンジンを支えるのが、現代の複雑なデータに対応するために設計された自律的なデータ基盤です。
- 非構造化データのネイティブサポート: マルチモーダルテーブル (プレビュー) により、画像、音声、動画、テキストなどのリッチで複雑なデータタイプを構造化データとともにBigQueryで一元的に保存・クエリできるようになります。
- 強化されたBigQueryガバナンス (プレビュー): データスチュワードや専門家が、データの発見、分類、キュレーション、品質、使用状況、共有を単一の統合ビューで管理できます。自動カタログ作成 (GA) やメタデータ生成 (実験的) も含まれます。
- BigQuery継続的クエリ (GA): ストリーミングデータを元の形式に関わらず、SQLを使用して即座に分析し、アクションを実行できます。
- オープンフォーマットへのコミットメント: Apache Iceberg用BigQueryテーブル (プレビュー) は、オープンなデータレイクハウスの柔軟性と、BigQueryのパフォーマンスおよび統合ツールを提供します。IcebergデータをSQL、Spark、AI、サードパーティエンジンにオープンかつ相互運用可能な方法で接続できます。
- 自己最適化: プラットフォームはリソースのスケーリング、ワークロード管理を自律的に行い、高度なワークロード管理機能 (GA) によってコスト効率を確保します。BigQuery spend commit (GA) により、購入プロセスも簡素化されます。
Google Cloudは、非構造化データを含むあらゆるデータを活用し、AIによる洞察を加速するための自律的なデータ基盤を提供することで、企業のデータ活用を次のレベルへと引き上げようとしています。BigQueryとVertex AIを組み合わせることで、他の独立したデータウェアハウスやAIプラットフォームと比較して8〜16倍のコスト効率を実現できるとしています。
まとめ
Google Cloud Next ’25で発表されたデータ分析の進化は、AIがデータ活用のあり方を根本的に変えつつあることを示しています。専門的なエージェントが各ユーザーを支援し、BigQueryが非構造化データを含むあらゆるデータを自律的に処理・分析できる基盤を提供することで、企業はより迅速かつ深い洞察を得て、競争優位性を確立できるようになるでしょう。これらの技術革新は、データに関わるすべての人々の生産性を向上させ、ビジネスの成長を加速させる可能性を秘めています。
コメント