はじめに
GitHubが2026年1月12日、GitHub Copilotをより効果的に活用するための手法「コンテキストエンジニアリング」について解説する記事を公開しました。本稿では、この記事をもとに、カスタム指示、再利用可能なプロンプト、カスタムエージェントという3つの実践的手法を紹介します。
参考記事
- タイトル: Want better AI outputs? Try context engineering.
- 著者: Christina Warren
- 発行元: GitHub Blog
- 発行日: 2026年1月12日
- URL: https://github.blog/ai-and-ml/generative-ai/want-better-ai-outputs-try-context-engineering/
要点
- コンテキストエンジニアリングは、プロンプトエンジニアリングの進化形であり、適切な情報を適切な形式でLLMに提供することに焦点を当てたアプローチである
- カスタム指示、再利用可能なプロンプト、カスタムエージェントという3つの手法により、GitHub Copilotに開発者の期待やアーキテクチャ、チーム標準に合ったコードを生成させることができる
- カスタム指示ファイルを使用することで、コーディング規約、言語設定、命名規則、ドキュメントスタイルなどをCopilotに理解させることができる
- 再利用可能なプロンプトファイルにより、コードレビュー、コンポーネントの雛形作成、テスト生成などの頻繁なタスクを標準化できる
- カスタムエージェントを構築することで、API設計レビューやセキュリティ分析、ドキュメント生成など、特定のタスクに特化したAIアシスタントを作成できる
詳細解説
コンテキストエンジニアリングとは
GitHubによれば、コンテキストエンジニアリングはプロンプトエンジニアリングの進化形と位置づけられています。Braintrust社CEOのAnkur Goyal氏の言葉を引用すると、「巧妙なフレーズよりも、適切な情報を適切な形式でLLMに提供すること」に焦点を当てたアプローチです。
プロンプトエンジニアリングが主に「どう尋ねるか」という言語表現の最適化に重点を置いていたのに対し、コンテキストエンジニアリングは「何を伝えるか」という情報設計に軸足を移したものと言えます。これにより、開発者はAIアシスタントに対して、プロジェクト固有の文脈や制約条件をより体系的に伝えることが可能になると考えられます。
カスタム指示:Copilotに従うべきルールを与える
GitHubの説明では、カスタム指示ファイルを使用することで、コーディング規約、言語設定、命名規則、ドキュメントスタイルなどをCopilotに理解させることができるとされています。
具体的には、以下のような構造でルールを定義できます。
- グローバルルール: .github/copilot-instructions.md
- タスク固有のルール: .github/instructions/*.instructions.md
たとえば、Reactコンポーネントの構造、Nodeサービスでのエラーハンドリング方法、APIドキュメントのフォーマットなどを定義できます。これらのルールは、Copilotが自動的に適用するため、開発者が毎回同じ指示を繰り返す必要がなくなります。
この仕組みは、チーム開発における「暗黙知の形式知化」に近い効果があると思います。通常、コードレビューやペアプログラミングで伝達されるチーム固有のコーディングスタイルを、AIアシスタントにも共有できるようになる点が特徴的です。
再利用可能なプロンプト:共通ワークフローの標準化
記事によれば、再利用可能なプロンプトファイルを使用することで、コードレビュー、コンポーネントの雛形作成、テスト生成、プロジェクト初期化などの頻繁なタスクを、即座に一貫して呼び出せるプロンプトに変換できます。
実装方法としては以下が示されています。
- プロンプトファイル: .github/prompts/*.prompts.md
- スラッシュコマンド: /create-react-formなどで構造化されたタスクをトリガー
この手法により、チームの一貫性を強化し、オンボーディングを高速化し、繰り返し可能なワークフローを毎回同じ方法で実行できるようになるとされています。
一般的なソフトウェア開発では、同様のタスクを繰り返し実行することが多く、その都度プロンプトを考えることは効率的ではありません。再利用可能なプロンプトは、こうした反復作業をテンプレート化することで、開発効率を高める手段と考えられます。
カスタムエージェント:タスク固有のAIペルソナを作成
GitHubの説明では、カスタムエージェントを使用することで、明確に定義された責任とスコープを持つ専門的なAIアシスタントを構築できるとされています。具体例として、以下のようなエージェントが挙げられています。
- API設計エージェント:インターフェースをレビュー
- セキュリティエージェント:静的解析タスクを実行
- ドキュメントエージェント:コメントを書き直したり、例を生成
エージェントには独自のツール、指示、制約、動作モデルを含めることができます。さらに、より複雑なワークフローのためにエージェント間のハンドオフを有効にすることも可能とされています。
この概念は、従来の単一の汎用AIアシスタントではなく、役割分担された複数の専門家チームのようなAIシステムを構築できることを意味していると思います。大規模なプロジェクトでは、セキュリティ、パフォーマンス、ドキュメントなど、異なる関心事を持つ複数の観点からのレビューが必要になることが多く、こうしたニーズに対応する仕組みと言えます。
コンテキストエンジニアリングが重要な理由
GitHubは、コンテキストエンジニアリングの目標について、単により良い出力を得ることだけでなく、Copilotによるより良い理解を実現することだと説明しています。より明確なコンテキストを提供することで、以下のような効果が得られるとされています。
- より正確で信頼性の高いコードが得られる
- プロンプトのやり取りを減らせる
- ファイルとリポジトリ全体で一貫性が向上する
- 結果を書き直したり修正したりする代わりに、フロー状態を長く維持できる
従来のAIコーディングアシスタントでは、生成されたコードが期待と異なる場合、開発者が繰り返しプロンプトを調整する必要がありました。コンテキストエンジニアリングは、この試行錯誤のコストを前払いの設定に変換する手法と捉えることができます。初期設定に時間を投資することで、長期的な生産性向上が期待できると考えられます。
まとめ
GitHubが提唱するコンテキストエンジニアリングは、カスタム指示、再利用可能なプロンプト、カスタムエージェントという3つの手法を通じて、GitHub Copilotの精度と一貫性を高めるアプローチです。開発者がAIアシスタントに提供する情報の質と構造を改善することで、より効率的な開発体験が実現できる可能性があります。
