[ツール紹介]Google Chromeの進化:AIアシスタント「Gemini」統合で変わるブラウジング体験

目次

はじめに

 本稿では、Googleの公式ブログをもとに、Webブラウザ「Google Chrome」に導入されるChrome史上最大のアップグレードとされる新しいAI機能「Gemini in Chrome」について、その技術的なポイントやユーザーにもたらす価値を詳しく解説します。

※注意:2025年9月19日現在、Gemini in Chromeは米国の Mac および Windows デスクトップ ユーザーで言語設定が英語になっている場合にのみ利用可能です。(米国では、近日中にAndroidとiOSでも利用可能になるとしています。)日本語を含むその他の言語に関しての対応は、近日中に対応したい、とのことでいつ実装されるかは未定です。

参考記事

要点

  • Google ChromeにAIアシスタント「Gemini in Chrome」が統合される。これにより、複数タブにまたがる情報の要約や比較、閲覧ページに関する質問などが可能になる。
  • アドレスバー(オムニボックス)に「AIモード」が追加され、複雑な質問や対話形式での検索が直接行えるようになる。
  • AIを活用して、フィッシング詐欺の検知、スパム通知の削減、侵害されたパスワードの修正といったセキュリティ機能が大幅に強化される。
  • これらの機能により、Chromeは単なるWebページ表示ツールから、ユーザーの文脈を理解し、作業を能動的に支援する「インテリジェントなパートナー」へと進化する。

詳細解説

 今回発表されたChromeのアップデートは、AIを中核に据え、ブラウジング体験そのものを根本から変えようとしています。具体的にどのような機能が提供されるのか、3つの側面に分けて詳しく見ていきましょう。

1. AIブラウジングアシスタント「Gemini in Chrome」による作業効率化

 今回のアップデートで最も注目すべきは、AIモデル「Gemini」がChromeに深く統合されることです。これにより、これまで手作業で行っていた多くのタスクをAIが支援してくれるようになります。

  • 複数タブの情報を横断して要約・整理
     旅行の計画でフライト、ホテル、観光地のタブをいくつも開いているような状況を想像してください。新しいChromeでは、Geminiがこれらのタブ情報をすべて理解し、一つの旅程として要約・整理してくれます。複数の情報源を比較検討するリサーチ作業が、劇的に効率化されます。
  • 閲覧ページや動画コンテンツへの質問
     表示しているWebページや閲覧中のYouTube動画の内容について、直接Geminiに質問できるようになります。「この記事の要点は?」「この動画で〇〇について話しているのは何分から?」といった質問をすれば、即座に答えを得られます。
  • 過去に閲覧したページの検索
     「先週見た、あのクルミ材の机が載っていたサイトはどこだっけ?」といった曖昧な記憶からでも、Geminiが閲覧履歴を文脈で理解し、目的のページを探し出してくれます。
  • Googleアプリとのシームレスな連携
     閲覧中のページを離れることなく、Googleカレンダーに予定を追加したり、Googleマップで場所を確認したりといった操作が可能になります。アプリ間の移動の手間が省け、作業の流れが中断されません。
  • 将来的な「エージェント機能」
     将来的には、食料品の注文や散髪の予約といった複数ステップにわたるタスクを、ユーザーの指示一つでChromeが代行してくれる「エージェント機能」の実装も計画されています。今後数ヶ月以内に、追加されるとされています。

2. オムニボックス(アドレスバー)の進化

 Webサイトのアドレス入力や検索に使われる「オムニボックス(アドレスバー)」も、AIによってさらに強力になります。

  • AIモードによる高度な検索
     オムニボックスから直接「AIモード」を起動し、より長く複雑な質問を投げかけることができます。検索結果は対話形式で表示され、追加の質問を重ねることで、深い情報探索が可能になります。
  • 文脈に応じた検索候補の提示(コンテキスト提案
     例えば、マットレスの製品ページを閲覧していると、オムニボックスが「保証期間は?」といった関連性の高い検索候補を自動で提案してくれます。これにより、ユーザーは次に何を知りたいかを考える手間なく、スムーズに情報収集を進められます。

 AIモードによる検索機能は、今月(2025年9月)後半に米国で英語版がリリースされ、今後数週間のうちにさらに多くの国と言語に拡大される予定です。コンテキスト提案は米国で英語のみ提供されており、今後数週間のうちにさらに多くの国と言語に展開される予定です。

3. AIによるセキュリティとプライバシーの強化

 利便性の向上だけでなく、安全性の確保にもAIが活用されます。

  • Gemini Nanoによる詐欺サイト検知
     デバイス上で動作する軽量AIモデル「Gemini Nano」を活用し、偽のウイルス警告やテクニカルサポートを装う詐欺サイトをより高度に検知・ブロックします。
  • スパム通知と不要な権限要求の抑制
     AIがユーザーの操作傾向を学習し、悪質と思われるサイトからの通知や、カメラ・位置情報へのアクセス許可要求を、より邪魔にならない形で表示するようになります。Googleによると、この機能によりAndroid版Chromeでは1日あたり約30億件の不要な通知が削減されているとのことです。
  • 侵害されたパスワードのワンクリック修正
     パスワードが漏洩した際に、Chromeが警告するだけでなく、対応サイトであればワンクリックで安全な新しいパスワードに変更するプロセスをAIが代行してくれます。

まとめ

 今回の発表は、Google Chromeが「情報を表示するための窓」から、「ユーザーの目的達成を支援する知的パートナー」へと進化させようという試みの一端がみえるものです。AIアシスタント「Gemini」の統合は、情報収集、整理、タスク実行のあり方を根本から変える可能性を秘めています。

 これらの新機能は、まず米国・英語環境から段階的に展開され、順次ほかの国や言語にも拡大される予定です。今後の展開に注目が集まります。

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