[開発者向け]Google「Agent Garden」全ユーザーに公開:AIエージェント開発を加速するサンプル集と自動デプロイ機能

目次

はじめに

 Googleが2025年11月4日、AIエージェント開発を支援するプラットフォーム「Agent Garden」を全ユーザーに公開しました。従来はGoogle Cloudユーザー限定でしたが、今回の拡張により誰でも利用可能になりました。本稿では、Agent Gardenの機能、デプロイ方法、実際の活用事例について解説します。

参考記事

各種URL

要点

  • Agent GardenがGoogle Cloudユーザー以外にも公開され、誰でもAIエージェント開発のサンプルやツールにアクセス可能になった
  • Agent Development Kit (ADK)を使用した厳選されたエージェントサンプルを提供し、BigQueryやVertex AI Searchなどのクラウドサービスと統合できる
  • Agent Starter Packによるワンクリックデプロイ機能により、サンプルエージェントを即座にAgent Engineに展開してテスト可能になっている
  • Firebase Studioを通じてエージェントのカスタマイズが可能で、開発者は自身のユースケースに合わせて調整できる
  • Renault GroupがEV充電プラットフォームにデータサイエンティストエージェントを統合し、ビジネスチームが直接データを活用できるようになった事例が紹介されている

詳細解説

Agent Gardenの目的と提供価値

 Googleによれば、Agent Gardenは複雑なマルチエージェントシステムの開発における主要な障壁を軽減することを目的としています。AIエージェント開発では、広範な調査、正確な連携、そして多様なツールやフレームワークを統合するための相当な開発投資が必要とされます。

 Agent Gardenが支援する開発課題として、以下の3つが挙げられています。①複雑なビジネス課題に対応するAIエージェントの開発②生成AIと決定論的ロジックを組み合わせた複雑なマルチエージェントワークフローの作成、そして③既存システムやデータソースとのシームレスな統合とデプロイです。

 Agent Gardenは、Agent Development Kit(ADK)を使用して開発された厳選されたエージェントサンプル、ソリューション、ツールのリポジトリを提供します。ADKは、Googleが提供するエージェント開発用のフレームワークで、標準化されたアプローチでエージェントを構築できる仕組みです。

具体的な機能とワークフロー

 Agent Gardenは、開発者向けに複数の統合機能を備えたコードサンプルを提供しています。これらのサンプルはBigQueryやVertex AI Searchなどのクラウドサービスとの統合が可能で、各サンプルには詳細な概要、適用可能なユースケース、アーキテクチャの洞察、機能の説明が含まれています。開発者はGitHubで直接サンプルコードにアクセスし、詳細なレビューを行うことができます。

 特筆すべき新機能として、Agent Starter Packを活用したワンクリックデプロイ機能があります。Agent Starter Packは本番環境へのシームレスなデプロイを支援するオープンソースのスターターパックで、開発者は「デプロイ」ボタンをクリックするだけで、サンプルエージェントがプロジェクト内のAgent Engineに展開され、Agent Engineのプレイグラウンド UIを通じて公開されます。これにより、ほとんど労力をかけずにテストと実験が可能になります。

 さらに、Firebase Studioを通じてエージェントのカスタマイズオプションが提供されています。多くの開発者は自身のニーズやユースケースに合わせてコードをカスタマイズしたいと考えており、Firebase Studioではエージェントを開いて調整することが可能です。この「探索、学習、デプロイ、カスタマイズ」という開発者ジャーニーは、ADKエージェント開発をシームレスにすることを意図しています。

 ワンクリックデプロイは、従来のエージェント開発で必要とされた環境構築や依存関係の解決といった煩雑な作業を大幅に削減する機能と言えるでしょう。開発初期段階でのプロトタイピングや概念実証に特に有効と考えられます。

実際の活用事例

 早期テスターによる活用事例として、Renault Groupの取り組みが紹介されています。Renault GroupはGoogle Cloud Next 2025で、電気自動車(EV)充電プラットフォームに高度なデータサイエンティストエージェントを統合した事例を共有しました。この統合により、ビジネスチームがデータを直接活用する自律性が大幅に向上し、運用とユーザーエクスペリエンスが大きく改善されたとのことです。

 この事例は、エージェント技術が単なる自動化ツールではなく、組織内のデータ活用を民主化する手段として機能する可能性を示しています。技術チームに依存せずにビジネスチームがデータ分析を実行できることで、意思決定の速度と質の向上が期待できるでしょう。

よくある質問への回答

 Googleは、Agent Gardenに関するよくある質問への回答を提供しています。

 本番環境での直接デプロイについては、adk-samplesとAgent Starter Packの両方がオープンソースソフトウェアであり、適用されるソースコードに記載された条件に従うと説明されています。つまり、技術的には可能ですが、各組織のセキュリティポリシーやコンプライアンス要件に照らして判断する必要があると考えられます。

 デプロイされたエージェントのアクセスと共有については、エージェントはAgent Engineにデプロイされ、Agent Engineのアクセス管理オプションに従うとされています。削除についても同様に、Agent Engine内で削除可能です。

 追加サンプルの入手先として、Agent Gardenでは影響力の高いユースケースの厳選された例が掲載され、さらにADK samples、ADK community repo、ADK docsで追加サンプルが利用可能です。また、ADK communityへの参加を通じてコミュニティと積極的に関わることが推奨されています。

まとめ

 Agent Gardenの全ユーザー公開により、AIエージェント開発の敷居が大きく下がったと言えるでしょう。ワンクリックデプロイやカスタマイズ機能により、開発者は概念から実装までの時間を大幅に短縮できる可能性があります。Renault Groupのような実践例も増えていくことで、エージェント技術の実用的な活用方法がより明確になっていくのではないでしょうか。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次